霧晴れる時、君は

卒業

卒業まであと２ヶ月。
高校生として湊くんと過ごせるのもあと僅か。
まだ実感は湧かないけど、日に日にそれが現実として押し迫ってきている感じはしていて寂しくなる。
たった三日離れていただけで耐えられなかったのに、それがずっとになる。
それを悟られないようにできるだけ湊くんと一緒に過ごしている。
それなのに。

「やだあ、卒業したくないっ！」
と湊くんは露骨に口にして愚図る。
「俺だって寂しいんだから我慢してよ」
「卒業したら別れるとかないよね？」
「ないよ」
「本当？」
「なんで疑うの？」
「いっそのこと契約したい」
「契約？」
「ずっと一緒にいるっていう契約」
「重っ」
「なんでそういうこと言うんだよお、なんで？俺のこと嫌い？
好きって言ってよお、キスしていい？」
「キス関係ないじゃん！」
また付き合う前の湊くんに戻ってる。
定期的にこうなる。
面白がるのは可哀想だけど、面白い。
本当そうだよね、契約できたらいいのにね。

そうは言っても時間は止まってくれない。
湊くんが卒業する日が来た。
卒業式に在校生は参加しないけど、俺は出席していた。ちゃんと見届けたい。
卒業式は最初からざわついた。
湊くんが誰よりも早く泣いていたからだ。
だって入場する時から泣いてて、我妻先輩が背中をさすって宥めている。
我妻先輩は最後まで湊くんの面倒を見させられていてちょっと笑ってしまった。
そんな泣きすぎな湊くんにつられて続々と泣き出す卒業生たち。収拾がつかなくなっている。
湊くんのお母さんが
「あのバカ、恥ずかしい…」と言ってたけど、そのお母さんも泣いてた。
俺も笑いながら泣いていた。

でも泣くのはもう終わり。
ここからが本番なんだ。

卒業式当日は家族で過ごしてもらった。
湊くんは一緒にいたいと言ってくれたけど、今日ぐらいは家族で過ごしてと頼んだ。
その代わり、週末は一緒にいてと約束した。