霧晴れる時、君は

秋臣

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梅雨明け

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翌朝、俺は早めに起きて湊くんの家に迎えに行った。
「おはよう」
「え?なんで?」
「ちゃんと来るかどうか心配だったから」
「行くよ、我妻から着信とLINEも凄かったし、富田先生からも電話来て話したし」
「でも…」
「大丈夫だよ、ちゃんと行く」
湊くんは歩き出す。
少し足早に俺の前を歩く。
「湊くん」
「……」
「並んで歩いたらダメ?」
「……」
虫が良すぎる。
やはり距離ができてしまった。
元に戻れるなんてどうして思えた?
なにを思い上がってるんだ。

「三日…」
「え?」
「悠馬と三日も連絡取らなかったことなかったから…距離感がわからなくなった…」
「ふっ」
「みっともない姿も見られちゃったし、かっこ悪い…」
「ふふっ」
「笑うなよ…」
「あははは」
湊くんの袖をくいっと引っ張る。
「…あんな湊くん見たことなかったよね、
くさかったし」
「……忘れて」
「ううん、忘れない」
「忘れてよ…」
「俺があんな姿にしたんだ、覚えてなきゃダメなんだ」
「……」
「もう絶対あんな姿にさせないから。
なったとしても俺が離れない」
「念書書かせるぞ」
「ふふ、懐かしい。いくらでも書くよ」 
そう言うと湊くんは優しく笑って俺の手取り、ギュッと繋いでくれた。

学校に着くと我妻先輩と富田先生が待っていた。
「湊っ!」
我妻先輩が泣きながら抱きつく。
「お前、大袈裟だろ。たった三日だぞ?」
「その三日がどれだけ大事かわかってんのかっ!」泣き怒りだ。
「…ごめん、連絡もしないで…心配させてごめん…」

「蓮見、ありがとな。ダメだったら今日俺が行こうと思ってたんだ。本当にありがとう」と富田先生が俺に縋って涙ぐむ。

「待って!悠馬から離れて!ちょっと、先生!離れてってば!」
まだ泣いてる我妻先輩に抱きつかれたまま、湊くんが叫ぶ。
全然気づいてない富田先生はずっと俺にハグしたままで湊くんのボルテージが上がる。
いつもの光景に安堵する。
うるさくて、ちょっと鬱陶しくて、でもそれが一番心地いい。
たった三日が耐えられなかったのは俺だ。
長かった今年の梅雨が明けた。
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