霧晴れる時、君は

秋臣

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別れ

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「湊くん、別れよう」
湊くんの動きが止まる。
「え…」
「え、なんで…なに?なに言ってるのかわからない……」
「別れてください」
「やだ……」
声が震えてる、湊くんが泣いてるのがわかる。
「ごめんなさい…」
「やだ……別れない、絶対嫌だ!
なんで?俺悪いところあるなら直すから、嫌われないように直すから……」
「湊くん、聞いて」
「嫌だ、なにも聞きたくない」
「お願い…聞いて。
やっぱり俺じゃダメなんだよ。
この前、撮影した時にわかった。
湊くんは女の子といる方が自然なんだよ、俺じゃない。
俺といてもなにも生まれない。
結婚もできない、子ども持てない、セックスだってまともにできない。なにも未来がないんだ。俺といることで湊くんの未来が無くなっちゃう。
そんなの嫌なんだよ。
霧人と遥の恋人バージョンの撮影、素敵だった。あれが湊くんの本来の姿だよ。
雫の俺じゃダメなんだ」
「そんなこと言うな!怒るぞ!」
「俺最初からずっと言ってるよ、男だから付き合えないって。こういうことなんだよ。
もうこれ以上好きになりたくない。
だから別れて」
「俺は悠馬が好きだ」
「……もう好きでいたくない」
「そんなこと言わないで……そばにいて……」
湊くんの嗚咽が俺を突き刺す。
「誕生日にこんなこと言うなんて酷い男でしょ?もう嫌いになってよ」
「…お前、わざとだろ?嫌いになるよう仕向けてるだろ」
湊くんはなんでもお見通しだ。
「嫌いになんか絶対にならない。お前がなにをしても俺は悠馬しか好きじゃない」
「でも俺はもう別れる。今までありがとう」
俺は駅に向かって歩き出す。
「悠馬!」
俺を呼ぶ声は聞こえてるけど振り返らない。
「悠馬!!」
何度も何度も湊くんが俺の名前を呼ぶ。
振り返って走って抱きついてキスしたい。
だって好きなんだから。
止められない涙を見せないよう振り返らず歩く。
俺、こんなに湊くんのこと好きだったんだ、今更ながら知る。
俺の想いが大きければ大きいほど、湊くんを苦しめる。今断ち切らないとダメなんだ。
そう心を奮い立たせて駅へと向かった。
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