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誕生日
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梅雨の天気と同じで俺の心の中はずっと晴れない。
あの日以来、雫が俺に問いかけ続ける。
「報われないのになぜそばにいたがるの?
私と同じね」と。
違うと言えない。
そばにいたい、離れたくない、でもそれが湊くんの邪魔になる。
怖い、湊くんのいない世界がもうわからない。
湊くんを失ったら俺はどうなるんだろう。
霧のように跡形もなく消えちゃいたい。
雫に支配されかけている心のまま、俺はこの日を迎える。
いつものことを終わらせるってこんなに怖いの?俺は初めて知った。
湊くんの誕生日。
この日を選んだ俺を心底軽蔑する。
学校帰り、いつものように昇降口で湊くんは待っててくれていた。
俺が用事で遅くなっても絶対先には帰らない。
友達や先生たちに
「お前、また蓮見待ってんのか?」と揶揄われても
「俺が一緒に帰りたいから」と平然と答えるから『蓮見待ち』なんて変な言葉まで生まれてしまっていた。
『蓮見待ち』か…ちょっと笑っちゃう。
「なに笑ってんだ?」と湊くんが聞く。
「なんでもないよ」
「帰ろうぜ」
「うん」
「ねえ、湊くん、時間ある?」
「ん?なんで?」
「新宿まで付き合ってくれない?」
「え?なんで?」
「いいから、付き合って!」
「なんでそんな強引なんだよw」
湊くんを無理矢理付き合わせたのは寿司屋だった。
「ここって…」
「横浜行った時の帰りに湊くんが連れて行ってくれた店。予約してあるんだ」
「え!?」
「だって制服だぞ?それにここ他より安いとはいえ高いだろ?」
「誕生日なんだから奮発させてよ」
「マジで?」
「こんにちは~」
俺は湊くんの腕を引っ張って店に入る。
「おっ!久しぶりだな」
「予約した蓮見です」
「蓮見くんね、お任せでいいんだよな?」
「はい、予算内でお願いします」
「ははっ!任せとけ」
あの時のように大将が寿司を握ってくれる。
美味しい。
湊くんは恐縮しながらも嬉しそうに食べてくれてる。
と、途中で
「あれ?」と不思議がる。
「なんか俺と悠馬と出てくるものが微妙に違う気がする」
「気づいたか兄ちゃん。兄ちゃんのは誕生日と成人祝い特別メニューだ」
「え?」
「蓮見様からの予約時の注文なんだよ」と笑う。
「な、蓮見様」と大将が悠馬を揶揄う。
「蓮見様って言わないでくださいよ。無理なお願い聞いてもらってすみません」
「いや、そういうのは言ってもらったほうがやりやすいもんなんだよ。作り甲斐もあるしな。兄ちゃん、美味いだろ?」
「…はい」
「なんだ、泣いてんのか?デカい図体して涙脆いんだな」と大将が笑う。
「あんた、お客様を揶揄うんじゃないよ!ごめんなさいね、この人デリカシーってもんがないから…」女将さんが大将を嗜める。
「いえ、嬉しくて、美味しいです…」
「だろ?ほら、どんどん食え。そっちの良く食う兄ちゃんに取られちまうぞ」
「そうだよ、俺食っちゃうよ」
「ダメ!これは俺の!」
大将、ありがとう。
あの日以来、雫が俺に問いかけ続ける。
「報われないのになぜそばにいたがるの?
私と同じね」と。
違うと言えない。
そばにいたい、離れたくない、でもそれが湊くんの邪魔になる。
怖い、湊くんのいない世界がもうわからない。
湊くんを失ったら俺はどうなるんだろう。
霧のように跡形もなく消えちゃいたい。
雫に支配されかけている心のまま、俺はこの日を迎える。
いつものことを終わらせるってこんなに怖いの?俺は初めて知った。
湊くんの誕生日。
この日を選んだ俺を心底軽蔑する。
学校帰り、いつものように昇降口で湊くんは待っててくれていた。
俺が用事で遅くなっても絶対先には帰らない。
友達や先生たちに
「お前、また蓮見待ってんのか?」と揶揄われても
「俺が一緒に帰りたいから」と平然と答えるから『蓮見待ち』なんて変な言葉まで生まれてしまっていた。
『蓮見待ち』か…ちょっと笑っちゃう。
「なに笑ってんだ?」と湊くんが聞く。
「なんでもないよ」
「帰ろうぜ」
「うん」
「ねえ、湊くん、時間ある?」
「ん?なんで?」
「新宿まで付き合ってくれない?」
「え?なんで?」
「いいから、付き合って!」
「なんでそんな強引なんだよw」
湊くんを無理矢理付き合わせたのは寿司屋だった。
「ここって…」
「横浜行った時の帰りに湊くんが連れて行ってくれた店。予約してあるんだ」
「え!?」
「だって制服だぞ?それにここ他より安いとはいえ高いだろ?」
「誕生日なんだから奮発させてよ」
「マジで?」
「こんにちは~」
俺は湊くんの腕を引っ張って店に入る。
「おっ!久しぶりだな」
「予約した蓮見です」
「蓮見くんね、お任せでいいんだよな?」
「はい、予算内でお願いします」
「ははっ!任せとけ」
あの時のように大将が寿司を握ってくれる。
美味しい。
湊くんは恐縮しながらも嬉しそうに食べてくれてる。
と、途中で
「あれ?」と不思議がる。
「なんか俺と悠馬と出てくるものが微妙に違う気がする」
「気づいたか兄ちゃん。兄ちゃんのは誕生日と成人祝い特別メニューだ」
「え?」
「蓮見様からの予約時の注文なんだよ」と笑う。
「な、蓮見様」と大将が悠馬を揶揄う。
「蓮見様って言わないでくださいよ。無理なお願い聞いてもらってすみません」
「いや、そういうのは言ってもらったほうがやりやすいもんなんだよ。作り甲斐もあるしな。兄ちゃん、美味いだろ?」
「…はい」
「なんだ、泣いてんのか?デカい図体して涙脆いんだな」と大将が笑う。
「あんた、お客様を揶揄うんじゃないよ!ごめんなさいね、この人デリカシーってもんがないから…」女将さんが大将を嗜める。
「いえ、嬉しくて、美味しいです…」
「だろ?ほら、どんどん食え。そっちの良く食う兄ちゃんに取られちまうぞ」
「そうだよ、俺食っちゃうよ」
「ダメ!これは俺の!」
大将、ありがとう。
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