霧晴れる時、君は

『ダークスカイバトル』霧人

続いて俺。
霧人のタキシードは白でシルバーのアクセントがあり、長身の霧人を引き立てる装飾の少ないシンプルなものだ。
ウィッグは銀髪のサラサラストレート。
長い前髪から目をかすかに覗かせ、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。
霧人は基本的には心を開かない人。
同族の雫には弱いところを見せるものの、想いを寄せる遥には悟られまいと自分を隠そうとするが、通じ合う二人には無駄なことで遥の前では僅かな笑顔を見せるクールなキャラだ。
これを俺がやるの？できないよ。
姉ちゃんはカメラマンさんの指示に従えば大丈夫って言ってたけど。

一人で立つ。
目を閉じ息を大きく吸う、吐く。何度か繰り返す。
よし、霧が見えた、このまま行こう。
カメラマンの浅野さんの指示に従う。
ジメッとした空気の中、ゆっくり上を向く。
そのまま視線だけ斜めに下げる。
体を動かさず顔だけ少し後ろを向く。
前を向き直す
刀を真一文字に構える。目の下に刀を持ってきて刀身に自分を映す。

指示通りにはしているができているのかはわからない。OKがかかるまでは撮影続行だ。
霧が晴れる、俺は消える、その事実に消えながら悲しげに、でも遥に一瞬でも会えた嬉しさを滲ませ微笑む。
ここでようやくOKがかかった。

できてるのか？

カメラマンの浅野が愛莉に囁く。
「驚いたな。愛莉ちゃん、あの彼何者？
勘が物凄くいい、俺の見えているものと彼が見えているものがリンクしてる。
モデル向きだよ、彼」
「…私の弟…私も驚いてる、あれは霧人だわ…」