霧晴れる時、君は

秋臣

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暗雲

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梅雨入りしてジメジメした日が続いて気が滅入るが、楽しみもあった。
『ダークスカイバトル』がアニメ映画化して今週末から公開になった。
悠馬はめちゃくちゃ楽しみにしてて公開日が発表になった日にLINEで
「映画観に行こう!」と誘ってきて、それからずっと楽しみにしていた。

そんなに楽しみにしてるならと初日の初回を観ることにした。
当日待ち合わせると尻尾振ってる子犬みたいにはしゃいでる。
映画より悠馬の方が絶対面白い。
上映中も小声で
「あ!」とか
「ああああ…」とか言ってるし、
はらはらと涙を流していたり、
表情がコロコロ変わって忙しい。
俺はそれを映画と共に楽しんでいた。

「あー面白かった!絶対また観る!」と
パンフレットとグッズを手にニコニコ喜んでる。
いつまで経ってもかわいいのに慣れない。
ずっとかわいいってなんなんだ。

ご機嫌な悠馬と昼はなにを食べようかと相談していると、スマホが鳴った。
画面には『姉ちゃん』の文字が。
電源切っててわからなかったけど着信が凄かった。なんかあったのか?

「なに?」
「湊!?今どこにいる?」
キンキンした声で喚いてる。
「なに?喚かないでよ」
「今どこ!?」
「今?渋谷」
悠馬がキョトンとしてる。
俺も首を傾げる。
「マジで?もしかして悠馬くんも一緒にいる?」
「いるよ」

「湊、お願い!今から迎えに行くから悠馬くんとモデルやってもらえない?」
「は?嫌だよ」
「私、コスプレのデザインコンテストの一次通って二次審査のための撮影が今日なんだけど、モデル二人が電車の人身事故で足止めされて来られなくなっちゃって。もうスタジオも借りてるしヘアメイクもカメラマンも呼んでるからキャンセルすると全て無駄になるし、再撮影するにもまたお金がかかるから厳しいの。スタジオが青山だからすぐ迎えに行くからお願い!」
スピーカーにしなくても悠馬に聞こえていたようだ。
「愛莉さん困ってるみたいだよ」
「でもモデルなんてできねえよ」

「悠馬くんいる?」
「あ、はい」
「このコスプレね、『ダークスカイバトル』のコスプレなの」
「え!?」
汚ねえぞ、姉ちゃん!
「誰のですか?」
「霧人と遥と雫」
「!!」
「見たくない?」
「見たいです!」
「おい、悠馬!」
「ね?見学に来ない?」
「おい、姉ちゃん、悠馬で釣るなよ!汚ねえぞ!」
「切羽詰まってんのよ!お願いだから協力して!!」
あーあ、悠馬がキラキラした目してる…
幸か不幸か、映画観たばかりだから悠馬の脳は『ダークスカイバトル』に洗脳されてる。

「渋谷のどの辺にいるの?」
「…道玄坂の映画館」
「わかった、すぐ行くからそこにいて!」
「湊くん?」
「ごめん、悠馬。なんか姉ちゃんにモデルやってくれないかって頼まれた…」
「『ダークスカイバトル』のでしょ?
霧人かな?」
「なんでワクワクしてんだ?お前」
「だって湊くんが霧人のコスプレするんでしょ?見たい!」
やっぱりか… 
映画館の前にいると10分もせず姉ちゃんは来た。
「早く車乗って!」
強引に連れ去られスタジオに向かう。
「悠馬くん、湊、本当ごめん!」
「悠馬で釣るな」
「ごめんて」あっという間にスタジオに着く。
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