30 / 36
決壊
しおりを挟む
晃とは最近落ち着いている。
恋人になる前のただの幼馴染のような時もあるし、甘い雰囲気になる時もある。
そのバランスが取れているというか、とにかく無理がない感じがする。
セックスはしているが、制約を設けるというより、お互い気持ちが盛り上がったら。たとえ盛り上がっても軽いキスだけで終わる時もある。
それでも充分満足だし幸せを感じてる。
のだが、晃がおかしなことを言い出した。
この前晃のクラスで『男は彼女に対していつまでドキドキするのか』という検証をしたらしく(なんだそれ?)、それによるとドキドキ期間は2~3ヶ月でその後は安心感期間に入るらしい。
みんなそれに納得したようなのだが、晃はこれが引っかかったみたいで、
「俺今もドキドキするんだけどなんで?
もうとっくに安心感期間に入ってるはずなのに、なんでドキドキするの?おかしくない?」と大真面目に悩んでる。
「なんでいつまでもドキドキしてたらダメなんだ?」と聞いてみる。
「だって、ずっと安心できないってことじゃん!」
あーなるほど、そういう考え方もあるのか。
「晃は安心したいの?」
「安心したい、ホッとしたい」
「ドキドキは嫌?」
「嫌じゃないけど、ずっとドキドキするのは疲れちゃうよ」
「俺はずっとドキドキしてて欲しいけど」
「なんかずるくない?」
「え?」
「俺ばっかり歩夢にドキドキしてるみたいじゃん、ずるい」
こういうところがかわいいんだよなあ。
あんまり言うと怒るから言わないけど、かわいいんだから仕方ないよな。
かわいいからハグしたら、
「ほらあ、またドキドキするから!」
ずっとドキドキしててくれたらいいのに。
「広夢くんはドキドキしないんだよ」
なんて?
「ほら、前に男にときめくかって試したでしょ?その時全然ドキドキしなかったんだよね」
ああ、そんなことあったな。
あの時は晃と抱き合ってる兄貴に心底腹が立った。実験だったと聞いてもイライラする。
「広夢くんはドキドキしないけど、ホッとする。
それって安心感ってこと?
でも安心感ってドキドキ期を経て生まれるものなんでしょう?最初からホッとする安心感ってなんで?」
なあ、それってドキドキ期間なんてすっ飛ばして直接安心感を得たってことで、信頼しきってるからこそ出てくるものなんじゃねえの?お前、それ俺に言うのかよ。
「お前無邪気に言ってるけど、それって兄貴だと安心する、俺だと安心できないって言ってるんだぞ、わかってるのか?」
ちょっとムッとする。
「そんなつもりで言ったんじゃないよ、怒らないで」
「怒って…る」
「ごめん、歩夢、ごめん…」
泣きそうな顔して謝ってる。
泣きたいのは俺だよ。
「兄貴とだけは比べないでくれよ、俺、兄貴には何も勝てる気しないんだ」
「歩夢は歩夢でしょ?広夢くんに勝つ必要ないよ!」
「あるんだよ。兄貴はお前のこと好きだからな」
「……」
「お前だって兄貴のこと好きだろ。いつか俺なんて捨てて兄貴のところに行くかもな」
「歩夢!」
「頼りがいがあって優しくて頭も良くて顔もいい。完璧じゃん。そりゃ誰だって兄貴の方がいいよな、お前も」
「俺は歩夢が好きだって言ってるでしょ。広夢くんは歩夢のお兄ちゃんだから好きなんだよ」
「そのうち兄貴に惚れるよ」
「なんでそんなこと言うんだよ」
「お前は誰かに好きって言われたら好きになるんだろ?」
「え?」
「好きだって言われたら誰だっていいんだよ、俺じゃなくたって」
「歩夢…酷いよ」
「今までもそうだったろ?いくら俺が晃を好きでもお前は気持ちが定まらない。俺はドキドキするって言われて嬉しかったよ。安心感もあったらもっと嬉しいけど、ドキドキで俺はいいよ。でもお前は安心感が欲しいんだろ?それなら兄貴の所に行けよ。俺じゃ無理だ」
歩夢が静かに泣いてる。
「ごめんな、帰る」
ぐいっと腕で涙を拭って歩夢は行ってしまった。
恋人になる前のただの幼馴染のような時もあるし、甘い雰囲気になる時もある。
そのバランスが取れているというか、とにかく無理がない感じがする。
セックスはしているが、制約を設けるというより、お互い気持ちが盛り上がったら。たとえ盛り上がっても軽いキスだけで終わる時もある。
それでも充分満足だし幸せを感じてる。
のだが、晃がおかしなことを言い出した。
この前晃のクラスで『男は彼女に対していつまでドキドキするのか』という検証をしたらしく(なんだそれ?)、それによるとドキドキ期間は2~3ヶ月でその後は安心感期間に入るらしい。
みんなそれに納得したようなのだが、晃はこれが引っかかったみたいで、
「俺今もドキドキするんだけどなんで?
もうとっくに安心感期間に入ってるはずなのに、なんでドキドキするの?おかしくない?」と大真面目に悩んでる。
「なんでいつまでもドキドキしてたらダメなんだ?」と聞いてみる。
「だって、ずっと安心できないってことじゃん!」
あーなるほど、そういう考え方もあるのか。
「晃は安心したいの?」
「安心したい、ホッとしたい」
「ドキドキは嫌?」
「嫌じゃないけど、ずっとドキドキするのは疲れちゃうよ」
「俺はずっとドキドキしてて欲しいけど」
「なんかずるくない?」
「え?」
「俺ばっかり歩夢にドキドキしてるみたいじゃん、ずるい」
こういうところがかわいいんだよなあ。
あんまり言うと怒るから言わないけど、かわいいんだから仕方ないよな。
かわいいからハグしたら、
「ほらあ、またドキドキするから!」
ずっとドキドキしててくれたらいいのに。
「広夢くんはドキドキしないんだよ」
なんて?
「ほら、前に男にときめくかって試したでしょ?その時全然ドキドキしなかったんだよね」
ああ、そんなことあったな。
あの時は晃と抱き合ってる兄貴に心底腹が立った。実験だったと聞いてもイライラする。
「広夢くんはドキドキしないけど、ホッとする。
それって安心感ってこと?
でも安心感ってドキドキ期を経て生まれるものなんでしょう?最初からホッとする安心感ってなんで?」
なあ、それってドキドキ期間なんてすっ飛ばして直接安心感を得たってことで、信頼しきってるからこそ出てくるものなんじゃねえの?お前、それ俺に言うのかよ。
「お前無邪気に言ってるけど、それって兄貴だと安心する、俺だと安心できないって言ってるんだぞ、わかってるのか?」
ちょっとムッとする。
「そんなつもりで言ったんじゃないよ、怒らないで」
「怒って…る」
「ごめん、歩夢、ごめん…」
泣きそうな顔して謝ってる。
泣きたいのは俺だよ。
「兄貴とだけは比べないでくれよ、俺、兄貴には何も勝てる気しないんだ」
「歩夢は歩夢でしょ?広夢くんに勝つ必要ないよ!」
「あるんだよ。兄貴はお前のこと好きだからな」
「……」
「お前だって兄貴のこと好きだろ。いつか俺なんて捨てて兄貴のところに行くかもな」
「歩夢!」
「頼りがいがあって優しくて頭も良くて顔もいい。完璧じゃん。そりゃ誰だって兄貴の方がいいよな、お前も」
「俺は歩夢が好きだって言ってるでしょ。広夢くんは歩夢のお兄ちゃんだから好きなんだよ」
「そのうち兄貴に惚れるよ」
「なんでそんなこと言うんだよ」
「お前は誰かに好きって言われたら好きになるんだろ?」
「え?」
「好きだって言われたら誰だっていいんだよ、俺じゃなくたって」
「歩夢…酷いよ」
「今までもそうだったろ?いくら俺が晃を好きでもお前は気持ちが定まらない。俺はドキドキするって言われて嬉しかったよ。安心感もあったらもっと嬉しいけど、ドキドキで俺はいいよ。でもお前は安心感が欲しいんだろ?それなら兄貴の所に行けよ。俺じゃ無理だ」
歩夢が静かに泣いてる。
「ごめんな、帰る」
ぐいっと腕で涙を拭って歩夢は行ってしまった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる