23時に明かりを消して

秋臣

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拗ねる

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兄貴がこっちに帰ってきた。しばらくいるらしい。
俺も兄貴も毎日ダラダラしてるから母さんに
「寛ぐのはいいけど少しは動きなさいよ」と言われ、俺と兄貴で買い物に行くよう命じられた。嵩張るものとか買いたいから車で行けとのこと。
「歩夢、行くぞー」車のキーを手に玄関を出ていく。
行きたくはないが母さんがお前も行けと追い出すので渋々車に乗り込む。
スーパーとホームセンターに向かっている、日差しが暑くてエアコン入れてても暑い。
「ここ何日か家にいるけど、最近晃来ねえな」
いきなり晃のことかよ。
「うん」
「喧嘩でもしたか?お前らが喧嘩してるの見たことないけど」
「いや、喧嘩はしてねえ」
「じゃあどうしたよ?」
「…彼女が出来た」
「えっ!マジ?お前に⁈」
「俺じゃねえよ、晃だよ」
「マジか!でもまあ晃、かわいい顔してるしな、優しいし」
「まあな」
「なんだ、それで拗ねてんのか、お前」
兄貴が笑い出す。
「拗ねてるってなんだよ!」
「面白くねえんだろ?いつも一緒の『俺の晃』に彼女が出来ちゃったから」
「俺のじゃねえ」
「自分のものだと思ってたんだろ?」
「思ってねえ」
「素直じゃないねえ、歩夢くんは」
「バカかよ、晃は男だぞ」
「知ってるよ、どう見たって男だろ」
「だったら…」
「だったらなんだよ、晃が男だとなにか不都合があんのか?」
「言ってることがわからないんだけど」
「晃のことが好きなら男でも女でも関係ないだろって言ってんだよ」
「は?」
「好きなんだろ?晃が」
「……」
「黙るなよ、肯定だぞ、それ」
「…わかんねえ」
「おっ!ちょっとかわいいとこ見せたな!」
「うるせえな!もう黙れよ!」
「はいはい、怖いねえ歩夢くん」
クソ兄貴!
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