レンガの家

秋臣

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出発

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俺が仙台に行ってから、GWや夏休み、年末年始は東京に帰るようにしていた。
両親や祖父母は年に一度、こっちに観光がてら遊びに来る。
俺の生活がどうなっているかをチェックするためでもある。
なんとか及第点は貰えてホッとしたが、心配してくれてるのもすごく感じた。

有難いことに家賃の心配もなく、仕送りもしてくれるので生活の心配をしなくていいのは本当に助かっている。
それでもそれだけに頼るのは嫌だったので、バイトを始めようとしたが、長期休みには東京に帰りたいと言うと渋い顔をされてしまう。そりゃそうだよな…どうしようかな。
大学の友達に相談したら、
「隙間バイトやれば?」
と言われた。
そうか、その手があったか。
これなら長期休み等を気にしなくていい。
さっそくアプリを入れて探してみた。
結構あるぞ。
バイトはナックしかやったことないんだけど、大丈夫かな。
探すと飲食店の洗い場募集がいくつかあったのでやってみることにした。

作業自体は単純だが、昼時の洗い場は戦場だった。
なかなかきついぞ。
俺の目的は帰省する際の交通費を稼ぐことなので、きつくても頑張る。
いくつかの店舗でバイトしてみたが、仕事のきつさになかなか募集かけても人が来ないそう。
「また来てくれないか?」
と懇願されることが多かった。

一人暮らしをしてみて、なにもかも一人でやらなくてはならない大変さを俺は身をもって知った。
特に風邪など病気になった時にはそれを痛感する。
誰かと一緒に暮らすって当たり前じゃないんだなと思うし、甘えてばかりじゃダメだし、もっと寄り添わないといけないなと思う。

陽南をGWに紹介したいというのは東京を発つ前に両親に伝えた。
「そんな子がいるなら早く言いなさいよ」と母さんに言われたけど、タイミングが無かったと言うと、
「まあ、受験生だったしね」
と理解はしてくれた。

陽南と両親はGWどころか俺が仙台に行く時に東京駅で対面した。
双方とも見送りに来てくれたからそこで会ったというわけだ。

陽南を紹介した。
「付き合ってる葦原陽南さんです」
「初めまして、壮祐くんとお付き合いさせていただいています、葦原陽南と申します」
陽南はめちゃくちゃ緊張してた。
父さんと母さんは旅立つ一人息子そっちのけで陽南を見て、キャーキャー喜んでる。
「かわいい!かわいい!」
「壮祐には勿体無いだろ」
どういう意味だよ。
陽南は困惑しているが、受け入れられたことは分かったようで安心したみたい。
俺もホッとした。

「陽南ちゃん、壮祐があっち行っちゃって寂しいでしょ?いつでもうちに遊びにいらっしゃい」
「え?」
「うんうん、いつでもおいで」
「ええ?」
陽南が俺に助けを求める。
「母さん、無理矢理誘ったら陽南断れないじゃん、困らせないであげてよ」
「そんなつもりじゃないのよ、ただ嬉しくて…ごめんなさいね」
母さんがしょんぼりしてる。
ふっ
「陽南が嫌じゃなければ時々母さんと遊んであげてもらえないかな」
「いいの?」
「無理しなくていいからね」
「ううん、無理はしてないよ。
ただ壮祐くんより仲良くなっちゃったらどうしよう」
なんだよ、それw
「私も家に一人じゃつまらないから良かったら遊びに来て」
「はい、ありがとうございます」
よかった、仲良くなってくれたみたい。
意気投合してる。

「ねえ俺は?」
「俺もいるんだけど」
「ちょっと聞いてる?」
「ねえ!」
「なあ!」

父さんが二人の周りをウロウロしててウケた。

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