レンガの家

秋臣

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新年

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新年を迎える。
年越しを一緒に過ごしたくて陽南に相談したけど、
「今は体調が何よりも大事だから、今年は我慢して来年一緒に過ごせるよう考えよ?」
と陽南は言った。
陽南の言うとおりだ。
クリスマスに思いがけず会えて、また期待してしまっていた。
情けない…本当に頑張れよ、俺。

「壮祐、年賀状届いてるよ、ここに置いておくね」
「うん」
大体LINEで済ませてしまうが、何人か毎年送ってくれる友人や先生がいる。
返事書かなきゃ…
母さんが置いてくれた年賀状に混ざって封書があった。
正月に年賀状以外の郵便?
真っ白な封筒に切手は貼ってない。
郵便じゃない?
表には『今永壮祐様』と書いてある。
裏を見る。
陽南の名前があった。

陽南!?
うちに来たの?

部屋へ駆け上がり、封筒を開ける。
封筒には手紙が入っていた。

『明けましておめでとう!
お兄ちゃんと合格祈願に行って来たよ。
二人でいっぱいお願いして来たからね』

手紙と共に合格祈願のお守りが入っていた。
わざわざポストに入れに来てくれたのか…

陽南に電話する。


「もしもし?陽南?」
「壮祐くん!明けましておめでとう!」
「おめでとう…陽南、うちに来てくれたの?」
「うん」
「呼び出してくれればいいのに…」
「今はダメ、我慢!」
「お守りを届けるために来てくれたの?」
「えへへ」
「深影さんと行ってくれたの?」
「お兄ちゃん誘ったら、行く!って張り切っちゃって、この辺りで一番有名なところに行って来たんだよ。いっぱいお願いしておいたから絶対受かるよ」
「ありがとう…」

「お兄ちゃんが一緒に届けに行くって言い張ってねwでも壮祐くんの家がバレちゃうでしょ?だから一人で電車乗って行ったの」
ふっ
「俺の身を守ってくれてありがとうw」
「お兄ちゃん、ストーカーの素質あるからね」
「あははは!」
「でもね、本当に真剣に『神様、お願いします!』ってお願いしてたよ、お兄ちゃん」
「…深影さんにありがとうって伝えて」

「聞いてまーす!ここにいまーす!」
うわっ!
深影さんに代わる。
「明けましておめでとうございます。
お守り、ありがとうございます」
「はーい、おめでとう、今年もよろしくね!あとちょっとだから頑張れよ」
「はい、頑張ります」
「寂しかったらいつでも俺を呼べ、すぐに会いに行って抱きしめてやるから」
「いや、間に合ってます」
「あはは!今年もつれないなあ」
いつもどおりの深影さんに気持ちが解れる。

「陽南に代わってもらえますか?」
「ええ~もう?」
渋々陽南に代わる。
「今年も相変わらずなお兄ちゃんでごめんね」
「うん、ちょっと癒されたw」
「慣れって怖いねw」
「陽南、ありがとう」
「あとちょっとだから頑張れ!」
「うん、頑張るから待ってて」
「うん,待ってるね」

すごく心が温かくなった。
葦原兄妹、最強で最高だ。



俺は受験に臨んだ。
やれることはやった。
出し切れたはず…
手応えは…うーん…
正直言って自信があるとは言えない。
A判定は出ていたけど、どれだけ頑張っても自信が持てなかった。
というより怖くなった。
期待に添えられず落ちることも怖いし、
受かったら東京を離れなければいけないことも今は怖い。
あんなに憧れていた大学に行けることを怖いと思うなんて…
まだ結果は出てないけど。


久しぶりの登校日、同じクラスの奴らが
「たまには彼女じゃなくて俺らとも遊べ!
結果が出るまではみんな同じ立場だから開き直ろうぜ!」
と遊びに連れ出してくれた。
男女関係なく、行ける奴は全員行こう!ということになってほぼ全員来た。
と言っても、その場の思いつきで放課後にこの人数で行けるところなんてない。
結局寒い中、公園で缶蹴りした。
高校生が缶蹴りw
これが思いの外楽しかったんだ。
小学生以来かもしれないし、ちょっとやり方忘れてた。
鬼が押さえてる缶を蹴り飛ばしたら捕まった奴らを解放出来るなんて忘れてたよ。
それを何度か繰り返したら鬼役が激怒して
「鬼が終われねえよ!」
とブチギレてみんなで爆笑した。

今まで仲悪くはないけどそんなに喋ったことない人とも、ここからなら缶狙えそうと画策したり、捕まるの嫌だとジャンケンで負けたやつを囮にしたりと、卒業間近でこんなことして遊べて本当に楽しかった。

帰る頃には
「卒業式の後、みんなで缶蹴りしようぜ!」と約束した。
今日来られなかったやつも全員誘って、全員でやりたい。
きっと俺だけじゃなく、結果待ち組は気持ちが楽になったと思う。


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