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譲れない想い
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GWは快晴だった。
駅で待ち合わせしてまずは浅草に行く。
東京に住んでても意外と行かないと思うんだよな。
「雷門ってもっと大きいかと思った」
「俺も」
知ってるようで知らないことは多い。
仲見世は食べ歩きしたらいけないんだって。
食べ歩きのイメージあるけどダメらしい。
陽南はあちこち食べたいものがいっぱいあって、目移りしていたけど我慢していた。
「食べたいもの食べていいよ」
「ダメ、美味しいものが美味しく食べられなくなっちゃうから」
「目的の店があるの?」
「壮祐くん、天ぷら好き?」
「うん、普通に好き」
「美味しいお店があるんだって。
そこに行きたいから我慢する」
もしかして…
「お兄さんに聞いたの?」
「なんでわかるの?」
「カレーの店もお兄さんに教えてもらったんだろ?」
「うん」
「ねえ、もしかして浅草に行くって言ったの?」
「浅草で美味しい店知ってる?って聞いた」
俺とのことでお兄さんを絡ませたくない。
「ごめん、私、余計なことした?」
「いや」
「怒ってる?」
「いや」
「壮祐くん、怒ってる」
「そうじゃなくて、陽南との思い出にお兄さんを絡ませたくないだけ」
「あのね、壮祐くん」
「ん?」
「私、この前お兄ちゃんに壮祐くんのことは譲る気ないからって伝えてきた」
え?
「どういうこと?」
「お兄ちゃんが壮祐くんのこと好きでも、壮祐くんは私のことが好きだから無駄だよ、残念でしたって言ってきた」
ふっ
「…それで?」
「お兄ちゃんはそれでも諦められないって言うから、かわいそうにって言ってきた」
ふっふっ
「宣戦布告?w」
「そう、絶対譲らない」
笑いが止まらない。
「今日も壮祐くんとデートで浅草行くから美味しい店教えてってわざわざ聞いてきた」
「陽南、いい性格してんなあw」
堪えきれず笑ってしまう。
「俺も行く!って大騒ぎしてたけど店あるから来られないのわかってるし、
煽るだけ煽っちゃった」
「あはははは!性格悪すぎw」
「いいの!見せつけてやるの!」
「陽南、大好き」
そう言って陽南と手を繋ぐと、陽南は勝ち誇ったように笑った。
浅草の後は上野へ。
美術館と動物園どっちにしようかと迷って美術館にした。少し静かな場所に行きたかった。
人が多くても人の声は大きくないからうるさくはない。
ゆっくり時間をかけて観る。
「いつも出かける時は賑やかな所ばかりだからこういうのもいいね」
「壮祐くんがこういうの苦手じゃなくて良かった」
「陽南こそ、苦手かと思ってた」
「博物館とか好きだよ」
「じゃあ今度はそういう所に行こうよ」
「うん」
「あのね、いつも思うんだけどね」
「ん?」
「次の約束ができるのが嬉しい」
「うん」
「当たり前みたいに思ってくれてるのが嬉しい」
「うん」
繋いだ手にギュッと力を込める。
今日の陽南は想いを素直に伝えてくれる。
俺はそれがすごく嬉しい。
これだけしか行ってないのにもう日が暮れてきている。
でもそれでいいんだ。
そんなに焦って詰め込まなくても、行きたいところは一つずつ陽南と時間をかけて行けばいいんだから。
これからも約束ができる先があると陽南が思わせてくれるから。
「ねえ、もう一つだけ付き合ってくれる?」
「どこ?」
「付いてきて」
陽南を連れてきたのは東京駅。
乗り換えのためではない、丸の内中央口を出る。
「乗り換えるんじゃないの?」
「後ろ見て」
「え?わあ!」
東京駅がライトアップされている。
「私、この時間に来たの初めてかも。
昼間は何度もあるけど」
「ライトアップされてるのは知ってても見ることってわざわざ来ないとないんだよね、そもそも降りないし」
「そうだよね、時々乗り換えに使うだけだよね」
「壮祐くん、ここに来たかったの?」
「俺、東京駅の建物好きなんだ」
「そうなの?」
「本当はこの中のホテルにも泊まりたいけどすごく高いんだよ、絶対無理」
「いつか泊まれたらいいね」
「うん」
「私は壮祐くんの家に行けるの嬉しいよ」
「是非来てください」
「ふふ」
「ねえ、どうして東京駅が好きなの?」
「俺ね、レンガ造りが好きなんだよ」
「レンガ?どうして?」
「笑わない?」
「笑うような理由なの?」
「うーん、笑われたことあるから話さないようにしてる」
「聞いてもいい?」
「うん、あのな…」
陽南は笑いを堪えながら聞いてくれた。
話が進むにつれ、笑いを堪えられなくなったのか時折涙を浮かべながら。
その東京駅を陽南と二人、飽きることなく見続けていた。
駅で待ち合わせしてまずは浅草に行く。
東京に住んでても意外と行かないと思うんだよな。
「雷門ってもっと大きいかと思った」
「俺も」
知ってるようで知らないことは多い。
仲見世は食べ歩きしたらいけないんだって。
食べ歩きのイメージあるけどダメらしい。
陽南はあちこち食べたいものがいっぱいあって、目移りしていたけど我慢していた。
「食べたいもの食べていいよ」
「ダメ、美味しいものが美味しく食べられなくなっちゃうから」
「目的の店があるの?」
「壮祐くん、天ぷら好き?」
「うん、普通に好き」
「美味しいお店があるんだって。
そこに行きたいから我慢する」
もしかして…
「お兄さんに聞いたの?」
「なんでわかるの?」
「カレーの店もお兄さんに教えてもらったんだろ?」
「うん」
「ねえ、もしかして浅草に行くって言ったの?」
「浅草で美味しい店知ってる?って聞いた」
俺とのことでお兄さんを絡ませたくない。
「ごめん、私、余計なことした?」
「いや」
「怒ってる?」
「いや」
「壮祐くん、怒ってる」
「そうじゃなくて、陽南との思い出にお兄さんを絡ませたくないだけ」
「あのね、壮祐くん」
「ん?」
「私、この前お兄ちゃんに壮祐くんのことは譲る気ないからって伝えてきた」
え?
「どういうこと?」
「お兄ちゃんが壮祐くんのこと好きでも、壮祐くんは私のことが好きだから無駄だよ、残念でしたって言ってきた」
ふっ
「…それで?」
「お兄ちゃんはそれでも諦められないって言うから、かわいそうにって言ってきた」
ふっふっ
「宣戦布告?w」
「そう、絶対譲らない」
笑いが止まらない。
「今日も壮祐くんとデートで浅草行くから美味しい店教えてってわざわざ聞いてきた」
「陽南、いい性格してんなあw」
堪えきれず笑ってしまう。
「俺も行く!って大騒ぎしてたけど店あるから来られないのわかってるし、
煽るだけ煽っちゃった」
「あはははは!性格悪すぎw」
「いいの!見せつけてやるの!」
「陽南、大好き」
そう言って陽南と手を繋ぐと、陽南は勝ち誇ったように笑った。
浅草の後は上野へ。
美術館と動物園どっちにしようかと迷って美術館にした。少し静かな場所に行きたかった。
人が多くても人の声は大きくないからうるさくはない。
ゆっくり時間をかけて観る。
「いつも出かける時は賑やかな所ばかりだからこういうのもいいね」
「壮祐くんがこういうの苦手じゃなくて良かった」
「陽南こそ、苦手かと思ってた」
「博物館とか好きだよ」
「じゃあ今度はそういう所に行こうよ」
「うん」
「あのね、いつも思うんだけどね」
「ん?」
「次の約束ができるのが嬉しい」
「うん」
「当たり前みたいに思ってくれてるのが嬉しい」
「うん」
繋いだ手にギュッと力を込める。
今日の陽南は想いを素直に伝えてくれる。
俺はそれがすごく嬉しい。
これだけしか行ってないのにもう日が暮れてきている。
でもそれでいいんだ。
そんなに焦って詰め込まなくても、行きたいところは一つずつ陽南と時間をかけて行けばいいんだから。
これからも約束ができる先があると陽南が思わせてくれるから。
「ねえ、もう一つだけ付き合ってくれる?」
「どこ?」
「付いてきて」
陽南を連れてきたのは東京駅。
乗り換えのためではない、丸の内中央口を出る。
「乗り換えるんじゃないの?」
「後ろ見て」
「え?わあ!」
東京駅がライトアップされている。
「私、この時間に来たの初めてかも。
昼間は何度もあるけど」
「ライトアップされてるのは知ってても見ることってわざわざ来ないとないんだよね、そもそも降りないし」
「そうだよね、時々乗り換えに使うだけだよね」
「壮祐くん、ここに来たかったの?」
「俺、東京駅の建物好きなんだ」
「そうなの?」
「本当はこの中のホテルにも泊まりたいけどすごく高いんだよ、絶対無理」
「いつか泊まれたらいいね」
「うん」
「私は壮祐くんの家に行けるの嬉しいよ」
「是非来てください」
「ふふ」
「ねえ、どうして東京駅が好きなの?」
「俺ね、レンガ造りが好きなんだよ」
「レンガ?どうして?」
「笑わない?」
「笑うような理由なの?」
「うーん、笑われたことあるから話さないようにしてる」
「聞いてもいい?」
「うん、あのな…」
陽南は笑いを堪えながら聞いてくれた。
話が進むにつれ、笑いを堪えられなくなったのか時折涙を浮かべながら。
その東京駅を陽南と二人、飽きることなく見続けていた。
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