103号室

秋臣

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最終話 103号室

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翌朝藤代さんの腕の中で目を覚ました俺は状況が把握出来ずに戸惑った。
え?え?そして2人とも裸体で寝ていることで記憶が蘇ってきた。
目を覚ました俺に気づいた藤代さんが
「おはよう、寒くない?」と綺麗な目で見つめる。
「俺また嫌われるようなことしちゃいましたか?」と恐る恐る訊ねる。
あれだけ後悔したのに、また…
ふっと笑って藤代さんが答える。
「いや、君はなにもしてないよ」
「でも俺裸で…」
「俺が君を好きで、君を抱きたかっただけだよ」
「どういうこと?藤代さん」
「そのままの意味だよ。高瀬くん、君が好きだ」
昨日あれだけ泣いたのにまた涙が目に溢れる。
「自分が都合のいいこと言ってるのも、ずるいのもわかってる。
あの夜のこともなかったことにしてくれと言ったのは俺だよね。
それなのに俺も高瀬くんに同じことした、いや、もっと酷いことしてしまった。
あんなに高瀬くんを突き放すこと言ったのに…
許してくれなんて言わない、突き放してくれていい、ただあの時の君と同じなんだ。
嫌われても高瀬くんを好きだという気持ちは変わらない。同じことしないと気づけないなんて、いい歳して情けないな」
悲しげに目を伏せる。
「お願い、泣かないで高瀬くん。
初めて君が俺の部屋におすそ分けに来てくれた時のこと覚えてる?不安そうな顔が少しずつ解放された笑顔がかわいくてね。
俺あの笑顔をずっと見ていたいんだ。
お隣さんから一歩進めてくれないか?」
「かわいいとか言わないで。俺男なんだから…」
「だって今だってこんなにかわいいんだ、仕方ないじゃないか」と藤代さんが俺を抱きしめる。
「返事聞かせてくれる?ダメかな」
「藤代さんに言われて断る人なんていないでしょ…」
「…高瀬くん、俺を見て。
俺今全然余裕ないんだよ。君が愛おしくてかわいいと思う気持ちと、失うかもしれない怖さとで頭の中がぐちゃぐちゃになってる。
それを隠せてるとも思えない。
俺、相当かっこ悪いな…それでも、そこもちゃんと見て。表面だけじゃない、ぐちゃぐちゃな俺もちゃんと見て」
「見たい、藤代さんのずるいところも悪いところも全部見たい」
高瀬くんが俺を見上げて言う。
「キスしてもいいですか?」
「俺が高瀬くんとキスしたい」
ゆっくり唇を合わせると思いが溢れて更に深く深く唇を求める。
手の届くところにいて。
ずっと隣にいて。
そしていつか同じ部屋に帰りたい。
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