たぶん戦利品な元王女だけど、ネコババされた気がする

美海

文字の大きさ
上 下
9 / 22

策略と過去の話《ヴィルベルト視点》

しおりを挟む
 数日ぶりに会った親友は、執務を執り行う円卓の間でヴィルを迎えた。

「やあ、おかえり。ご苦労だったね、

 フレッドのうさんくさい笑顔は常と変わらないが、今日は『護国卿らしく』ふるまうつもりらしい。傍らに書記官と護衛を数人従えていた。

「護国卿、対スヘンデル情勢に変化があったから、報告したい」
「あれ? その話なの?」
「そのために各地を駆け回らせておきながら、他に何だと?」
「別にぃ。みんな、僕が呼ぶまで下がっていて」

 ならばそれらしく合わせてやるかと口火を切ると、意外にも、フレッドは拍子抜けしたような顔をした。最後の一人が部屋を出て行った後で、彼はだらしなく椅子に背をもたれさせて言う。

「ああやだやだ、どうせどこもカッカしてるんだろ? 聞く気しないけど、聞かなきゃダメだよね?」
「当然だろう。まず、コルキアだ。十六通目の抗議文書が届いた。『次は派兵もやぶさかではない』らしい」
「さすがに国王処刑までやるとビビった感じ?」
「あそこの王太后はレオポルト7世の姉だからな」
「はーん、自国への革命の波及が怖いのか、なんだかんだ肉親の情はあるのか。生きてるあいだは暗愚な弟を諌めもしなかったくせに、死んだら一丁前に姉ぶるのもウケるけど」
「いちいち悪態を吐くな。報告を静かに聞けないのか」

 聞きたくないのにちゃんと聞いてるだけえらくないか、と口を尖らせるフレッドを見ても、全く同情心は湧いてこない。
 お前は今年何歳だ、という呆れならとめどなく湧いてくるけれど。出会った時から見た目が変わらないから時々忘れそうになるが、彼はヴィルより二つ年上のはずなのだ。

「カルメは今のところ静観だ。ただ、取り逃した王権派貴族が数人身を寄せているらしい」
「漁夫の利に敏いお国柄だからね。『王権派に祖国を取り戻させるためにスヘンデルに侵攻してあげる』にも『王権派を革命政府に引き渡すので今後よしなに』にも転びそうだ。抱き込むために武器でも買ってあげようかな」
「サルサスとは変わらず国境で睨み合いが続いている。先日はティアーノ王子が激励に訪れたそうだ。『スヘンデルの苦しむ民を救うのは、両国の平和の使者となるべき自分だ!』と」
「とんだ夢見る花畑王子様だな。エフェリーネ王女との婚約は三年前に自分から破棄したんだろうに」
「……」
「あっれー? なあに、『元婚約者』に妬いちゃったぁ?」

 分かりきったことを、にやにやと笑いながら聞くな。
 苛立ちを『ここで反応するとフレッドの思うつぼだ』と堪えて、努めて冷静にヴィルは切り出した。

「婚約のことが無くとも、ティアーノ王子の曾祖母はスヘンデル王女だった。もちろん嫁ぐときに王位継承権は放棄しているが、流れる血は捨てられない。そちらの線で主張する可能性もある」
「最大限に警戒しちゃってまあ、いやあ、お熱いねえ。独り身の僕にはうらやましいよ」
「……ああ、それから。報告はこれで終わりだが」
「なに?――ぶべっ!」
「お前、彼女に何を吹き込んだ!?」

 冷静になったのはあくまでも口だけで、次の瞬間には雄弁な拳がフレッドの秀麗な頬をえぐっていたのだけれど。

「いててっ……いちおう警戒してたのにさぁ、開口一番切り出さないから油断しちゃったじゃん。なんでバレた?」
「家を訪ねた者がいれば全て報告しろと命じてある。お前がいくら脅しすかして口止めしても無駄だ」
「え、そうなの? 先に言っといてよ。でもさ、ダメだった? しっかり据え膳食ったんだろ、その顔は。僕もこれでも人の子だから、親友の恋を応援したくってさ――」
「御託はいい。どうせ嘘だろう」
「失礼な。三割は本音だよ」
「残り七割で何を考えてる?」

 この食えない男にかぎって、『友人の幸せを願って強引に後押し』などという動機はありえない。
 しかし、そうでない政略上の理由だとしたら、彼にしては動き方が拙速すぎる。普段は、からめ手から相手をそれとなく操って、いつの間にか自分の思い通りに物事を運んでいるようなやつなのに。

「だって、結果が出るまで時間がかかるからさ」
「結果?」
「護国卿として命じよう――」

 何の結果のことだ、と問おうとしたヴィルを遮って、スヘンデルの現国家元首、護国卿フレデリック・ハウトシュミットは厳かに告げた。

「――できるだけ早く、王女を孕ませろ。黄金の瞳の子が欲しい」

 黄金の瞳。伝説上の名君として誉れ高い建国王と同じ、建国王の子孫の証。
 王家に生まれず、侯爵令息ヴィルベルトが持って生まれたばかりに幾人もの運命を狂わせた災いの種が欲しいのだと、フレッドは言った。

「……これ以上、火種を増やそうと?」
「違うね。増えるのは火種じゃない、僕のだ。考えたんだよねぇ、『王女を殺す』のは『今後の火種』を消す行為だ。だから、同じ効果があるなら命までは取らなくてもいいと思った。でも、それはマイナスがゼロになるだけで、プラスに転じるわけじゃない」
「情勢をみて考えを変えたのか」
「大正解。諸国が僕らの国に手を伸ばそうとしてるだろう? スヘンデル王族の血は自分達にも薄く流れているから、血を持たない庶民から国を取り上げてパイみたいに分ける資格があるって……それが世界のルールだって信じてるバカも多い」

 ――それなら、彼らに『より正しい血統』を示してやればいいと思わないか。彼ら、どんな顔をするだろうね。

 フレッドは笑って言った。血の縁を頼りに躍起になる者たちのことを、心の底から馬鹿にしてあざけ笑った。

「まあ、めったに生まれないものらしいし、黄金の瞳までは求めないさ。君たちの子どもを僕にちょうだい? 僕も対等以上のカードを手にしていないと、交渉のテーブルにもつけない」
「……」
「これって、いい考えじゃない? 君たちはイチャイチャイチャイチャしてるだけでいいしぃ、なんなら今から女王陛下と夫君陛下にしてあげてもいいよ。もちろん僕の傀儡だけどね」

 甘い言葉をふんだんに囁いて、悪魔は笑う。
 ヴィルは親友の顔をまじまじと眺めて、彼の瞳に執念の色を見つけた。それを見て、心は決まった。

「――断る」

 譲歩の余地もなく切り捨てられて、フレッドは動きを止めた。

「はぁ? 僕に逆らうつもり?」
「ああ、そうだ」
「ひどいなあ、友達甲斐が無い」
「俺はお前の言うことを聞くと誓ったし、彼女にも同じような約束をさせたんだろう。それについては俺たちの落ち度もあるが、まだ生まれてもいないうちから親に勝手に売られる子はどうだ」
「……っ」
「そういう理不尽は、お前が一番嫌うものじゃないのか」

 善き人は救われて、悪しき者は正しい裁きを受ける。
 そうあってほしいと願ったから、わざわざ『革命』を起こしたんだろう。
 もしも『自分にとって気に食わないやつはひどい目に遭って、気に入ったやつには褒美をやる』だけでいいのなら、話はもっと簡単だった。分かったうえで、あえてその道を選ばなかったくせに。

「そうだろう、
「……あ゛ー! もう、そうだよ! でも、僕らにとっては、手札を使ったカードゲームが一番楽じゃんか!」
「楽がしたいなら、革命なんて起こすべきじゃなかったな」
「確かに僕って有能だから、ぶっちゃけ王家御用達の商人として金稼ぎ続ける方が楽だし儲かってたんだよね。なんっで、今こんな苦労してるのかなあ! 夢見る理想の実現のため? 僕ってそんなに青かったっけ? いや――」

 フレッドは、どこか遠くにある、今までに置いてきたものを見るような眼をした。
 懐古と思慕と後悔が入り混じった、その感情の名は――。

「罪悪感かな。『これまでに大きな犠牲を出したのだから、まだ生きている自分はもっと苦しんで、より良い道へ進まねばならない』って思いのせいだ」
「……罪悪感か」

 もう『この先』が無い者のために、その者の分まで、その者を背負ってこの先へと進む覚悟が、背中を押してくれるのだとフレッドは言った。いいや、背中を押してくれるどころか、むしろ立ち止まることを自分に許してくれないのだと。

「それは、簡単に投げ出すわけにはいかないものなのか? 『犠牲』の側が『許す』と言っても」
「お姫さまの話?」
「ああ。まだ七年前のことを気にしているらしい」
「七年前って、リヴィシェーンの? そりゃあの事件を気にするなって方が無茶だ。君だってそうじゃないの?」
「誰が熱を出しただけの子どもを恨むんだ。本気で言ってるなら、俺を馬鹿にするにも程がある」

「そう? どうにもならないことに対しても人間は『もしも』を考えてしまうのに、彼女の場合は、君の家族の死に、関係をこじつけられたんだろう?」

 七年前にはまだ王城への出入りを始めたばかりの商人だったフレッドですら、『あの事件』として知っているくらいだ。大スキャンダルの当事者が、たった七年前のことを忘れられるわけがない。
 フレッドの言葉が正しいと分かるからこそ、ヴィルは歯噛みするしかなかった。

 七年前、王家の避暑地リヴィシェーンの離宮で、王女暗殺未遂事件が起きた。
 被害者の第一王女エフェリーネは当時まだ十一歳で、小さな体躯ゆえに摂取した毒の影響が強く出たのか、長く寝つくことになった。
 王女に付き従っていたリーフェフット侯爵令息ヴィルベルトが容疑者とされたが、一月後その疑いは晴れた。だが、疑われたことを恥じて、彼は国を去った――と、いうことに表向きはなっている。
 そんな『国王の作り話』を信じる者は一人たりともいなかったし、皆が『真相』も『語られなかった余白の出来事』も知っていた。

 幼いエフェリーネは、風光明媚なリヴィシェーンをすぐに気に入った。野の花を摘み、鳥の声を聞き、小川のせせらぎに足を入れた。
 水遊びで体を冷やしたせいだろう、王女は風邪をこじらせてしばらく寝ついた。珍しい話でもない、お転婆だった当時の彼女にはよくあることだった。

 ただ、一つだけ『普段』と違っていたのは――悪意を持った国王がそこに介入してきたこと。

 普段は見向きもしない娘のことを『最愛の娘』と呼び、その周りの侍女や護衛、特に目の敵にしていたヴィルベルトのことを『悪意をもって娘を傷つけた』と詰った。
 ヴィルベルトは即座に拘束されて、難癖に過ぎないと誰もが分かっている国王の『怒り』を解くためだけに、息子を人質に取られた侯爵夫妻は自らの命をもって詫びることになった。

 ヴィルが牢から出されるまでに、全ては終わってしまっていた。ヴィルは独りになった。
 あの時も、今も、恨みを忘れたことはない。きっと、これからだって、忘れることはできない。

『わたくしが、あなたの家族を奪ったんだもの』

 それでも、その恨みを向ける対象は彼女ではないのに。
 勝手に『罪』を押しつけられて背負わされた少女を、これ以上苦しめたくはないのに、どうしてままならないのだろう。

「重荷を投げ出すのも楽じゃないのさ。『自分は苦しんでいる』『自分は良い方に進んでいる』という免罪符が無くなると、犠牲に正面から向き合わなきゃならなくなる」

 スヘンデル王国は既に亡く、エフェリーネは今や王女ではない。
 背負うものも無くなって身軽になったからこそ、無辜の犠牲をよそに自分だけ幸せになるわけにはいかないと思ってしまうのではないか、と。
 フレッドの言葉を聞いて、ヴィルは途方に暮れて呟いた。

「どうにかできないのか」
「こればっかりは本人がどう折り合いをつけるかって話だからねえ。真摯な説得以外にできることはそうそう無いよ」
「だが、あのままだと――」

 謝りながらすすり泣くエフェリーネの姿を思い起こした。
 王女としての名誉ある死すら奪われて、無理やりに生かされて。このままヴィルが思う『幸せ』を押しつけ続ければ、やがて彼女の心は壊れてしまうだろう。

「念のため聞くけど、手放してあげられないの?」
「無理だな。会う前ならともかく、今はもう」
「そっか」

 被害者と加害者が仲良くやろうってのは無理でしょ、と肩をすくめたフレッドも、ヴィルの返答を聞いて『重症だね』とへらりと笑った。

「それならさ。彼女に、罰と使命を与えてあげなよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

処理中です...