服従

ぼろのん

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第一章

第6話

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「なぁ、聞いてる?俺結構お前のこと心配してんだけど」

まずい。篠原の変貌ぶりに驚いて全く聞いてなかった。

「…え、えっと…あの、僕…」

「僕…なに?早く話してほしいんだけど」

苛ついているのだろうか、こめかみの血管が浮き上がっていて、いつものおおらかな笑顔はない。
 …馬鹿正直に聞いてなかったなんて言ったら怒るだろうか。そもそも何で篠原にそんなこと言われないといけないんだ。きっと、仲間内でバカにするんだろ。怒りが湧き上がってきた。こういう人種はいつも、僕の話なんて聞かないでこうやって理不尽な理由をつけて怒りをぶつけてくる。いわゆるサンドバックなのだ。篠原はそういう奴らとは違うのかもしれない、数秒でもそう思ったことがある自分が憎たらしかった。
 すぐにでも言い返したかった。「なんでそんなの話さなきゃいけないんだ」そう言えたら良かったのに。水谷のことや元々の自分のコミュ障も相まって、何も言えなかった。適当な理由をつけて早く終わらそう…

「えっと……朝、起きたら…体調、がその悪くて、」

遅刻した理由なんてこんなもんだろう。こんなこと聞いて、本当に何がしたいんだ。重苦しい雰囲気に耐えられず、恐る恐る篠原の顔色を伺うと…良かった、笑顔だ。

「くそ、くそっ!くそ!!くそ!!!」

何が起きたのか分からなかった。いきなり篠原が叫びながら僕の横の壁を何回も、何回も殴っているのだ。その様子に呆然としていると硬いコンクリートの壁を殴り続けている篠原の拳がいつのまにか血が滲んでいた。

「嘘ついてんじゃねぇよ!!なぁ、俺さ見たんだよ。内山が淳と学校遅刻してきたの。」

「……」

「内山、淳みたいなタイプ嫌いだろ?なんで一緒にいたんだよ。お前女好きなんじゃないのかよ。人の心弄んで楽しかったかよ!」

何も話してないのに黙々と意味がわからないことを話し続ける篠原が怖い。この場から逃げ出したいのに恐怖心で足がすくむ。
 
「そんなに俺のこと苦手だった?ほんと…全部無駄だったんだな」

僕を逃さないためかいつのまに目の前に来ていた篠原に壁に押し付けられていた。悪寒が、震えが止まらない。
 さっき水谷のことを淳と呼んでいたし仲が良いのだろうか。もしかして、僕の貞操を奪って2人で面白がっていたのかそんなことも考えたが今の篠原の様子を見てグルとは思えなかった。
 
「なんで何も喋んないんだよ…嫌いになった?」

篠原の、顔が俺の顔に近づく。
あ、これ駄目だ。瞬時にそう思った。水谷との情事を思い出してしまう、あの熱を、あの快感を、あの地獄を。耐えようと思ったが無理だった。胃の底から這い上がってくる重い感覚に襲われた。昨日から何も食べていなかったせいか、せり上がってきたのは胃液のようなものだけだった。しばらくその場で立ち尽くす。手が震え、息が乱れる。騒ぎを聞きつけたのか同学年の生徒が俺たちの周りに集まっていた。

________ 終わりだ。見られた。陰口、いじめ、嫌なワードがどんどん頭の中に現れては消えていく。なんで俺はこんな目に。いつも、なんで。駆けつけた他クラスの先生や担任に連れられる。
 後ろを振り返った時、篠原と目が合った気がした。




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