雀蜂の子と裏の者たち

タンカイ

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千早目鈴と吏部綺語

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私は雀蜂族の女だった
生まれてから訓練をして鍛えていた、私たち一族は役に立たなくてはいけない。
もちろん私たち一族には怠け者もいるが、ああはなるなと常々言われてきた
私は幸せだった
「おはよう、母さん父さん」
「ああ、おはよう」
「そろそろ仕事の時間ね」
親も無愛想ではあったが愛してくれていた
この生活が好きだった
だが…
親は殺された
鬼蜻蜓族に襲われた
私より強かった両親でも鬼蜻蜓の速さにはついていけていなかった
私は逃げた
逃げろと言われたから?生きたかったから?わからない
私は街に逃げ込んだ、私は暗殺者になった
私たち一族は強かったし、私は努力を続けていた、だから成功続きだった
でも
私は失敗して瀕死になった、相手は蟷螂族だった
私は死ぬのか…両親を殺した鬼蜻蜓族に復讐すらできずに…
悔しかったが視界はどんどん暗くなっていく…
「なあ、しんでるかな?」
「死んでたら食えるけどな」
「俺は食わないぞ」
「知ってるよ」
…誰だ?
「うおっ目開けた、生きてたか…残念」
目の前の男が涎を拭きながら話しかけてくる
「お前どうしたんだ?血ダラダラ流して路地裏に倒れてて、思わず介抱しちゃったよ」
「………誰だお前ら」
「んあ?俺ら?」
「そうだ」
「俺たちは…う~んなんというかな…まあ一応裏社会で色々やってるやつって認識でいいよ」
「名前は?」
「え?ああ、吏部綺語だよ」
「吏部綺語…」
「まあ俺らは別に名乗らなくてもいいだろ、で?あんたは?」
「私は…千早目鈴…」
「ふ~ん」
「で?なんで血だらけで倒れてたんだよ」
「蟷螂族の暗殺に失敗して…」
「うわっお前暗殺者かよ!」
「そうだ」
「にしてもまあ瀕死になったとはいえよく生きて帰れたな」
「あいつの体を噛みちぎって脱出した」
「顎の力どうなってんだよ!ってまさかお前雀蜂族か?」
「ああ、そうだ」
「なるほど…そりゃ強いな」
「で?どうするよ目鈴ちゃん」
「気安く呼ぶな…どうするとはなんだ」
「だってあんた「暗殺失敗しました~」って帰ろうもんなら殺されるぞ?」
「…」
「何も考えてなかったのか…?ま、俺には関係ないけど」
「…」
「ふむ…どうだ?俺たちのところで働いてみるか?」
「なに…?」
「どうする?」
「…頼む」
「オッケー…じゃ、よろしくね?目鈴ちゃん」
「だから気安く呼ぶな」
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