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疑念
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──きっと、大丈夫。
そう、自分に言い聞かせる。
彼女を不安にさせないために『私がその場で倒れている風花ちゃんを目視で確認すれば予告編が成立する』と言い切ったが……。
今は100円ショップで、伊達メガネを選んでいる。
安井くんの描いた絵と見比べて、一番近い枠の眼鏡を見つけたが、何か少し違う気がする。
もう少し、予告編の検証をしておくべきだったと反省している時、スマホが震動した。
「安井くん……?」
電話に出る。
『よう、困ってるか? 』
「分かってるなら手伝って欲しいんだけどね。何か情報を持ってるの?」
『まあ、なくはない……』
この勿体ぶる雰囲気は、取引を希望しているのかもしれない。
「ねぇ……コレクター、その情報は有料、無料?」
電話越しの安井はすぐに答えず、少し間を開けてから話し始めた。
『今日はコレクターじゃなくて占い師だ。対価は風花本人から受け取っている』
そんなやりとりをしていたようには見えなかったけど……。
「つまり、情報は提供してもらえるということ?」
『そうだ。風花が見ている予告編は誰かが見た未来の……』
「それは分かってるよ。それだけ?」
電話越しの安井がため息をつく。
『山下……あれが眼鏡だと気がついたんだな?』
「まあ、ね。でも、あれが誰なのか……分からない」
『……そこは今探っている。お前はお前の役割を果たしてくれ』
本当にどうしたんだろうか。安井くんは損得勘定で動く、いわゆる「プロ」だ。コレクターの情報価値は高い。何しろ、触れた対象の情報を引き出すことができるサイコメトラーだ。
今回の話は私への貸しがあるから、一回は対価なしで請け負ってくれるとは思ったが、大分気前がいい。
「もし、誰だか特定できなかったら……」
『必ず、特定する。俺は占い師だからな』
「でも、未来の誰かを特定できるの?今までの話だって、不特定多数の誰かの見た未来なんだろうし……」
『いや、それは多分……。すまん、別の着信が入った。切るぞ』
「あっ、ちょっと!!」
……なんというぶっきらぼうな電話の切り方だろうか。
だが、安井くんは何かを掴んでいる。
なら、それを信じて私は私の仕事をするだけだ。
何故か、私は不思議な力で苦しんでいる人を捨て置けない。それもこれも、悟くんやひらきちゃんとの一件があったからかもしれない。
ちらりと腕時計を確認する。午後4時39分を指していた。
私の予想が正しければ、そろそろ風花ちゃんに電話がかかっているはず。
一つ眼鏡を手にとって100円ショップのレジに向かう。支払いをしている最中に、SNSに風花ちゃんから通知が来た。
ーーーーーーー
『本当に父さんから連絡来たよ。父さんの会社に寄ってから現場に向かうね。』
『分かった。私もこれから現場に行くね。また、後で』
ーーーーーーー
店を出ると、自転車に跨り、ペダルを漕ぎ始めた。
ここから現場は遠いから、急がないと──
そう、自分に言い聞かせる。
彼女を不安にさせないために『私がその場で倒れている風花ちゃんを目視で確認すれば予告編が成立する』と言い切ったが……。
今は100円ショップで、伊達メガネを選んでいる。
安井くんの描いた絵と見比べて、一番近い枠の眼鏡を見つけたが、何か少し違う気がする。
もう少し、予告編の検証をしておくべきだったと反省している時、スマホが震動した。
「安井くん……?」
電話に出る。
『よう、困ってるか? 』
「分かってるなら手伝って欲しいんだけどね。何か情報を持ってるの?」
『まあ、なくはない……』
この勿体ぶる雰囲気は、取引を希望しているのかもしれない。
「ねぇ……コレクター、その情報は有料、無料?」
電話越しの安井はすぐに答えず、少し間を開けてから話し始めた。
『今日はコレクターじゃなくて占い師だ。対価は風花本人から受け取っている』
そんなやりとりをしていたようには見えなかったけど……。
「つまり、情報は提供してもらえるということ?」
『そうだ。風花が見ている予告編は誰かが見た未来の……』
「それは分かってるよ。それだけ?」
電話越しの安井がため息をつく。
『山下……あれが眼鏡だと気がついたんだな?』
「まあ、ね。でも、あれが誰なのか……分からない」
『……そこは今探っている。お前はお前の役割を果たしてくれ』
本当にどうしたんだろうか。安井くんは損得勘定で動く、いわゆる「プロ」だ。コレクターの情報価値は高い。何しろ、触れた対象の情報を引き出すことができるサイコメトラーだ。
今回の話は私への貸しがあるから、一回は対価なしで請け負ってくれるとは思ったが、大分気前がいい。
「もし、誰だか特定できなかったら……」
『必ず、特定する。俺は占い師だからな』
「でも、未来の誰かを特定できるの?今までの話だって、不特定多数の誰かの見た未来なんだろうし……」
『いや、それは多分……。すまん、別の着信が入った。切るぞ』
「あっ、ちょっと!!」
……なんというぶっきらぼうな電話の切り方だろうか。
だが、安井くんは何かを掴んでいる。
なら、それを信じて私は私の仕事をするだけだ。
何故か、私は不思議な力で苦しんでいる人を捨て置けない。それもこれも、悟くんやひらきちゃんとの一件があったからかもしれない。
ちらりと腕時計を確認する。午後4時39分を指していた。
私の予想が正しければ、そろそろ風花ちゃんに電話がかかっているはず。
一つ眼鏡を手にとって100円ショップのレジに向かう。支払いをしている最中に、SNSに風花ちゃんから通知が来た。
ーーーーーーー
『本当に父さんから連絡来たよ。父さんの会社に寄ってから現場に向かうね。』
『分かった。私もこれから現場に行くね。また、後で』
ーーーーーーー
店を出ると、自転車に跨り、ペダルを漕ぎ始めた。
ここから現場は遠いから、急がないと──
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