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調査
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スマホに着信が入った。
相手は山下りえちゃんだ。
先程からSNSでやりとりをしている相手で、私の不思議な話を真面目に聞いてくれる貴重な友人だ。
彼女は訳あって、留年してしまい高校二年生をやり直している。
彼女は頭がいいし、勘も妙に鋭いので頼りにしている。
『今回は知らない場所だったの? 』
「うん。出かける予定もキャンセルしちゃったし、ピンとこないの」
大体の場合は自分の行動範囲内の映像しか予告編には出てこない。しかし、今回はあまり見たことがない風景だったのが、引っかかった。
片側二車線の大通りで、自転車専用レーンの表示があった。家の近くにはそのような大きな道はないが、雰囲気は近所の景色に似ている。
『なるほど、ね……時間は何時くらいだったか分かる? 』
「うん、近くに時計がなかったからなぁ……あ、でも道路が少し赤みがかっていたかも……? 」
『なら、夕方かな? あと、ちょっと嫌なことを聞くけど、風花ちゃん、その夢の中で死んだりしてないよね? 』
「正直、それは分からなかった……」
今回の予告編の特筆すべきポイントは私が血を流してうつ伏せに道路に倒れていたことだ。
血溜まりはできていなかったが、シャツの左脇腹には大きな赤い染みが出来ていた。
予告編は1秒~3秒程度の短い映像が見えるものの、今回は視点が激しくブレて細かな状態が確認できなかった。
映像は私に走って近づくところで途切れる感じだった。
『これから1時間後に風花ちゃんの家に行ってもいい?』
「えっ、別にいいけど……」
『ちょっと確認したいことがあるんだ。もう一人助っ人を連れていくから待ってて。じゃ、1時間後に』
そういうと電話を切られてしまった。
何と言うか、りえちゃんは頭が良くて、行動力もある。ただ、周りが見えなくなってしまう瞬間がある。
私は助かるけど、そんなりえちゃんが心配になるときがある。
「ああやって、りえちゃんは危ない事に巻き込まれるんだろうな」
あまり、本人が話したがらないので真偽の程は不明だが、昨年発生した陽芽高校殺人未遂事件の被害者らしい。
大事な友人なので、危険なことには巻き込まないように気をつけないと。
さて、彼女が来る前に情報を整理しておこう。
紙と鉛筆で予告編で見た映像や感覚を文字と図にまとめ始めた。
………
10分もすると集中力が切れた。
我ながら注意力散漫だ。
何より、悲惨な予告編を見たにもかかわらず、危機感が足りないと自分でも思う。
今までが大した事故もなかったから、たかをくくっているのかもしれない。
右手のボールペンをクルクルと回していると、SNSの通知音が鳴った。
「あっ、祐二くんだ」
思わず立ち上がる。本当は今日、彼と会う約束をしていた。
祐二くんとは隣のクラスで小学校からずっと同じ学校に通っているが、中学まではあまり会話したことがなかった。
高校になってからは、彼が同じ文学部に入部してきたため親しくなった。
それからは共通の漫画の話で意気投合し、漫画の貸し借りをする仲になった。その漫画が少しマニアックなので、一般ウケしないのだ。
こんな身近に話の合う異性の友達ができると思っていなかったのでちょっと嬉しい。
SNSに今日は都合が悪くなったから会えないと送っておいたのだ。
『残念だな。なら、来週の土曜はどうかな? 』
『うん、その日なら空いてるよ。同じ時間に同じ場所で待ちあわせでいい? 』
『オッケー。とっておきの漫画持っていくわ!楽しみにしてて』
『私も秘蔵っ子持っていくから覚悟しといてネ!』
思わず、ニンマリと笑ってしまった。
なぜだか分からないが、彼と話していると楽しくて仕方がないのだ。
今回は残念だったけど、来週が楽しみ──
──来週なんてあるのかな?
予告編が急に重たくて暗い物語の始まりを告げているように感じた。
嫌だ……死にたくない。
折角、祐二くんと仲良くなって始めて休日に会う約束をしたんだ。
机に置いたペンを握り直した。
りえちゃんに甘えてばかりじゃダメだ。
もしかしたら不幸な未来を回避する方法が思い浮かぶかもしれない。
そう思い、机に向かい直した。
相手は山下りえちゃんだ。
先程からSNSでやりとりをしている相手で、私の不思議な話を真面目に聞いてくれる貴重な友人だ。
彼女は訳あって、留年してしまい高校二年生をやり直している。
彼女は頭がいいし、勘も妙に鋭いので頼りにしている。
『今回は知らない場所だったの? 』
「うん。出かける予定もキャンセルしちゃったし、ピンとこないの」
大体の場合は自分の行動範囲内の映像しか予告編には出てこない。しかし、今回はあまり見たことがない風景だったのが、引っかかった。
片側二車線の大通りで、自転車専用レーンの表示があった。家の近くにはそのような大きな道はないが、雰囲気は近所の景色に似ている。
『なるほど、ね……時間は何時くらいだったか分かる? 』
「うん、近くに時計がなかったからなぁ……あ、でも道路が少し赤みがかっていたかも……? 」
『なら、夕方かな? あと、ちょっと嫌なことを聞くけど、風花ちゃん、その夢の中で死んだりしてないよね? 』
「正直、それは分からなかった……」
今回の予告編の特筆すべきポイントは私が血を流してうつ伏せに道路に倒れていたことだ。
血溜まりはできていなかったが、シャツの左脇腹には大きな赤い染みが出来ていた。
予告編は1秒~3秒程度の短い映像が見えるものの、今回は視点が激しくブレて細かな状態が確認できなかった。
映像は私に走って近づくところで途切れる感じだった。
『これから1時間後に風花ちゃんの家に行ってもいい?』
「えっ、別にいいけど……」
『ちょっと確認したいことがあるんだ。もう一人助っ人を連れていくから待ってて。じゃ、1時間後に』
そういうと電話を切られてしまった。
何と言うか、りえちゃんは頭が良くて、行動力もある。ただ、周りが見えなくなってしまう瞬間がある。
私は助かるけど、そんなりえちゃんが心配になるときがある。
「ああやって、りえちゃんは危ない事に巻き込まれるんだろうな」
あまり、本人が話したがらないので真偽の程は不明だが、昨年発生した陽芽高校殺人未遂事件の被害者らしい。
大事な友人なので、危険なことには巻き込まないように気をつけないと。
さて、彼女が来る前に情報を整理しておこう。
紙と鉛筆で予告編で見た映像や感覚を文字と図にまとめ始めた。
………
10分もすると集中力が切れた。
我ながら注意力散漫だ。
何より、悲惨な予告編を見たにもかかわらず、危機感が足りないと自分でも思う。
今までが大した事故もなかったから、たかをくくっているのかもしれない。
右手のボールペンをクルクルと回していると、SNSの通知音が鳴った。
「あっ、祐二くんだ」
思わず立ち上がる。本当は今日、彼と会う約束をしていた。
祐二くんとは隣のクラスで小学校からずっと同じ学校に通っているが、中学まではあまり会話したことがなかった。
高校になってからは、彼が同じ文学部に入部してきたため親しくなった。
それからは共通の漫画の話で意気投合し、漫画の貸し借りをする仲になった。その漫画が少しマニアックなので、一般ウケしないのだ。
こんな身近に話の合う異性の友達ができると思っていなかったのでちょっと嬉しい。
SNSに今日は都合が悪くなったから会えないと送っておいたのだ。
『残念だな。なら、来週の土曜はどうかな? 』
『うん、その日なら空いてるよ。同じ時間に同じ場所で待ちあわせでいい? 』
『オッケー。とっておきの漫画持っていくわ!楽しみにしてて』
『私も秘蔵っ子持っていくから覚悟しといてネ!』
思わず、ニンマリと笑ってしまった。
なぜだか分からないが、彼と話していると楽しくて仕方がないのだ。
今回は残念だったけど、来週が楽しみ──
──来週なんてあるのかな?
予告編が急に重たくて暗い物語の始まりを告げているように感じた。
嫌だ……死にたくない。
折角、祐二くんと仲良くなって始めて休日に会う約束をしたんだ。
机に置いたペンを握り直した。
りえちゃんに甘えてばかりじゃダメだ。
もしかしたら不幸な未来を回避する方法が思い浮かぶかもしれない。
そう思い、机に向かい直した。
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