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ゴースト
嘲笑する道化師
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「──本日早朝、河原で男性の遺体が発見されました」
マスコミはこういうのが好きだよな。
「警察によると、遺体は西条大学の二年生木下貴一で、9月頃に同大学の女子大学生複数人のフェイクポルノを作成し、無断でSNSに公開したとのことで、逃亡して以来、行方がわからなくなっていました」
日本は平和だ。
芸能人のゴシップ、ドラレコの危険運転、人気の野球選手ネタに長々と枠を取る……。
マスコミは香ばしくて脂っこい、一度食べたら止められない餌を視聴者の前にぶら下げる。
これが本当に視聴者に伝えるべきニュースだと思っているのだろうか。
ネットやSNSの方が情報が早いし、自分で見たいニュースを選べる。正確性に難があるのが玉に瑕だが。
「暇つぶしにもならないね」
そう言いながら、今日のニュースで僕に一番刺さったのは間違いなく木下貴一の殺害事件だ。
こんなもの、誤魔化せるわけが無い。クライアント様はこのゲームを投了する気はないのだろうか。
テレビを消してリモコンを放り投げ、大の字に手足を投げ出す。
噂をすれば、クライアント様から着信だ。
「もしも~し、美奈でーす。お待ちしておりました、ご主人様」
『依頼がある』
乗りの悪い男だ。
「悪いけど、お断り。半端な仕事させられた上に、雫ちゃんの心象最悪じゃん。それにホテル暮らしは飽きちゃったよ」
『山内亮を始末してほしい』
「おーい、人の話、聞いてる? 僕、殺しは専門じゃないんですけど」
『今回の対価は既に用意してある』
対価を渡せば何でも言うことを聞くと思っているところがムカつく。
「……興味ないね。どうせくだらないものだろう」
『部屋を出て607号室を覗いてみろ。きっと気に入る筈だ』
「部屋の鍵は?」
『解除してある』
ブツッと電話が切れた。
クライアント様は電話が好きだな。世の中には電話より便利なツールが沢山あるのに。
しかし、私の部屋のロックを解除してくれたのは僥倖だ。せいぜい後悔するといい。
私はベッドを降りて、テーブルに置いてあるパソコンのエンターキーをタンッと叩いた。
スマホをお尻のポケットに入れて部屋を出る。
廊下には穏やかな色合いの赤い絨毯が敷かれており、幾何学的な模様が描かれていた。
ここはホテルの一室なのか?
目が覚めたら、あの部屋に軟禁されていたので初めて見る光景に首を傾げる。
ドアには金色のプレートに黒字で608号室と掲示されていた。ドアの取っ手にはICカードを読み取るためのNFCリーダーが設置されている。
ドアの取っ手を引いて、開けられるか確認する。オートロックになっているようで開けられない。
念のため、廊下の写真をスマホで撮影しておく。
607号室のドアに手をかける。僕の心を奮わすような面白いものならいいけど。
今までクライアントが期待以上のものを差し出してきた事はない。
ドアを開けて中に入ると一定の間隔で機械音が聞こえてきた。
何かの装置が部屋の中心部にあるようだ。歩みを進めると全容が見えてきた。
「なんだ、これ……こんな事が……」
タイミングを見計らったかのようにスマホが振動する。すぐに電話に出る。
『気に入ってもらえたと思うが?』
「この……外道が」
『もう一度言う。日が変わる前に山内亮を始末しろ』
時計は午前6時を指していた。あと18時間で山内亮を見つけて、始末もしないといけない。
しかも、足がつかないようにだ。間に合うわけがない。クライアントはそれを見透かしたかのように次の提案をしてきた。
『今回は特別にアシスタントもつけてやる』
「アシスタント?」
『そうだ。ARIAシリーズナンバーARIA-AK005……』
『西園寺航だ』
マスコミはこういうのが好きだよな。
「警察によると、遺体は西条大学の二年生木下貴一で、9月頃に同大学の女子大学生複数人のフェイクポルノを作成し、無断でSNSに公開したとのことで、逃亡して以来、行方がわからなくなっていました」
日本は平和だ。
芸能人のゴシップ、ドラレコの危険運転、人気の野球選手ネタに長々と枠を取る……。
マスコミは香ばしくて脂っこい、一度食べたら止められない餌を視聴者の前にぶら下げる。
これが本当に視聴者に伝えるべきニュースだと思っているのだろうか。
ネットやSNSの方が情報が早いし、自分で見たいニュースを選べる。正確性に難があるのが玉に瑕だが。
「暇つぶしにもならないね」
そう言いながら、今日のニュースで僕に一番刺さったのは間違いなく木下貴一の殺害事件だ。
こんなもの、誤魔化せるわけが無い。クライアント様はこのゲームを投了する気はないのだろうか。
テレビを消してリモコンを放り投げ、大の字に手足を投げ出す。
噂をすれば、クライアント様から着信だ。
「もしも~し、美奈でーす。お待ちしておりました、ご主人様」
『依頼がある』
乗りの悪い男だ。
「悪いけど、お断り。半端な仕事させられた上に、雫ちゃんの心象最悪じゃん。それにホテル暮らしは飽きちゃったよ」
『山内亮を始末してほしい』
「おーい、人の話、聞いてる? 僕、殺しは専門じゃないんですけど」
『今回の対価は既に用意してある』
対価を渡せば何でも言うことを聞くと思っているところがムカつく。
「……興味ないね。どうせくだらないものだろう」
『部屋を出て607号室を覗いてみろ。きっと気に入る筈だ』
「部屋の鍵は?」
『解除してある』
ブツッと電話が切れた。
クライアント様は電話が好きだな。世の中には電話より便利なツールが沢山あるのに。
しかし、私の部屋のロックを解除してくれたのは僥倖だ。せいぜい後悔するといい。
私はベッドを降りて、テーブルに置いてあるパソコンのエンターキーをタンッと叩いた。
スマホをお尻のポケットに入れて部屋を出る。
廊下には穏やかな色合いの赤い絨毯が敷かれており、幾何学的な模様が描かれていた。
ここはホテルの一室なのか?
目が覚めたら、あの部屋に軟禁されていたので初めて見る光景に首を傾げる。
ドアには金色のプレートに黒字で608号室と掲示されていた。ドアの取っ手にはICカードを読み取るためのNFCリーダーが設置されている。
ドアの取っ手を引いて、開けられるか確認する。オートロックになっているようで開けられない。
念のため、廊下の写真をスマホで撮影しておく。
607号室のドアに手をかける。僕の心を奮わすような面白いものならいいけど。
今までクライアントが期待以上のものを差し出してきた事はない。
ドアを開けて中に入ると一定の間隔で機械音が聞こえてきた。
何かの装置が部屋の中心部にあるようだ。歩みを進めると全容が見えてきた。
「なんだ、これ……こんな事が……」
タイミングを見計らったかのようにスマホが振動する。すぐに電話に出る。
『気に入ってもらえたと思うが?』
「この……外道が」
『もう一度言う。日が変わる前に山内亮を始末しろ』
時計は午前6時を指していた。あと18時間で山内亮を見つけて、始末もしないといけない。
しかも、足がつかないようにだ。間に合うわけがない。クライアントはそれを見透かしたかのように次の提案をしてきた。
『今回は特別にアシスタントもつけてやる』
「アシスタント?」
『そうだ。ARIAシリーズナンバーARIA-AK005……』
『西園寺航だ』
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