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フェイク ビレッジ
ファイア スターター
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……おかしい。
いつものテラス席にいるが、僕らの周りに誰も人が寄ってこないのだ。
夏休み前までは雫にプログミングの課題の相談や野次馬がたくさんいたのに、全くいないのだ。
そう言いながら、過去を振り返ると人が全く来ない日もあったのを思い出した。
いずれにしても丁度いい。雫にオンライン通話をする。
『休み時間か。ん……? 』
雫はキョロキョロと僕の周辺を見回す。
『誰もいないんだ。珍しいね』
「うん、まあ、皆忙しいんじゃないか。ところでさっきの話だけど、桔梗さんと話できないかな」
雫は露骨に嫌そうな顔をする。
『そんなにきょう姉がいいんだ。ふ~ん』
雫は髪の毛を指先でくるくるしながら、面白くなさそうに話す。
「……なんで揚げ足を取るんだ? 」
『揚げ足なんか取ってない。きょう姉は亮のこと嫌ってるし、声をかけるだけ無駄だよ』
拗ねたように口をとがらせる。
「何か聞かれると都合の悪いことでもあるの? 」
『…………』
雫は目を逸らし、口をつぐむ。僕は雫が自ら話すのを待つことにした。
今までも喧嘩はしたが、殆どの場合は僕が先に折れていた。でも、この件は、この件だけは譲れない。
僕は雫のアプリは外部ネットワークのサーバーに繋がっていることが引っかかっている。それは雫もそう説明していたし、矛盾は無い。
では、外部のレンタルサーバーはどのようにして借りたのか?身元の証明しようのない彼女が借りられる訳がないのだ。
本人に聞いてもとぼけられるのが関の山だ。なら第三者に話を聞くのがベターだろう。
腹を括って無言のままスマホのインカメラをじっと見つめ続けた。
気がつくとチャイムが聞こえてきた。2限目もあるが僕はサボる事を決めた。
雫の表情に僅かに焦りのような物が見えた。
「高瀬さんは悪くない。悪いのは雫だ」
『……何の話をしてるの? 』
よし、乗ってきた。
通学用のリュックをわざとスマホのカメラに映る位置にドンッと置く。
『な、なによ? 』
「リュックに高瀬さんから預かった手紙が入っている。雫が知りたがっている情報だ」
『……亮は何がしたいわけ? 意味わかんない』
僕は黙って、スマホのカメラに真っ直ぐ視線を合わせる。リュックのジッパーを開けて、一通の封筒を取り出す。
『高瀬の字……』
おもむろに、封筒の封を切る。
僕が封筒から取り出した手紙を確認すると、雫の顔が真っ青になっていることに気がついた。
『そ、それ……なに? 』
そのとき、僕の方肩にポンッと軽い衝撃を感じた。
「や、山内……すぐ見つかって良かった」
寛さんは両手を膝につき、肩で息をしていた。なんとも、タイミングが悪い。
寛さんが僕の腕を掴んできた。思わず、振り払おうとしたが、凄い力で狼狽える。
「何なんですか? 」
「今すぐ、ここを離れるぞ」
「待ってください。今、雫と大事な話をしてるんです」
「俺の話も重要だ。二人に関係している。頼む」
寛さんに深々と頭を下げられてしまった。あまりの真剣さに言葉を失ってしまった。
『亮、話は後。とりあえず、移動しよ』
「あ、ああ」
「助かる。こっちだ」
そう言うと寛さんが歩き始めた。納得がいかない僕は憮然としながら着いていった。
寛さんがこちらを振り返る。
「ここだ」
「ここって……」
ドアに貼付されたネームプレートを見て、驚いた。案内されたのは三神教授のゼミ室だった。
トントンとドアをノックして、寛さんが中に入ると、三神教授と佐藤先輩が中で待っていた。
三神教授は険しい顔をしていた。佐藤先輩は生気がなく目が真っ赤だった。
もしかして、泣いていたのだろうか?ただならぬ雰囲気に気圧される。
「あ、あの、なにが……」
三神教授の眼光が鋭く、言葉が喉を詰まって出てこなくなってしまった。
「ミスター山内、そこに座りなさい」
不安を感じて寛さんの方をを振り返る。僕の目を見つめると、僕に囁いた。
「山内、お前は……お前と雫ちゃんはあらぬ嫌疑をかけられている。三神教授の質問に答えてやってくれ」
『……嫌疑? 』
「どういうことですか? 」
「ミスター山内、これからその話をする。彼には君たちを黙って連れてきて欲しいと頼んだんだ」
心なしか、三神教授の目は先程よりも穏やかに見えた。それとは正反対に雫の顔には緊張の色が見えた。
……なんだ?
『……もしかして、SNSですか? 』
佐藤先輩がぬうっと顔をあげた。血の気のない顔と血走った目に恐怖を覚えた。
「ミス西園寺、まさか……」
『違います。私じゃありません』
雫は唇を噛み、下を向いてしまった。
「さっきから、みんな何の話をしてるんですか? 雫も何か知ってるなら、何で教えてくれないんだ」
思わず大きな声を出してしまい、佐藤先輩がビクッと震えていた。
スマホの画面を見ると雫も俯いていて、口をつぐんでいた。
「山内、落ち着け」
寛さんが僕の肩に手を乗せる。三神教授は自分のスマホを手渡してきた。
「ミスター山内、中の文章を確認してくれ。リンクは絶対に踏むな」
震える手でスマホを受け取ると某大手のSNSが表示されていた。
--------
やちよ624 @yayoi_yachi0624
同じ大学のSという女が、女子学生たちにフェイクポルノで脅している。これってすごく悪質な行為じゃない? 大学に通報した方がいいんじゃないか?
#フェイクポルノ犯罪
@hanako_flower
えぐいっすね...フェイクポルノを公開とか通報して当然。
やちよ624 @yayoi_yachi0624
前にリークされた情報が本当なら、頭おかしい。こいつの彼氏もグル。マスコミが報じるべき深刻な事案だと思う。
でるでる@daiharu2000
マジかよ...完全にアウトだわ。マスコミに是非取り上げてもらいたい。
猫ジラ@nekozilla
Sのやる事、胸糞悪い。 https://totally-fake-url.com/nonexistent_video1.mp4 を見てしまった。...本当にこの方が気の毒です。
やちよ624 @yayoi_yachi0624
これが入手したSと彼氏の画像です。https://def-not-a-real-site.xyz/madeup_file.png
Sはオンライン通話でしか、顔を出さない卑怯者。誰か、身元特定して
------
スレッドは延々と続いていた。
「これ、僕と雫がフェイクポルノで女子大生を脅しているって、……そういう内容ですよね」
三神教授は無言で首肯する。
「僕たちはこんなことやってません。濡れ衣です」
「では何故、ミス西園寺は呼び出された理由を察することができたんだね? 」
確かに雫は先回りして「SNSですか? 」と話していた。
「雫、どういうことか説明してくれるよな? 」
『…………その前に確認したいことがあります。佐藤先輩が被害にあったんですか? 』
三神教授は拳を固く握り、佐藤先輩は俯き、寛先輩はどうして良いのか分からないのか、ソワソワと落ち着かない。
三神教授は視線をこちらに戻し、口を開いたがまた俯いてしまった。
「……そうよ。わざわざ皆の前で確認する必要ある?」
『ご、ごめんなさい。配慮が足りませんでした』雫の声が震えていた。
「はじめから、これが目的だったの? だから、あのレストランで写真を撮ったの?」
あのレストラン……とは何のことだろうか?
『レストラン? 写真? なんの事……』
「惚けないでよ!!」
狭いゼミ室に佐藤先輩の声が響き渡り、一瞬で部屋に静寂が訪れた。
場が凍てついた。
『まっ、待ってくだ……』
次の瞬間、佐藤先輩は雫の映っているスマホを掴み、僕に投げつけてきた。顔面に直撃し、ガタンと床にスマホが落下した。
佐藤先輩は走り出し、ゼミ室を飛び出していってしまった。追いかけようとしたが、寛さんに手で制された。
「お前は行かないほうがいい。俺が追いかける。三神教授に分かる範囲の事情を説明してくれ」
「寛さん、俺……」
寛さんは小さく頷いた。
「分かっている。山内も雫ちゃんもそんなことしてないんだろ。とにかく、佐藤は俺に任せてくれ」
そう言うと寛さんも出ていってしまった。僕と三神教授は暫く茫然としていた。
床に落ちたスマホからすすり泣くような声が聞こえて、拾い上げると雫は泣いていた。
だが、ただ泣いている訳ではなかった。歯を食いしばり、瞳には怒りの炎が灯っているように見えた。
『誰だかしらないけど……絶対に許さない』
いつものテラス席にいるが、僕らの周りに誰も人が寄ってこないのだ。
夏休み前までは雫にプログミングの課題の相談や野次馬がたくさんいたのに、全くいないのだ。
そう言いながら、過去を振り返ると人が全く来ない日もあったのを思い出した。
いずれにしても丁度いい。雫にオンライン通話をする。
『休み時間か。ん……? 』
雫はキョロキョロと僕の周辺を見回す。
『誰もいないんだ。珍しいね』
「うん、まあ、皆忙しいんじゃないか。ところでさっきの話だけど、桔梗さんと話できないかな」
雫は露骨に嫌そうな顔をする。
『そんなにきょう姉がいいんだ。ふ~ん』
雫は髪の毛を指先でくるくるしながら、面白くなさそうに話す。
「……なんで揚げ足を取るんだ? 」
『揚げ足なんか取ってない。きょう姉は亮のこと嫌ってるし、声をかけるだけ無駄だよ』
拗ねたように口をとがらせる。
「何か聞かれると都合の悪いことでもあるの? 」
『…………』
雫は目を逸らし、口をつぐむ。僕は雫が自ら話すのを待つことにした。
今までも喧嘩はしたが、殆どの場合は僕が先に折れていた。でも、この件は、この件だけは譲れない。
僕は雫のアプリは外部ネットワークのサーバーに繋がっていることが引っかかっている。それは雫もそう説明していたし、矛盾は無い。
では、外部のレンタルサーバーはどのようにして借りたのか?身元の証明しようのない彼女が借りられる訳がないのだ。
本人に聞いてもとぼけられるのが関の山だ。なら第三者に話を聞くのがベターだろう。
腹を括って無言のままスマホのインカメラをじっと見つめ続けた。
気がつくとチャイムが聞こえてきた。2限目もあるが僕はサボる事を決めた。
雫の表情に僅かに焦りのような物が見えた。
「高瀬さんは悪くない。悪いのは雫だ」
『……何の話をしてるの? 』
よし、乗ってきた。
通学用のリュックをわざとスマホのカメラに映る位置にドンッと置く。
『な、なによ? 』
「リュックに高瀬さんから預かった手紙が入っている。雫が知りたがっている情報だ」
『……亮は何がしたいわけ? 意味わかんない』
僕は黙って、スマホのカメラに真っ直ぐ視線を合わせる。リュックのジッパーを開けて、一通の封筒を取り出す。
『高瀬の字……』
おもむろに、封筒の封を切る。
僕が封筒から取り出した手紙を確認すると、雫の顔が真っ青になっていることに気がついた。
『そ、それ……なに? 』
そのとき、僕の方肩にポンッと軽い衝撃を感じた。
「や、山内……すぐ見つかって良かった」
寛さんは両手を膝につき、肩で息をしていた。なんとも、タイミングが悪い。
寛さんが僕の腕を掴んできた。思わず、振り払おうとしたが、凄い力で狼狽える。
「何なんですか? 」
「今すぐ、ここを離れるぞ」
「待ってください。今、雫と大事な話をしてるんです」
「俺の話も重要だ。二人に関係している。頼む」
寛さんに深々と頭を下げられてしまった。あまりの真剣さに言葉を失ってしまった。
『亮、話は後。とりあえず、移動しよ』
「あ、ああ」
「助かる。こっちだ」
そう言うと寛さんが歩き始めた。納得がいかない僕は憮然としながら着いていった。
寛さんがこちらを振り返る。
「ここだ」
「ここって……」
ドアに貼付されたネームプレートを見て、驚いた。案内されたのは三神教授のゼミ室だった。
トントンとドアをノックして、寛さんが中に入ると、三神教授と佐藤先輩が中で待っていた。
三神教授は険しい顔をしていた。佐藤先輩は生気がなく目が真っ赤だった。
もしかして、泣いていたのだろうか?ただならぬ雰囲気に気圧される。
「あ、あの、なにが……」
三神教授の眼光が鋭く、言葉が喉を詰まって出てこなくなってしまった。
「ミスター山内、そこに座りなさい」
不安を感じて寛さんの方をを振り返る。僕の目を見つめると、僕に囁いた。
「山内、お前は……お前と雫ちゃんはあらぬ嫌疑をかけられている。三神教授の質問に答えてやってくれ」
『……嫌疑? 』
「どういうことですか? 」
「ミスター山内、これからその話をする。彼には君たちを黙って連れてきて欲しいと頼んだんだ」
心なしか、三神教授の目は先程よりも穏やかに見えた。それとは正反対に雫の顔には緊張の色が見えた。
……なんだ?
『……もしかして、SNSですか? 』
佐藤先輩がぬうっと顔をあげた。血の気のない顔と血走った目に恐怖を覚えた。
「ミス西園寺、まさか……」
『違います。私じゃありません』
雫は唇を噛み、下を向いてしまった。
「さっきから、みんな何の話をしてるんですか? 雫も何か知ってるなら、何で教えてくれないんだ」
思わず大きな声を出してしまい、佐藤先輩がビクッと震えていた。
スマホの画面を見ると雫も俯いていて、口をつぐんでいた。
「山内、落ち着け」
寛さんが僕の肩に手を乗せる。三神教授は自分のスマホを手渡してきた。
「ミスター山内、中の文章を確認してくれ。リンクは絶対に踏むな」
震える手でスマホを受け取ると某大手のSNSが表示されていた。
--------
やちよ624 @yayoi_yachi0624
同じ大学のSという女が、女子学生たちにフェイクポルノで脅している。これってすごく悪質な行為じゃない? 大学に通報した方がいいんじゃないか?
#フェイクポルノ犯罪
@hanako_flower
えぐいっすね...フェイクポルノを公開とか通報して当然。
やちよ624 @yayoi_yachi0624
前にリークされた情報が本当なら、頭おかしい。こいつの彼氏もグル。マスコミが報じるべき深刻な事案だと思う。
でるでる@daiharu2000
マジかよ...完全にアウトだわ。マスコミに是非取り上げてもらいたい。
猫ジラ@nekozilla
Sのやる事、胸糞悪い。 https://totally-fake-url.com/nonexistent_video1.mp4 を見てしまった。...本当にこの方が気の毒です。
やちよ624 @yayoi_yachi0624
これが入手したSと彼氏の画像です。https://def-not-a-real-site.xyz/madeup_file.png
Sはオンライン通話でしか、顔を出さない卑怯者。誰か、身元特定して
------
スレッドは延々と続いていた。
「これ、僕と雫がフェイクポルノで女子大生を脅しているって、……そういう内容ですよね」
三神教授は無言で首肯する。
「僕たちはこんなことやってません。濡れ衣です」
「では何故、ミス西園寺は呼び出された理由を察することができたんだね? 」
確かに雫は先回りして「SNSですか? 」と話していた。
「雫、どういうことか説明してくれるよな? 」
『…………その前に確認したいことがあります。佐藤先輩が被害にあったんですか? 』
三神教授は拳を固く握り、佐藤先輩は俯き、寛先輩はどうして良いのか分からないのか、ソワソワと落ち着かない。
三神教授は視線をこちらに戻し、口を開いたがまた俯いてしまった。
「……そうよ。わざわざ皆の前で確認する必要ある?」
『ご、ごめんなさい。配慮が足りませんでした』雫の声が震えていた。
「はじめから、これが目的だったの? だから、あのレストランで写真を撮ったの?」
あのレストラン……とは何のことだろうか?
『レストラン? 写真? なんの事……』
「惚けないでよ!!」
狭いゼミ室に佐藤先輩の声が響き渡り、一瞬で部屋に静寂が訪れた。
場が凍てついた。
『まっ、待ってくだ……』
次の瞬間、佐藤先輩は雫の映っているスマホを掴み、僕に投げつけてきた。顔面に直撃し、ガタンと床にスマホが落下した。
佐藤先輩は走り出し、ゼミ室を飛び出していってしまった。追いかけようとしたが、寛さんに手で制された。
「お前は行かないほうがいい。俺が追いかける。三神教授に分かる範囲の事情を説明してくれ」
「寛さん、俺……」
寛さんは小さく頷いた。
「分かっている。山内も雫ちゃんもそんなことしてないんだろ。とにかく、佐藤は俺に任せてくれ」
そう言うと寛さんも出ていってしまった。僕と三神教授は暫く茫然としていた。
床に落ちたスマホからすすり泣くような声が聞こえて、拾い上げると雫は泣いていた。
だが、ただ泣いている訳ではなかった。歯を食いしばり、瞳には怒りの炎が灯っているように見えた。
『誰だかしらないけど……絶対に許さない』
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