25 / 30
第25話 信頼は力に
しおりを挟む
「ははは……魔法で逃げようとしたの? そんなことができると、思い上がったのか!?」
アグナルはルチルが吹かせた風を、自分の杖から放たれる魔法で全てねじ伏せ――
完全に自分の威力の方が高いことを見せつけながら、ルチルの眼前に迫った。
「あくぅ……っ!」
「いいだろう、この際に教えてやるよ。ぼくの魔法は『嵐』だ!」
ルチルの胸倉を左手で掴んで、そのまま腕力で持ち上げる。その際に、左手に持っていたルチルの杖を、彼は乱暴に地面に叩きつけた。
「恐らく君の魔法は『風』とかその辺りだろう? 魔法にはな、上下関係が存在するんだよ!! 生まれながらの素質によって、勝てるかどうかが決まっている!!」
「君とぼくはそうだったわけだ――今後一切どのような修行を積んだ所で!! ぼくの放つ『嵐』の威力には、君の『風』は一生敵わないってことだ!!」
あまりにも傲慢で、勝ち誇った言葉を。
ルチルとアグナル以外に、聞き届けた少年が一人。
「――!!」
「ほう? やっと来たじゃないか。待ちくたびれたよ――」
「……いかがされましたアレス殿。先程からどうにもそわそわしておりますが……」
「んんっ、ああ……」
アレス達スヴァーダからの捜索隊は、乗ってきた馬車の中で過ごしていた。宿を取ると素性がバレるリスクが高まるからである。
「いや、なんだかな……胸騒ぎがして溜まらないのだ。こう、とんでもない事態になっている気がするというか……」
「アレス様がそう仰るなら間違いないですよ! 長年クレイン殿下の面倒を見てこられた、アレス様が……」
「そういうものかな……いや、ホッドミーミルに来たのも、もしかしたらという予感を信じてのことだからな……」
少し診療所に様子を見に行ってみるか――そう思った次の瞬間。
「ほ、報告します!! アレス様!!」
「どうした? いや……まさか殿下が!?」
「は、はい、クレイン殿下が……殿下と思われる蒼い炎の炎人を、偵察中に発見いたしました!!」
「何だって!?」
伝令の騎士に詰め寄り、アレスは声をもっと荒げる。
「一体いつのことだ!? どこで見かけた!?」
「つ、つい先程で……距離は1キロ程離れておりました……!」
「そんな……!!」
偵察した時点でそれだけ離れているなら、今はもっと遠くに行ってしまっているわけで――
「今すぐ出発するぞ!! ああくそっ、殿下を信用せずに見張りをつけておくべきだった……!!」
「さらっと悪口言ってますねアレス様……!?」
「てめえ……ルチルに手は出さねえって……」
「ああ、手は出してないよ? ただね、今はお説教をしていたのさ――」
今にもふつふつと怒るクレインの前で、アグナルはルチルの肉体から手を離した。特に配慮もされていないので、ルチルは顔を地面に打ちつけてしまう。
「うっ……ううっ……」
「さっさとルチルを解放しろ!! それが目的なんだろう!!」
「解放するとも、こっちの要求を飲んでくれるならね?」
「はっ、今の見てたら信用できねえな。先にルチルを解放してくれないとなぁ?」
「へえこっちの方が優位に立っているのに取引だって? 面白いな。それとも単純にバカなだけか?」
「くっちゃべってねえでさっさとしろ!!!」
「はいはい――そう怒らないでよ。まあいいや。ぼくは今上機嫌だから、飲んでやろう――」
アグナルはルチルを縛っていた縄を解いていく。
全て解いた後、ルチルの腕を引っ張って立ち上がらせ、前に押し出した。
「ほら、離してやったぞ。早く行けよ」
「っ……」
ルチルの足は素直に従い、前に動いていた。多くの見知らぬ男に囲まれるという経験が、ルチルから精神力を奪っていたのだ。
これでいいのかと考える力もない。ただどうにかなってほしいという願いしかない。
ルチルは一歩ずつ歩いていき、クレインの隣に差しかかったその時――
「――ふんっ!!!」
「おおっと! やっぱり一筋縄ではいかないんだなあ!?」
クレインは斧を手に構え、前に踏み込んだ。その直後、凄まじい轟音が神殿跡に鳴り響く。
「……クレインっ!!」
「ルチル!! 逃げるんだ!! ここからできるだけ遠くに!!」
クレインは斧を真っ直ぐ持ち、アグナルが杖を手に突進してきたのを塞いでいる。
アグナルの杖先からは風に加え、水滴と雷とはたまた雹まで噴き出していた。
「てめえ……今ルチルのことを殺そうとしただろ!!」
「そりゃあするとも。そうすれば君は庇おうとするだろ? まだ完全とは言えない身体で――どこまでやれるかな!?」
「クソが……!!」
クレインは軽くペンダントに触れた後、アグナルの魔法をどんどんいなしていく。
雷は直前で見切って、雹は斧の刃で塞いで、水に濡れても炎が消えることはなく。風が吹き荒ぼうとも、大地に踏ん張り彼は凌いでいた。
しかし、凌いでいるだけであった。アグナルは涼しい表情で魔法を繰り出しているのに、それに攻撃を仕掛けることができていないのだ。
「クレイン……クレインっ!!」
その光景を見て、ルチルは叫ぶことしかできなかった。逃げろと言われたのにも関わらず。
クレインを置いて逃げられるわけがなかった。しかしその戦闘に参加できるかと言うと、それも無理だった。
「おいおい、中が騒がしいと思ってきてみれば!」
「な~んだ逃げ出そうとしてるんじゃないの! へっへっへ!」
「……!」
神殿跡の入り口から、続々と男達が集まってきているまだ残っている山賊がいたのだ。
「あっ、ああああっ……!」
「待て!! あの坊主がどんな取引をしたかは知らねえが、お前は生かしちゃおけねえ!!」
ルチルは逃げ出した。入り口から左に逸れて、入り組んだ通路に向かって。
風の魔法で追い払うこともできただろうに、恐怖がそうさせなかった。
「来ないで……来ないでっ……!」
あの屈強な腕に捕まったら何をされるのか? 想像しただけでも吐き気がする。
確かに強い風を吹かせれば彼らを遠ざけることができるだろう。でも、もしも失敗してしまったら?
「あっちに行ってよ……いやだ……」
ルチルは咄嗟にそんなことを思った。さっきできたことに対して、自信を喪失していたのは――
魔法には上下関係があると、山賊達を払いのけても結局叩き潰される運命なのだと。
今クレインと戦っている、あの青年に思い知らされたからだろう――
「見つけたぁ!!」
「……っ!!」
夢中で走っていたルチルは、山賊達数人に先回りされたことに気づかず、真正面から鉢合ってしまった。
後ろからも追いかけてくる音がして、両側は壁で塞がれている。もうどこにも逃げられない――
「『月影』ッ!!!」
「ぐお……っ!?」
そう思った直後、左側の壁が煙を上げて破壊され――
加えてそこから影がこぼれ出す。それは山賊達を瞬く間に覆い尽くしたと思うと、揃って地面に伏させた。
「はぁ、はぁ……ぐっ……」
クレインは腕の傷口を押さえ、息を深く吐きながら壁の穴から姿を見せた。
服は焦がれそして濡れている。あの嵐にやられてしまったのだろう。
そんな彼はルチルと目が合うと、表情が冷めていく。
「……なんでまだここにいやがる。逃げろって言ったはずだ……!!」
「で、でも……」
「でもじゃねえ!! いいか、あいつはお前じゃ敵わねえ!! 逃げるしかねえんだよ!!」
「そんなこと言って、クレインだってボロボロじゃん……!」
「おれはいい……月の光は残っている! お前を逃がすだけなら、十分戦える!! なのに……!!!」
「――嫌だ! わたしはそんなの嫌だよ!!」
ルチルは叫んだ。声が枯れるのも気にせず、思いっ切り。
そうしなければ、依然神殿内で渦巻く嵐の轟音に、かき消されてしまうから。
「わたしは最初に誓った!! あなたの力になるって!! だから……ここであなたを見捨てて逃げたくない!!」
そう言葉にした後に、ルチルはようやく気がついた。
山賊達から逃げ回っていたのは、力の差を見せ付けられて、怖かったからではない。
この状況でクレインの助けになるにはどうすればいいのか、わからなかった――方法を探していたからであると。
「……」
「そうか」
クレインは一言だけ言い放った後、左手に持っていたものをルチルに投げ渡す。
一瞬バランスを崩しながらも、ルチルはそれを受け取った。自分が愛用している杖である。
「ちょっとでも役に立ちたいと思うなら、堂々としてくれよ。でないとこの嵐の前では、何もできずに倒れるだけだ」
「……ルチル。お前の魔法はとっても凄いだろう。それをわざわざ拾っておいたのも――」
「お前の魔法に頼りたいと思ったからだ……あんなに強い風を操れるんだ。ならこの状況を打開することも、きっとできるはずだろ?」
「おれ一人じゃくたばりそうだが、お前と一緒なら――やれる! やれるはずだ! 信じているぞ、ルチル!!!」
そこでクレインは言葉を切り、頭を軽く振った後、広間へと戻っていった。
向かっていった先からは、アグナルの挑発するような声が聞こえてくる。
「ガールフレンドとの別れは済んだかい? ぼくがくれてやった時間だ、感謝しろよ!」
「はっ、随分と自惚れが強いんだな? だがそれも終わりだ、今に叩きのめしてやるッ!!」
「そっちこそ威勢だけはいいようだが――くたばるのも時間の問題だなぁ!?」
信じていると言ってくれた声が、何度も自分の中を駆け巡る。
それは優しさをもってして包み込んでくれて、立ち上がる強さを与えてくれた。
杖も手元に戻ってきた今、もう何も理由をつける必要はない。ルチルは恐れず歩き出した――
アグナルはルチルが吹かせた風を、自分の杖から放たれる魔法で全てねじ伏せ――
完全に自分の威力の方が高いことを見せつけながら、ルチルの眼前に迫った。
「あくぅ……っ!」
「いいだろう、この際に教えてやるよ。ぼくの魔法は『嵐』だ!」
ルチルの胸倉を左手で掴んで、そのまま腕力で持ち上げる。その際に、左手に持っていたルチルの杖を、彼は乱暴に地面に叩きつけた。
「恐らく君の魔法は『風』とかその辺りだろう? 魔法にはな、上下関係が存在するんだよ!! 生まれながらの素質によって、勝てるかどうかが決まっている!!」
「君とぼくはそうだったわけだ――今後一切どのような修行を積んだ所で!! ぼくの放つ『嵐』の威力には、君の『風』は一生敵わないってことだ!!」
あまりにも傲慢で、勝ち誇った言葉を。
ルチルとアグナル以外に、聞き届けた少年が一人。
「――!!」
「ほう? やっと来たじゃないか。待ちくたびれたよ――」
「……いかがされましたアレス殿。先程からどうにもそわそわしておりますが……」
「んんっ、ああ……」
アレス達スヴァーダからの捜索隊は、乗ってきた馬車の中で過ごしていた。宿を取ると素性がバレるリスクが高まるからである。
「いや、なんだかな……胸騒ぎがして溜まらないのだ。こう、とんでもない事態になっている気がするというか……」
「アレス様がそう仰るなら間違いないですよ! 長年クレイン殿下の面倒を見てこられた、アレス様が……」
「そういうものかな……いや、ホッドミーミルに来たのも、もしかしたらという予感を信じてのことだからな……」
少し診療所に様子を見に行ってみるか――そう思った次の瞬間。
「ほ、報告します!! アレス様!!」
「どうした? いや……まさか殿下が!?」
「は、はい、クレイン殿下が……殿下と思われる蒼い炎の炎人を、偵察中に発見いたしました!!」
「何だって!?」
伝令の騎士に詰め寄り、アレスは声をもっと荒げる。
「一体いつのことだ!? どこで見かけた!?」
「つ、つい先程で……距離は1キロ程離れておりました……!」
「そんな……!!」
偵察した時点でそれだけ離れているなら、今はもっと遠くに行ってしまっているわけで――
「今すぐ出発するぞ!! ああくそっ、殿下を信用せずに見張りをつけておくべきだった……!!」
「さらっと悪口言ってますねアレス様……!?」
「てめえ……ルチルに手は出さねえって……」
「ああ、手は出してないよ? ただね、今はお説教をしていたのさ――」
今にもふつふつと怒るクレインの前で、アグナルはルチルの肉体から手を離した。特に配慮もされていないので、ルチルは顔を地面に打ちつけてしまう。
「うっ……ううっ……」
「さっさとルチルを解放しろ!! それが目的なんだろう!!」
「解放するとも、こっちの要求を飲んでくれるならね?」
「はっ、今の見てたら信用できねえな。先にルチルを解放してくれないとなぁ?」
「へえこっちの方が優位に立っているのに取引だって? 面白いな。それとも単純にバカなだけか?」
「くっちゃべってねえでさっさとしろ!!!」
「はいはい――そう怒らないでよ。まあいいや。ぼくは今上機嫌だから、飲んでやろう――」
アグナルはルチルを縛っていた縄を解いていく。
全て解いた後、ルチルの腕を引っ張って立ち上がらせ、前に押し出した。
「ほら、離してやったぞ。早く行けよ」
「っ……」
ルチルの足は素直に従い、前に動いていた。多くの見知らぬ男に囲まれるという経験が、ルチルから精神力を奪っていたのだ。
これでいいのかと考える力もない。ただどうにかなってほしいという願いしかない。
ルチルは一歩ずつ歩いていき、クレインの隣に差しかかったその時――
「――ふんっ!!!」
「おおっと! やっぱり一筋縄ではいかないんだなあ!?」
クレインは斧を手に構え、前に踏み込んだ。その直後、凄まじい轟音が神殿跡に鳴り響く。
「……クレインっ!!」
「ルチル!! 逃げるんだ!! ここからできるだけ遠くに!!」
クレインは斧を真っ直ぐ持ち、アグナルが杖を手に突進してきたのを塞いでいる。
アグナルの杖先からは風に加え、水滴と雷とはたまた雹まで噴き出していた。
「てめえ……今ルチルのことを殺そうとしただろ!!」
「そりゃあするとも。そうすれば君は庇おうとするだろ? まだ完全とは言えない身体で――どこまでやれるかな!?」
「クソが……!!」
クレインは軽くペンダントに触れた後、アグナルの魔法をどんどんいなしていく。
雷は直前で見切って、雹は斧の刃で塞いで、水に濡れても炎が消えることはなく。風が吹き荒ぼうとも、大地に踏ん張り彼は凌いでいた。
しかし、凌いでいるだけであった。アグナルは涼しい表情で魔法を繰り出しているのに、それに攻撃を仕掛けることができていないのだ。
「クレイン……クレインっ!!」
その光景を見て、ルチルは叫ぶことしかできなかった。逃げろと言われたのにも関わらず。
クレインを置いて逃げられるわけがなかった。しかしその戦闘に参加できるかと言うと、それも無理だった。
「おいおい、中が騒がしいと思ってきてみれば!」
「な~んだ逃げ出そうとしてるんじゃないの! へっへっへ!」
「……!」
神殿跡の入り口から、続々と男達が集まってきているまだ残っている山賊がいたのだ。
「あっ、ああああっ……!」
「待て!! あの坊主がどんな取引をしたかは知らねえが、お前は生かしちゃおけねえ!!」
ルチルは逃げ出した。入り口から左に逸れて、入り組んだ通路に向かって。
風の魔法で追い払うこともできただろうに、恐怖がそうさせなかった。
「来ないで……来ないでっ……!」
あの屈強な腕に捕まったら何をされるのか? 想像しただけでも吐き気がする。
確かに強い風を吹かせれば彼らを遠ざけることができるだろう。でも、もしも失敗してしまったら?
「あっちに行ってよ……いやだ……」
ルチルは咄嗟にそんなことを思った。さっきできたことに対して、自信を喪失していたのは――
魔法には上下関係があると、山賊達を払いのけても結局叩き潰される運命なのだと。
今クレインと戦っている、あの青年に思い知らされたからだろう――
「見つけたぁ!!」
「……っ!!」
夢中で走っていたルチルは、山賊達数人に先回りされたことに気づかず、真正面から鉢合ってしまった。
後ろからも追いかけてくる音がして、両側は壁で塞がれている。もうどこにも逃げられない――
「『月影』ッ!!!」
「ぐお……っ!?」
そう思った直後、左側の壁が煙を上げて破壊され――
加えてそこから影がこぼれ出す。それは山賊達を瞬く間に覆い尽くしたと思うと、揃って地面に伏させた。
「はぁ、はぁ……ぐっ……」
クレインは腕の傷口を押さえ、息を深く吐きながら壁の穴から姿を見せた。
服は焦がれそして濡れている。あの嵐にやられてしまったのだろう。
そんな彼はルチルと目が合うと、表情が冷めていく。
「……なんでまだここにいやがる。逃げろって言ったはずだ……!!」
「で、でも……」
「でもじゃねえ!! いいか、あいつはお前じゃ敵わねえ!! 逃げるしかねえんだよ!!」
「そんなこと言って、クレインだってボロボロじゃん……!」
「おれはいい……月の光は残っている! お前を逃がすだけなら、十分戦える!! なのに……!!!」
「――嫌だ! わたしはそんなの嫌だよ!!」
ルチルは叫んだ。声が枯れるのも気にせず、思いっ切り。
そうしなければ、依然神殿内で渦巻く嵐の轟音に、かき消されてしまうから。
「わたしは最初に誓った!! あなたの力になるって!! だから……ここであなたを見捨てて逃げたくない!!」
そう言葉にした後に、ルチルはようやく気がついた。
山賊達から逃げ回っていたのは、力の差を見せ付けられて、怖かったからではない。
この状況でクレインの助けになるにはどうすればいいのか、わからなかった――方法を探していたからであると。
「……」
「そうか」
クレインは一言だけ言い放った後、左手に持っていたものをルチルに投げ渡す。
一瞬バランスを崩しながらも、ルチルはそれを受け取った。自分が愛用している杖である。
「ちょっとでも役に立ちたいと思うなら、堂々としてくれよ。でないとこの嵐の前では、何もできずに倒れるだけだ」
「……ルチル。お前の魔法はとっても凄いだろう。それをわざわざ拾っておいたのも――」
「お前の魔法に頼りたいと思ったからだ……あんなに強い風を操れるんだ。ならこの状況を打開することも、きっとできるはずだろ?」
「おれ一人じゃくたばりそうだが、お前と一緒なら――やれる! やれるはずだ! 信じているぞ、ルチル!!!」
そこでクレインは言葉を切り、頭を軽く振った後、広間へと戻っていった。
向かっていった先からは、アグナルの挑発するような声が聞こえてくる。
「ガールフレンドとの別れは済んだかい? ぼくがくれてやった時間だ、感謝しろよ!」
「はっ、随分と自惚れが強いんだな? だがそれも終わりだ、今に叩きのめしてやるッ!!」
「そっちこそ威勢だけはいいようだが――くたばるのも時間の問題だなぁ!?」
信じていると言ってくれた声が、何度も自分の中を駆け巡る。
それは優しさをもってして包み込んでくれて、立ち上がる強さを与えてくれた。
杖も手元に戻ってきた今、もう何も理由をつける必要はない。ルチルは恐れず歩き出した――
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
オオカミ少女と呼ばないで
柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。
空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように――
表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~
橘花やよい
児童書・童話
宝石店の娘・ルリは、赤い瞳の少年が持っていた赤い宝石を、間違えてお客様に売ってしまった。
しかも、その少年は吸血鬼。石がないと人を襲う「吸血衝動」を抑えられないらしく、「石を返せ」と迫られる。お仕事史上、最大の大ピンチ!
だけどレオは、なにかを隠しているようで……?
そのうえ、宝石が盗まれたり、襲われたりと、騒動に巻き込まれていく。
魔法ファンタジー×ときめき×お仕事小説!
「第1回きずな児童書大賞」特別賞をいただきました。
天空の魔女 リプルとペブル
やすいやくし
児童書・童話
天空の大陸に住むふたりの魔女が主人公の魔法冒険ファンタジー。
魔法が得意で好奇心おうせいだけど、とある秘密をかかえているリプルと、
基本ダメダメだけど、いざとなると、どたんばパワーをだすペブル。
平和だった魔女学園に闇の勢力が出没しはじめる。
王都からやってきたふたりの少年魔法士とともに、
王都をめざすことになったリプルとペブル。
きほんまったり&ときどきドキドキの魔女たちの冒険物語。
ふたりの魔女はこの大陸を救うことができるのか!?
表紙イラスト&さし絵も自分で描いています。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
リュッ君と僕と
時波ハルカ
児童書・童話
“僕”が目を覚ますと、
そこは見覚えのない、寂れた神社だった。
ボロボロの大きな鳥居のふもとに寝かされていた“僕”は、
自分の名前も、ママとパパの名前も、住んでいたところも、
すっかり忘れてしまっていた。
迷子になった“僕”が泣きながら参道を歩いていると、
崩れかけた拝殿のほうから突然、“僕”に呼びかける声がした。
その声のほうを振り向くと…。
見知らぬ何処かに迷い込んだ、まだ小さな男の子が、
不思議な相方と一緒に協力して、
小さな冒険をするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる