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愛おしい過去 ⑰ もし私が死んでも
しおりを挟むブランドンが、士官として目を通した調査書には、注釈が記されていた。
*両親の死について、自己の責任である旨の発言があり、希死概念が強かったため、保護施設では、特別注意の必要な児童として扱われていた。
また、火災の際、当人は気を失った状態で消防士により発見されている。
当人の記憶も曖昧で、裁判出廷年齢にも達していなかった為、正確な記録は残っていない。
在学時の成績は常にトップクラスで、配属先に際しては、第一もしくは第二部隊が適当と思われる*
ーこの男には、死ねない理由が必要だ。
ブランドン・グロス・リーは、そう考えていた。
細身の身体に毛布を掛け直し、自分の胸に顔を埋める様にして眠るシロウを、優しく抱きしめる。
自分の年齢を考えれば、自分はシロウよりずっと先にこの世を去る。
愛する者を遺して自分は死ぬ。
今の段階では『その時』に、まだ若いシロウが自ら命を断ちそうな予感がするのだ。
そうならない為に。
他人から、強烈に必要とされなけれはならない。
だから、ハロルドを託す。
私の部隊を託す。
それが、ブランドン・グロス・リーなりの愛し方。
長く生きて、幸せであって欲しい。
私が死んだ後も。
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