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知っている

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「部隊での生活は?慣れたかね?」
 病室内にあった、折り畳みの椅子に座って、ハロルドは教授の手を握っている。

「まあまあかな」
「おや、楽しめてないのかね?毎日、刺激的だろう?」
「何それ、スゲェ意味深」

 お互いに柔らかく微笑んで見つめ合う。

 窓枠に保たれながら、俺は不思議な気分で二人のやり取りを見ていた。
 いわゆる教師と、元教え子。だよな?
 一般的な距離感て、こんな風なのか?



「目を開けた時、金色の髪の子がいたんだが。はて、お迎えのエンジェルだったかな」

「……おい、このタイミングで、その発言は笑えないぞ」

 俺の言葉にハロルドは苦笑いした。

「あぁ、俺のルームメイト。ほら窓際にいる。可愛いだろ?」

 教授は顔を動かして俺の方を見た。

「そうだね、可愛いらしい子だ」
 慈しみに満ちた、優しい目だった。

「アンタら二人共、俺みたいなのを可愛いとか言うなよ。感性がおかしいぞ」

 そんな風に言われたことがないから、何だかムズムズする。


「あんな事言ってるけど、いつも一緒にいるんだ。俺が不甲斐ない時は怒ってくれるし、手を引いてくれる。これからもずっと一緒にいる」

『お前が、嫌じゃなければ』

 ハロルドは、俺に視線を寄越すと口の動きだけでそう言った。

 そして、俺の返事を待たずに教授に向き直る。 

「だから俺は、一人ぼっちじゃないんだ。もう大丈夫だよ」

 もう大丈夫?どういう意味だ?

 ハロルドは、一呼吸おいて教授の手を両手で握り直す。



「俺の事は心配ないよ、父さん」

 驚いたのは教授も一緒みたいだ。
 大きく目を見開いてハロルドを凝視する。

「なぜ、そのことを…」
 もともと悪い顔色が、更に血の気を失っていくのがわかった。
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