誰かに愛されるなんて、あり得ないと思ってた

まる丸〜

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突然の告白

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 俺は、ゆっくり顔を上げた。


 心配したのか?心配したのかだって⁈

 なんてバカみたいな質問だ!

 今更、そんな事すら言わなきゃわからないのか!ハロルド!

 俺はズリズリとベッドを降りて、クローゼットを開けた。
 パンツを履いて、いつの間にかハロルドが買い足したスウェットの上下を着る。

 ハロルドには、シーアに持たされた荷物の中から、病衣の替えを引っ張り出した。

「コレ、着ろ。手伝うから」

「レイ、なあ…」

「うるさい!髪も乾かすからなっ」

「なんで言わねぇの、なあ、レイ」

「アンタだって、言わなかった!」

「あぁ?」

「パートナー申請こと!」

 あ、と言ったきり、ハロルドは口を閉じた。





 前開きの上衣を着せて紐を結ぶ。
 下衣はパンツと一緒に膝上まで足を通した。それから正面に座って、ハロルドに俺の肩を掴ませた。上体を持ち上げると、意外とスムーズに履かせる事が出来た。

 洗面台からドライヤーを持って来る。
 ベッド近くのコンセントに差し込んでスイッチを入れた。

 じっと前を向いて押し黙っているハロルドの髪を、俺も後ろから無言で乾かした。

 カチッ、とドライヤーのスイッチを切ったタイミングて、ハロルドが口を開いた。

「悪い…」

「……なにを謝ってるんだよ?」

 ハロルドは、俺に向き直って黒い瞳で俺を見た。

「勝手に、お前をパートナーとして申請した。お前の気持ちの確認もしないで」

 そうだ。アンタは勝手だ。

「俺は、自分に何があった時に、お前に知って欲しいと思ったんだ。レイ、お前に一番に」

 俺はアンタなんか。

「あの申請が通れば、お前の事を縛れると思った」

「しばる?」

「パートナー申請は、一人の相手としか結べない。だから、もしおまえに好きな奴が出来た時に、ソイツとの申請が通らないようにしたかった」

「はあ⁈」

「悪かった。そんなのお前の自由なのに」

「……アンタ、確か前にもそんな事言ってたな?俺に好きな奴がいるとかいないとか」

 あぁ確か、アレはハロルドの本部移動のデマが流れた時だ。
 俺はその話を信じて、ハロルドと距離を置こうとしたんだ。

 そうしたらー。
 好きな奴ができたのか、と。
 だから俺とは寝ないのか、と。

 後になって、その話はデマだとわかったけど、噂話の発信元であるおっさんに、ハロルドは酷く怒っていた。

「俺は……アリスと一緒に、お前が離陸場に居るって聞いて嬉しかった。
 帰って来てから、お前ずっと優しいし。たまには怪我すんのも悪くないかなとか、そんな」

 パシッ!

 頭で考えるより先に体が動いた。
 傷のないハロルドの右頬を引っぱたいた。

「アンタ、なにを、こんなのを何回も俺にやれって言うのか⁈こんな、心臓が痛くて息も出来ないような!
 お、俺は、あんたがケガしたって聞いてから、ずっと苦しくて、不安でっ!」

「レイ」

 穏やかな声で名前を呼ばれた。

「やっぱり心配してくれてたのか」

 ワナワナと震える拳をもう片方の手で抑えながら、声を絞り出した。

「なん、なんで嬉しそうなんだ!俺は、おれ、は」

 こんな苦しいのは二度と嫌なのにー


「レイ、お前が好きだ」

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