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そんなつもりは無かった。本当だ。
しおりを挟むハロルドが驚いたように顔をあげる。
何度か瞬きして、じっと俺を見た。
「なんだよ、忘れたのか?帰ったらキスしてくれって言ったよな?」
「覚えてた、のか?」
ハロルドにとっては大して意味のない言葉だったのかな。
「まぁ…。アンタがしたくないなら、別に……」
顔をそらした俺の耳元で「レイ」と、ハロルドがささやく。
「こっち見てくれ」
促されて視線を合わせた。
俺の視界に入ってきたのは、すがるような目で俺を見つめるハロルドだった。
「なんだよ、そんな顔しなくたって」
「してくれ、レイ」
「ん…ほら…」
少し踵を浮かせて、上を向いた。
ハロルドの唇が、俺のと重なったと思った瞬間。ヌルリと舌が入って来る。
あぁ、ハロルド。
お互いの舌を絡めているだけで、どうしてこんなに気持ちいいんだ……。
ハロルドの舌は柔らかくて。
でも熱くて、いつだって執拗に俺を求めてくる。
しばらくして口を離したハロルドが、
ふふ、と笑って俺の頬に自分の顔をすりよせた。
「帰って来たって感じがする」
「キスで?」
「そう。れーくんのキスで」
ハロルド、嬉しそうだ。良かった。
「あー、あったけぇ」
暖かいのは、背中に当ててるシャワーのことか、抱き合っている俺の体温のことなのか。
身体が密着してるから、もうハロルドにはわかってると思うけど、俺の下半身がキスで反応してしまっている。
怪我人相手に、寝かしつけてくれなんて頼むつもりもない。おさまってくれるのを待ちながら、ハロルドの髪を洗い、シャワーで流した。
それから、どうしても自分でやると懇願するハロルドの手に、ボディーソープを垂らしてやった。
バランスを崩して倒れてしまいそうで、俺はハロルドの左脇から自分の右腕を差し入れて背中にまわした。
ハロルドは、俺の身体に保たれるようにして重心をとっている。
俺はハロルドの右手の邪魔にならないように、シャワーを持つ左手を後ろに引いた。
二人の身体の隙間から、にゅるりと泡まみれの手が入ってくる。
ハロルドのナニは、『俺の』より少し上の位置にあるけど、にゅくにゅくと上下に動く手がどうしても『俺の』に当たるんだ。
わずかに身体を離したハロルドが、ひくひくする『俺の』反応を見ているのが判って、居た堪れない。
「レイ。ベッド行くか?さすがにいつもみたいには出来ねぇけど」
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