誰かに愛されるなんて、あり得ないと思ってた

まる丸〜

文字の大きさ
上 下
63 / 100

プロポーズ?

しおりを挟む


「プロポーズ?」

「そうよ!」

「ハロルドが?」

「そう!!」

「だれに?」

「だから、坊や!貴方によ!!」

 ヒートアップしてきたアリスが、作業台をバンバン叩く。

「はあ⁈」

 思わず声を出した俺に、じーさんは首をかしげる。

「聞くが、お主らはそういう仲なのかの?」

「そういうってなんだよ?」

「察しが悪いのう。ハロルドと恋愛関係なのかと聞いとるんじゃ」

「馬鹿なこと言うなよ。ハロルドとはただのー」

 ーただの?

「ただの?何じゃ?」 

 ただの……なに?


 なんだこれ。頭が回らない。


 俺の沈黙をどうとったのか、じーさんは少しだけ生えてる顎髭をジョリジョリ掻いた。

「ふむ。ハロルドの申請については再考の余地があるの。
 ボウズは部屋に戻ってよいぞ。呼び出して悪かったの。
 ハロルドには後で説教しておく。
 シロウと班長にもワシから説明しておくわい」

 話しは終わったとばかりにじーさんは席を立つ。

 俺は慌てた。

「帰っていいって、じゃあハロルドの看病は誰がするんだよ?」

「そりゃ勿論、通常通りワシら医官がする」

「坊や、坊やが呼ばれたのは、パートナー申請の相手だからよ。そうじゃないとわかった今、対応は変わるわ。単なるルームメイトなんですもの」



 アリスが言い終わった瞬間、部屋の電話が鳴った。
 じーさんは急患か?と言い残し、入り口横に設置されている電話を取りに行く。 


 そうか。ハロルドとは単なるルームメイトなんだ。
 その言葉に、何故かチリチリと胸が痛む。

「坊や」

 アリスは、じーさんが離れたタイミングで俺に問いかける。

「本当のところはどうなのかしら?ハロルドがパートナー申請を出したのは、ハロルドの勝手な思い上がりなのかしら?」

 アリスの質問に、すぐには答えられなかった。俺達の関係が『何』なのか?

 それに答える為には、俺を寝かしつける為に、ハロルドが毎晩『何を』してるのかを他人に言う事になる。

「なんて説明したらいいかわからない」

 俺だけにメリットがある関係なんだ。
 それなのにプロポーズなんか、するはずないだろ。

 アリスは静かに俺を見つめた。
 じっと、俺が言葉を紡ぐのを待っている。



 ハロルドの事を特別な友達だと思ってた時期もある。
 でも、あの男の存在は、もうそんな言葉には収まらない。

「ハロルドとは、そう言うんじゃない。恋愛してるとかじゃない。違うんだ」

 それ以上は、上手い言葉が見つからない。

 付き合ってるとか、そんなんじゃ……ない。


 ハロルドは……。

 俺の不眠の解消相手で。
 俺の誕生日を祝ってくれて。
 貴重な休日に海外まで同行してくれる、ルームメイト。

 目が覚めるといつも隣にいて、俺を抱きしめて眠っているルームメイト。

 俺に心地良い温もりと、優しさを与えてくれるルームメイト。



 俺は、あの男がそばに居ないと息苦しさを感じるまでに依存してる。


 それはもう『ただのルームメイト』じゃ、ない。

 俺達は、はじめて出会った、あの日から……。
 純粋に『ただのルームメイト』だった事なんて一日も無い。
 

 あの男は、俺の。

 特別で、大事な男だ。






 俺は自分が気づいてしまった感情の恐ろしさに気づいて、また口を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

目標、それは

mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。 今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?

ルームシェアは犬猿の仲で

凪玖海くみ
BL
几帳面なエリート会社員・望月涼介は同僚の結婚を機に家を失う。 新たな同居人として紹介されたのは、自由奔放なフリーター・桜庭陽太。 しかし、性格が正反対な二人の共同生活は予想通りトラブル続き⁉ 掃除、食事、ルール決め——ぶつかり合いながらも、少しずつ変化していく日常。 犬猿の仲なルームメイトが織りなす、ちょっと騒がしくて心地いい物語。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...