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プロポーズ?
しおりを挟む「プロポーズ?」
「そうよ!」
「ハロルドが?」
「そう!!」
「だれに?」
「だから、坊や!貴方によ!!」
ヒートアップしてきたアリスが、作業台をバンバン叩く。
「はあ⁈」
思わず声を出した俺に、じーさんは首をかしげる。
「聞くが、お主らはそういう仲なのかの?」
「そういうってなんだよ?」
「察しが悪いのう。ハロルドと恋愛関係なのかと聞いとるんじゃ」
「馬鹿なこと言うなよ。ハロルドとはただのー」
ーただの?
「ただの?何じゃ?」
ただの……なに?
なんだこれ。頭が回らない。
俺の沈黙をどうとったのか、じーさんは少しだけ生えてる顎髭をジョリジョリ掻いた。
「ふむ。ハロルドの申請については再考の余地があるの。
ボウズは部屋に戻ってよいぞ。呼び出して悪かったの。
ハロルドには後で説教しておく。
シロウと班長にもワシから説明しておくわい」
話しは終わったとばかりにじーさんは席を立つ。
俺は慌てた。
「帰っていいって、じゃあハロルドの看病は誰がするんだよ?」
「そりゃ勿論、通常通りワシら医官がする」
「坊や、坊やが呼ばれたのは、パートナー申請の相手だからよ。そうじゃないとわかった今、対応は変わるわ。単なるルームメイトなんですもの」
アリスが言い終わった瞬間、部屋の電話が鳴った。
じーさんは急患か?と言い残し、入り口横に設置されている電話を取りに行く。
そうか。ハロルドとは単なるルームメイトなんだ。
その言葉に、何故かチリチリと胸が痛む。
「坊や」
アリスは、じーさんが離れたタイミングで俺に問いかける。
「本当のところはどうなのかしら?ハロルドがパートナー申請を出したのは、ハロルドの勝手な思い上がりなのかしら?」
アリスの質問に、すぐには答えられなかった。俺達の関係が『何』なのか?
それに答える為には、俺を寝かしつける為に、ハロルドが毎晩『何を』してるのかを他人に言う事になる。
「なんて説明したらいいかわからない」
俺だけにメリットがある関係なんだ。
それなのにプロポーズなんか、するはずないだろ。
アリスは静かに俺を見つめた。
じっと、俺が言葉を紡ぐのを待っている。
ハロルドの事を特別な友達だと思ってた時期もある。
でも、あの男の存在は、もうそんな言葉には収まらない。
「ハロルドとは、そう言うんじゃない。恋愛してるとかじゃない。違うんだ」
それ以上は、上手い言葉が見つからない。
付き合ってるとか、そんなんじゃ……ない。
ハロルドは……。
俺の不眠の解消相手で。
俺の誕生日を祝ってくれて。
貴重な休日に海外まで同行してくれる、ルームメイト。
目が覚めるといつも隣にいて、俺を抱きしめて眠っているルームメイト。
俺に心地良い温もりと、優しさを与えてくれるルームメイト。
俺は、あの男がそばに居ないと息苦しさを感じるまでに依存してる。
それはもう『ただのルームメイト』じゃ、ない。
俺達は、はじめて出会った、あの日から……。
純粋に『ただのルームメイト』だった事なんて一日も無い。
あの男は、俺の。
特別で、大事な男だ。
俺は自分が気づいてしまった感情の恐ろしさに気づいて、また口を閉じた。
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