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消息不明
しおりを挟むハロルド達と連絡が取れなくなった。
それを聞いたのは、ハロルドが出発してニ日が経った頃だ。
食堂で夕食を摂っていたら、俺の向かいにクマちゃん班長が座った。
「レイ・ダヘンハイム、そのまま聞け」
クマちゃんは、フォークにクルクルとパスタを巻き付けながら、静かに話し出した。
「ハロルドの乗った輸送機と連絡が取れなくなっている」
俺は、とっさに返事が出来なかった。
「無線機の不調か、輸送機自体に何かあったのかもしれない」
「……なにかって」
「詳しくは言えないが、相当量の爆発物を積んで飛んでいる。それを嗅ぎつけた奴等からの襲撃、墜落。
可能性だけで話すなら、いくらでも不安要素はある。我々の仕事はそう言う仕事だ」
話しながらも、クマちゃんは豚肉のソテーを平らげ、スープカップに口を付ける。傍目には、こんな深刻な話をしてるようには見えないだろう。
「ただ、今のところ近隣の国で航空機の事件事故の情報はない」
俺は喉の奥が渇いて、そうか、と返すのがやっとだった。
「他の者にはまだ言うな。
今、お前に話している事は、私の独断で伝えるべきだ、と判断した事だ」
「俺だけ?……なんで」
「私がお前の立場だったら、例え不確定であっても、パートナーに関する情報は欲しい。だから話した」
パートナー。
俺達の関係を『ルームメイト』じゃなく『パートナー』だと、クマちゃんは言った。
「もし、不安感が強いようなら医務室の隣にあるカウンセリングルームを訪ねるといい」
カウンセリング?俺が?
ナプキンで口を拭きながら、静かにクマちゃんは続けた。
「我々にこうして食事が提供されるのと同じ事だ、ダヘンハイム。
医務室もカウンセリングルームも、利用するのは我々に与えられた当然の権利だ。私も時々使っている」と。
何も恥ずかしい事ではない、と言われた気がした。
クマちゃんが席を立った後、俺は皿に残っていたソテーを口に押し込み、スープで流し込んだ。
それから急いで部屋に帰った。
帰ったってハロルドは居ないのに、少しでも早く、ハロルドの匂いの残る部屋に帰りたかった。
ドアを閉めてハロルドのベッドの上で膝を抱える。
ハロルド。
俺は、いつも通り訓練をこなして食事をして、眠れないながらも夜にはベッドに入っていたんだ。
アンタが大変な目に遭ってるかも知れないのに。俺は『いつも通り』を過ごしてた。
そんな自分に無性に腹が立った。
「アンタどこにいるんだ」
こんな…ただ待ってる事しか出来ない。
「こんなの嫌だ」
俺がもっと早く入隊してれば。
俺がもっとアンタに釣り合う立場だったら。
どこにだって、一緒に飛んで行けたのに。
何の追加情報もないまま、さらに時間は過ぎた。
そして、ハロルドが出発してから五日目の夜。
俺は士官室に呼ばれた。
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