56 / 100
深夜の依頼
しおりを挟む相手が誰なのかはすぐに分かった。
クソッタレが直接連絡してきやがった。
「第二部隊のシンシア・ロードライドが拘束された。相手は引き渡しに相応しい物と交換だと言っている」
いつもは班長がしてくる連絡を、士官がする時は、やっぱりそれくらいの緊急性があるのだ。
「わかった。シンシアを救出して来れば良いんだな?
連れて行く隊員の選別は俺がする。輸送機のパイロットは、第二部隊に指名したい奴がいる。それも俺が連絡する。
その許可が出ないなら、シンシアを生きて連れて帰る確約は出来ない」
「お前に任せよう。拘束されている場所の詳細は、二時間以内に班長から連絡させる。アリスにはまだ情報は渡すな」
シンシアとアリスは夫婦だ。
それでも、情報共有出来ないとなると、シンシアの置かれている状況が、相当悪いのだろう。
「その部屋にいるネズミにもだ」
はぁん⁈
「おい、ネズミ呼ばわりすんの止めろ。自分の部下を自分で侮辱するなよ」
士官は、フン、と鼻で笑って電話を切った。
あーもう、なんでこんな奴が出世してんだ。ガシガシ頭を掻いて、一つ溜息をつく。
真っ暗な部屋の、レイが眠るベッドに腰掛ける。
暗闇に目が慣れて、おだやかな表情で瞳を閉じているレイの顔が認識できた。
レイ、また何日か離れる事になるな。
少しは寂しいと思ってくれるか?
俺は欲求に抗えずに、眠るレイの唇に触れるだけのキスをする。
静かな寝息が乱れないのを確認して安心した。どうやら起こさずに済んだ様だ。
名残惜しいが、今は時間がない。
任務を終えて戻ってくれば、レイとはまた触れ合える。
自分にそう言い聞かせて体を起こす。
そして、シンシア救出に関するタスクをこなす為にそおっと部屋を出た。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説


目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?
ルームシェアは犬猿の仲で
凪玖海くみ
BL
几帳面なエリート会社員・望月涼介は同僚の結婚を機に家を失う。
新たな同居人として紹介されたのは、自由奔放なフリーター・桜庭陽太。
しかし、性格が正反対な二人の共同生活は予想通りトラブル続き⁉
掃除、食事、ルール決め——ぶつかり合いながらも、少しずつ変化していく日常。
犬猿の仲なルームメイトが織りなす、ちょっと騒がしくて心地いい物語。


代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。


婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる