55 / 100
寝かしつけてくれ
しおりを挟む「あ⁈いや、今のはー」
「俺はこっちにいるから、アンタはゆっくり寝ればいい」
布一枚隔てて、レイの無感情な声が聞こえる。
「レイ!」
「気分じゃない時だってあるだろ」
「違う違う、レイ、まて!」
この誤解は早く解かないとヤバい。
カーテンを開けようとしたが、中からレイも握っている様で開けられない。
「レイ、なぁ勘違いすんな。せっかく自然に眠れる様になったのに、今まで通りでいいのか?」
俺は、俺はレイにとって必要ないなら、今までしてきたアレヤコレヤを耐える覚悟でいたのに。
お前はそれで良いのかよ?
「アンタ、なに言ってるんだ。俺は自力で熟睡した事なんかない。したくないなら、嫌だって言えばいいだろ!」
なんだコレ。
なんだこの噛み合わなさは!
まさか。
「なあレイ、覚えてないのか?
お前、学園で眠ってた。キヨが用意してくれた部屋で、俺をマクラにして。
お前は眠ったんだよ。だから」
「そんなの、ありえないだろ」
ピシャリと言い切った後に、まるで覇気の無い声で続けた。
「まぁ、アンタにメリットはないよな」
一瞬の内に、怒りにも似た感情が全身を駆け巡る。
まだ!
この男は、まだそんな風に捉えているのか!
この数ヶ月、肌を合わせてきた事をメリットがあるだの無いだのと。
どうして自分に好意があると思わないんだ!
力任せに引いたカーテンの、フックが弾けて二、三個飛んだ。カツンカツンと壁や床に当たる乾いた音が室内に響く。
横向きに座るレイの右手が、カーテンを握ったままの形で宙にある。
驚いた様に俺を見上げる瞳が、波立つ水面のように、ゆらゆら揺らぐ。
揺らぎながら、じっと俺を見ている。
この男は覚えていない。
セックス無しで眠れたことを。
覚えていないんだ。
ーなら、それなら。
「わかった、俺の勘違いだった」
揺蕩う手を掴み取った。
「来い」
勢いよくレイを抱き上げる。
羽織っていたバスタオルが、ぱさりと床に落ちた。
二人分の体重を受けて、俺のベットがギィと軋む。
自分の脚の間にレイを座らせて、上着を脱ぐ。
それから腰を浮かせて、片手で下着とズボンをずり下げ、脚を引き抜いた。
レイを引き寄せ素肌が触れると、ずっと裸でいたレイの身体がひんやりしているのに気がついた。
俺は、自分の体温を移すようにレイを抱き込む。
レイは大人しくされるがままになっている。しばらくそうしている内に、レイの身体は熱を取り戻して来た。
俺は、胡座をかいて自分の上にレイを跨らせ、膝立ちにさせる。
目の前にある小さなピンク色の突起に口付けるとレイが、あ、と息を呑む気配がした。
金色の茂みに隠れたレイのペニスが、軽く扱いただけで、ぴくんぴくんと反応して頭を持ち上げる。
右手でレイのペニスを擦り、左手は筋肉の張りのある尻をもみほぐし、口では左右にある乳首を舐めたり、吸ったりしているうちに、レイの息は上がりガクガクと腰が揺れ始めた。
俺の肩を掴む手がふるふると震えて、ペニスを握る右手にとろり、と粘液が伝い落ちる。
俺はソレを指先に満遍なく伸ばして、レイの後孔に指を這わせた。
縮こまった入り口を少しずつ広げながら、まず一本、中指を滑り込ませる。
レイはふうふうと口で呼吸しながら、俺に抱きついて体重を預けてくる。身体の力を抜こうとしているようだ。
「ぅあ……ん」
指を増やす毎に、口から漏れる吐息は甘さを増して、聴覚からゾワゾワと俺を刺激する。
三本入った指が、なんとか中で動かせる迄にほぐしてから、そおっと引き抜く。
「レイ、ゆっくり」
「ん、うん」
自分のペニスを掴んで、降りてくるレイの蕾の位置に合わせた。
柔らかくなった入り口は、ぬめる先端を受け入れると、そのままくぷん、と根元まで飲み込んでしまった。
「おい、ムリするー」
言い終わらない内に、レイの唇が吸い付いてくる。
うねる舌が俺の口の中を舐め回す。
その舌を捕まえて絡め合うと、強烈な快感が広がっていく。
あぁ、ヤバいなこれ。
この男の、上の口も下の口も俺で塞いで、粘膜の感触を思う存分堪能する。
再びレイのペニスに触れると、先程より太さも熱さも増したソレが、気持ちいいのは自分だけではないと教えてくれる。
レイの中に居る俺自信も、ドクドク脈打っていて、今か今かと射精の瞬間を待っているようだ。
俺は手の動きを早めてレイの射精を促す。レイのナカも、ギュウギュウと俺を締め付けてくる。
「ンッ!…ア!」
ビクビク身体を震わせて、口を離したレイが身体をのけ反らせる。
「ッ、あぁ……」
ビュルル、と精液を吐き出したレイの身体が脱力する。
抱き止めて寝かせようとすると、レイが嫌だと首を振る。
汗ばんで熱い身体をそのまま抱きしめていたら、呼吸の落ち着いたレイが、ぽそぽそと話し出した。
「アンタ、俺とヤッて、出した事ないな……」
「ん?」
「俺のカラダだと、ホントは気持ち良くないんだろ?」
「なに言ってんだ」
俺はレイを寝かしつけることを優先してるだけなんだが、この男にはそんな不安材料になるのか。
「気持ち良くなかったら、こんなに勃たねぇよ」
レイの中で硬さを保ったままの俺自身を、グリッと内壁に擦り付ける。
「ひぁっ」
レイは甲高い声で叫んで、潤む瞳で俺を見た。
「アンタ、いじわるだ」
「そうか?」
レイの背中を支えながらベットに寝かせて、繋がったままのレイを見下ろす。
「眠れそうか?」
「……まだ。ちゃんと寝かしつけてくれ、ハロルド」
「了解」
ねだるレイの期待に応えよう。
……何時だ?
部屋の電話が鳴る音で目が覚めた。
横たわるレイの体を跨いで、ベットを降りる。
「はい」
レイを起こさない様に、最低限の声量で応える。
受話器の向こうで、ふーっと長く煙を吐く気配がした。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説


目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?
ルームシェアは犬猿の仲で
凪玖海くみ
BL
几帳面なエリート会社員・望月涼介は同僚の結婚を機に家を失う。
新たな同居人として紹介されたのは、自由奔放なフリーター・桜庭陽太。
しかし、性格が正反対な二人の共同生活は予想通りトラブル続き⁉
掃除、食事、ルール決め——ぶつかり合いながらも、少しずつ変化していく日常。
犬猿の仲なルームメイトが織りなす、ちょっと騒がしくて心地いい物語。


代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。


婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる