誰かに愛されるなんて、あり得ないと思ってた

まる丸〜

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あー、はいはい嫉妬だよ!嫉妬!

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「なあ、レイ!れーいーくーん!」

「うるさい、しつこい、言わない!」

 帰りの機内で隣りに座るレイに、俺は文字通りしつこく食い下がっていた。

「なぁ、キヨになんて言われたんだ?なんで言えねーの?なんか卑猥な事言われたのか?」

「ひわい?ひわいって何だ?」

「エロい事」

「バカ!!キヨがそんな事っ!言うわけないだろ!」

 声量が上がったレイの口を、手で塞ぐ。

「れーくん、シー」  

 早朝の便だけあって、乗客の姿はまばら。だが居ないわけじゃない。

「もがもが。ぷはっ!」

 俺の手を剥ぎ取ったレイにジロッと睨まれた。

「アンタが変なこと言うからだろっ。
 とにかく、キヨは俺だけに話したんだから、アンタにバラす訳にはいかない。わかったか?」

「なんだよ!お前があんなに赤面するからだろ?だから気になってんだろっ⁈」

 俺とヤる時でさえ、あんな顔しないだろーが! 

「ハロルド、静かにしろよ」

 くそぅ。

「じゃあ、チューしたからか?」

「はあ?」

「ここにされたろ」

 レイの右頬をつつくと、レイは呆れた様に首を振った。

「あれは挨拶だろ。別にひわい?な事じゃない」

「挨拶~?ただの挨拶のキスであんなに顔が真っ赤になんの?」

「だからそれはっ」

「ただの挨拶なら俺もして良いよな?」

「は?えっ、おい、ハロルドッ」

 俺は曲がりなりにも、レイから『特別な友達』の認定を受けているからな。
 キヨの口付けに上書きしたって許される筈だ。

 ばだばた抵抗するレイの両肩をガッチリつかまえて、その右頬にキスした。











「あ、おかえり~」

「なんだあ?真冬のコートが必要な場所に行ってたのか?」

「夕飯食べるなら、食堂あと三十分で閉まるぞ、急げよー」

 同僚達に声をかけられながら、俺達は荷物もそのままに食堂に向かう。

「あ、おっさん」

 レイの言葉に、俺はピタリと立ち止まった。俺に釣られて、となりのレイも足を止める。

 医務のじーさんと士官が、並んで食堂から出て来た。

 士官は、いつも着ている特注の隊服じゃなく黒のスラックスに白いワイシャツ、黒いベストだ。珍しい。

 二人とも俺たちの視線に気づいたのか、揃ってコチラをみた。

 目が合った士官の口元が、なにか言いたそうに動いたが、横にいるじーさんに「シロウ」と促され、思い直した様に踵を返して、廊下の奥に消えて行った。


 レイに席を取らせ、俺は食器の返却口にいたサーシャを捕まえる。

「あー、フジタ士官?朝の訓練の時にはもう来てた~」

 朝から第一部隊の基地に来ていたとなると、本部への出勤途中で何某かの知らせが入ったのか。
 だからスーツのまま、こっちにきたと見て間違いないだろう。

 加えて、医官のトップとして自由に部隊間を移動できるじーさんが合流してる。

 あの二人が一緒に行動してる時は経験上、確実に部隊に関する『何か』が起きてる時だ。

「ね~、今度はなんだろうね~」

 サーシャも同じ認識の様だ。 

 過去には感染症が蔓延したり、テロに巻き込まれた隊員が大勢担ぎ込まれたりと、中々にハードな事案があったのだ。   




 そうだ、この件はレイには伏せておこう。

 せっかく自然に眠れるようになったのに、変な緊張感を持ったらまた不眠に戻っちまうかもしれないから。
 






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