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誰と誰が一緒に風呂に入るって?
しおりを挟む「おい、おっさん!」
腕組みしたレイがテーブル脇で仁王立ちしている。
「飲み物は紅茶で良いのかってラシュウルが聞いてるぞ!」
厨房の中からラシュウルと、褐色の肌の少年がこちらを伺っている。
驚く事に学園内の全員の食事は、あの少年が一人で作っているのだと言う。
今日の様に、別の子供が手伝う事はまれらしい。
あの少年も何かしらの事情があって、ここに滞在している。
ミクニいわく、彼等を守るために、出身地や年齢も基本的には明かせないのだと言う。
ゆえに、美味い飯を作ってくれた少年の名前さえ知らない。
更にミクニからは、学園内で見聞きした事は、一切他言しない様にと釘を刺された。もちろん、ラシュウルやキヨの事も含めてだ。
「あっ!うん、紅茶で」
ミクニが慌てて返事をする。
「アンタはコーヒー。ブラックだよな?」
確認するレイに、頷いて見せた。
俺の好みを覚えてくれていて嬉しくなる。
レイは厨房に伝言すると、戻って来て俺の隣に座った。
「おっさん、紅茶にも砂糖入れるんだってな?糖分取りすぎじゃないのか?」
俺の左側にいるレイが、右側にいるミクニに話しかける。
「あのさ、レイ君。おっさんって呼ばれるとちょっと傷付くんだけど。あと、何回も言うけど、ハロルドの方が僕より年上だからね⁈ハロルドの方が、オ・ジ・サ・ン!」
おいおい、俺を挟んでケンカすんな。
「はあ⁈下っ腹がぷよぷよしてる奴はおっさんだろ?自己管理が出来てない証拠だ。ハロルドは、ベルトに肉がのったりしない」
喉の調子が良いのか、レイの口撃は絶好調だ。
「そんなに出てないもん」
そう言いながらも、ミクニは膝掛けをずずっと引き上げて、腹を隠した。
通りかかったキヨが、片手で口元を押さえながら、平静を装ってテーブル拭きをレイに手渡す。
「キヨ、お前も太ってると思うだろう?正直に言ってやった方が本人の為だぞ?」
「レイさま、ふふっ、わたくしの立場では、ふっ、口を塞がざるを得ません」
「ひ、酷い……カルロスだって平均体重だって言ってくれたもん。ダイエットは必要無いって言ってたもん」
なんだミクニ、マジで傷付いてんのか?
「そういや、アイツ…カルロスは?食堂に来てねぇよな?メシどうすんの?」
「あぁ、カルロスは別の物を別の時間に食べるんだ。万が一、一斉に感染症にかかったら、治療できる人間がいなくなっちゃうからね」
ふぅん、そんなもんか。
しばらくすると、ラシュウルがトレーにカップを二つ乗せて、そろりそろりと歩いてきた。
「ラシュウル君、ありがとう。初めての料理は楽しめた?」
ミクニがトレーを受け取りながら尋ねる。
「はい、難しかったけど、楽しかったです」
「ジャガイモの皮が上手に剥けてた。ラシュウルは器用だ」
レイに褒められて、ラシュウルは照れたように顔を赤らめてキヨの後ろに隠れる。
「レイさま、お片付け終わりましたか~?」
「終わりましたか~?」
暖炉の前でゴロゴロしていたソックリな男児二人(多分双子)が、走って来てレイに飛びつく。
「終わったよ」
二人を抱き止めながら、レイは優しく答えた。
「やったあ~!お風呂入りましょ~!」
「一緒にいきましょう~!」
はっ?
なんだって⁈
「風呂⁈」
イスから立ち上がるレイに、思わず確認する。
「さっき約束したから行ってくる。なにビックリしてるんだ?」
レイは不思議そうに首を傾げてから、ちびっこ二人と歩き出す。
途中、厨房の少年に手を振り、向こうもレイに手を振り返していた。
「君達!はしゃいで転ばないようにねっ!」
ミクニが身を乗り出して、声を掛けると
「はーい!」
「はーい!」
「おっさん、細かいな」
ちびっこ達の素直な返事と、レイの不満気な呟きが聞こえた。
……風呂か。
あの男の綺麗な肌が、他人に見られてしまう。
相手は子供だし、俺みたいな感情で、レイの裸を見るわけはないんだが……。
いっそ、俺も一緒に行くか?
「あ!ハロルド~!なに想像してるの~?ヤラシイ顔してる~」
俺はニマニマ笑うミクニの頬を、思いっきりつまんだ。
「うるせーぷよぷよが!」
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