誰かに愛されるなんて、あり得ないと思ってた

まる丸〜

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独占欲

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 恨んでない?
 そんな事あり得るのか⁈

「タダで何かして貰うなんて、見下されてるみたいで嫌だろ?」

 レイの感覚だとそうなるんだろうか。
 それでも俺は、代償として払ったものが大きすぎると思う。


「いや、でもお前、あんなに怒って……」



 レイは、ムクリと起き上がって、ずいっと、俺に顔を近づけた。


「あのおっさんは、アンタを説得しろって言ったんだ」

「なに?」

「『ハロルドを説得して、自分から本部に来るように仕向けろ』って。

 だから俺、断った。

『ハロルドは、俺と一緒にいるって約束したから、おっさんのモノにはならないぞって』

 そしたら……

『なら私の権力を行使して連れて行くか。使えんネズミだ』って……」


 あのクソ上司め….。

「そんなの許さない!アンタは俺と一緒にいるって言ったのに!」

 形のよい眉が吊り上がる。

「俺から、アンタを盗ろうとした!そんなの駄目に決まってる!」


 レイ、お前……。
 俺に対して、そんな独占欲みたいな感情が、あるのか?


「止めろって言っても、おっさんは言う事聞かないからな。だから賭けにした。俺は負ける気はなかった」

 白い肌が、興奮のせいか上気している。


 レイは俺の顔を覗き込んだ。  

「アレは、約束だよな?ハロルド。
 前に、本部行きの噂が流れた時に、アンタは俺と約束したよな?」

 この男の認識する[約束]という言葉は、相当な重さがあるのだろう。
 士官との約束が守られなければ、レイは此処に居なかったのだから。

「レイ。俺はお前と離れる気はない。士官のモノになる気もない」


 レイは安心したのか、ふーっと一息ついて、俺から離れた。
 そして、おもむろに服を脱ぎ出す。

「レイ?」
「あっついんだ」

 暑い?室内は空調が効いてるから、それ程暑さは感じないが。

 ポイポイと、Tシャツとタンクトップを投げ捨て、スウェットの紐に手を掛ける。
 ーーと。

「キツい!解けない!ハロルド!」
「はいはい」

 着せる時に、強く結び過ぎたか?

 どれ、とレイの腰に手を伸ばす。
 何気なく触れた肌が異常に熱い。
 脇腹の打痕が、さっき着替えた時より随分と腫れてる。 

「レイ!医務室にいくぞ、このままじゃマズイ」
「はあ?嫌だ!医者は嫌いだ!」

 あ!そうだコイツ、極端な医者嫌いだった。

「じゃあ湿布は?俺が医務室で貰ってくる。それならいいだろ?」


 レイは、うーっとうめいてベッドに寝転がると、シーツに顔をこすりつける。

「レイ?」

「いやだ」

「でもな、レイ」

 脇腹がこうなら、大腿も下腹部も同じように腫れて、熱を持っているだろう。

「医者は嫌だ。薬も嫌だ。どこも痛くない。暑いだけだ」

 言いながら、右手で俺の服の裾をつかんだ。行くな、という意思表示か。

 こんなにも腫れて、痛くない筈がない。ジワジワとレイの身体に汗が滲んでくる。

 きっと部屋に一人でいた間に、冷水でも浴びたんだろう。
 そこから時間が経って、殴られた(もしくは蹴られた)場所が、再び熱を持ち始めた。そんな所か。

 さて、どうする。

 せめて、この手を離してくれれば医務室に行って、痛み止めなり、冷やす物なり
 貰って来るんだが。

 少し考えて、レイのそばに横になる。


 熱を持つ下腹部に、左手を這わせる。
『どんだけ力いっぱい蹴ったんだ』
 士官に対する怒りが再燃するのを抑えながら、下着の中に手を滑り込ませた。

「ん……なに」
「レイ、そのまま目ぇ閉じてな。ちょっとだけ眠ろう、な?」

 俺は柔らかなレイのペニスを握り込んだ。

「レイ…俺は、お前から離れない」

 イヤイヤする子供をなだめるみたいに、耳元でささやくと、掌の中のペニスが硬さを持ち始める。

 ゆっくり上下させると、連動する様にレイの体がぴくぴくと反応した。


「俺はお前のだ。大丈夫。誰にも盗られない」


 うん、と朦朧とした状態でレイが頷く。


 くちゅくちゅくちゅ。
 擦るスピードを上げると、レイの口から声が漏れる。

「ん、あ…んぅ」
 レイは服から手を離すと、両腕を俺の背中に回した。

 きゅう、とその手に力が入ったのと同時に、トロンとした液体がペニスの先から溢れ出す。


 力が抜けたレイの腕が、ダラリとベッドに落ちた。

 汚れた下着を脱がせて、汗の粒が光る体をタオルで拭く。

 閉じた瞳のふち。
 汗か涙か、濡れそぼった金色のまつげを指で拭う。


 (医務室行ってくる。すぐ戻るからな)


 大判のタオルケットをレイに掛けて、ベッドから離れた。



 ドアを開けると、部屋の前にランドリーバックが届いてる。

 良かった、着替えが間に合った。

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