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賭けの内容
しおりを挟む「おっさんは、もし一発でも当てられたら、俺の言う事を聞くって言ったんだ」
食堂の端のテーブルで、モゴモゴと口を動かしながら、レイは説明する。
既に食事の時間はすぎていたが、厨房スタッフは『賄い味見させてあげる』と、ワンプレートに美味そうな豚肉の煮込みと、ハーブを練り込んだパンを盛り付けてくれた。感謝。
「あのクソ士官の、そんな口約束、信じたのかっ」
食堂には俺達の他に、コーヒー片手に新聞を読むヤツ。 何かの書類を囲んで討論してる奴等が数名。
広い食堂だ。
聞こえはしないだろうが、声を抑える。
レイの空腹も限界だったし、俺も早く事の真相を知りたかった。
「俺はちゃんと当てた。アンタはもう本部に連れて行かれる心配をしなくていいんだ」
「賭けって、そういう事か。お前が当てられたら、本部行きの件に関して士官は手を引く」
「そうだ」
なんて危ない賭けを。そもそもアイツが部下との約束を守る保証もない。
「あのなレイ。もし、当てらんなかったら」
「当たるまでやってた」
「俺は、お前が殴られてるのは見ていられない」
レイはキョトンとした顔で、俺を見る。
「なんでだ?」
「レイ。俺がこの跡付けて部屋に帰ったとき、お前どう思った?」
ちょんちょんと、自分の首筋を指す。
「嫌だった」
「そうだろ。俺もお前が怪我するのは嫌なんだ」
「俺は頑丈だから平気だ」
あぁコイツは……。
士官と、やり合った時もそうだ。
自分の身を守りつつ、敵を制圧する。
俺は武術の基本を、そう教わったし、部隊に居る奴らもそう。
だがレイの強さは、自分の身を削ることを厭わない強さなんだ。
それはとても危ういものに感じる。
「レイ。もう一個聞いいか?」
「ふぁんだ?」
好みの味なのか、頬っぺたをハムスターみたいにして食事をほおばっている。
「フジタ士官とは、いつからの知り合いだ?」
むぐむぐと動いていた口の動きが止まった。ごくん、と喉を鳴らして飲み込む。
「部屋に帰ったら話す」
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