誰かに愛されるなんて、あり得ないと思ってた

まる丸〜

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楽しい休日になるハズだった

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 あぁ、マズイ。
 これ以上してると、本当に食いっぱぐれる。
 あと、俺の下半身も元気になってきて、マズイ。

 そう思いながらも、好きな男の口内から、舌を引き抜けないでいる。

 このまま担ぎ上げて、ベッドに直行してもレイはきっと拒まない。さっき、したいか?って聞かれてもいるし。

 でもなぁ。
 俺の最終目標は、この男と恋人同士になる事であって、に、なりたい訳じゃない。




「れーくん」
 断腸の思いで、頬に添えられた両手を剥がす。

「ん、なんだ?ご機嫌は直ったか?」
「おかげさまで。俺、着替えるかられーくん先に行っててくれ」
「じゃあ…席取っておく」

 そう言い残してレイは、シャワーカーテンの間から、出ていった。


 あっっぶね。
 このみっともない下半身に気づかれなくて良かった。


 レイがけろっとしてるのに、俺だけこんな風に興奮してるのは、そこに絶対的な感覚の違いがあるからだ。

 あの男は、俺に恋愛的な意味で好かれるなんて微塵も思っていない。

 それを、まぁ当然か。と思う自分と、
 ちょっとさみしい。と思う自分がいる。


 シャワーのコックをひねりお湯を出す。

 さっさと済ませて、食堂に行こう。

 ついさっきまで触れていたレイの舌の感触を思い出すと、いとも簡単に俺のペニスはフル勃起する。

 俺って単純。

「ッ、う」


 眠る為に俺とセックスするのがレイのルーティンなら、眠った後に、レイの裸体を拭いて、こんな風に一人で淫情いんじょうの処理をするのは俺のルーティンだ。 

 どのタイミングで離れれば、レイを起こさずに済むかは、最初の五日で把握した。

 深い眠りに入ってる時のレイは、筋肉の緊張が緩んで、ちょっと口が空いてる。

 アレは可愛い。

 出来心で、その隙間に舌を入れた事があるが、罪悪感が勝って一回で止めた。
 寝てる相手にイタズラするのはよろしくない。


「ん、ふぅ」
 ビュルビュルと流れ出る精液を排水口に追いやって、もう一度体を洗い直す。

 部隊から支給される日用品は、香りの弱いものが大半だ。
 任務に着いた時に、人が居た痕跡を現場に残さないように、だ。

 今みたいに誤魔化したい匂いがある時だけは、ちょっと不便だな。


 ちなみに同じ理由で、タバコを吸う隊員も居ない。タバコの場合は、吸うのが習慣になっていると、仕事で長時間喫煙出来なくなった時に、イライラが増すって言うマイナス要因も付随する。

 俺は下界に降りた時に(山の上にある基地から市街地に行く事を俺達はこう言う)、シガーバーに立ち寄る程度だった。

 けど。

 レイとルームメイトになってからは、それも辞めた。

 歳の差があるもんで、健康に気をつけないと、と思ったのだ。 俺ってホント単純。


 そうだ。
 食事を済ませたら、レイに外出を提案してみよう。

 レイは基本的に、休みの日でもトレーニングしていたいタイプだ。
 身体が鈍りそうで嫌なんだと言う。

 物欲もあんまり無い。服なんか、着ていればいい位の感覚だ。

 市民の税金から出てる給料で、余分な物を買いたくないとも言ってた。

 俺は休みの日くらい、意識的に[ただの人]になる時間が必要だと思う。

 そもそも[特殊部隊隊員としてこうあらねばならない]って言う思考が、余計に神経を尖らせて不眠に拍車を掛けてる気がする。

 まあ、素人のただの勘だが。

 メトロのサンクロス駅前に、新しいカフェがオープンしたってアリスが言ってたな。
 ふと、食べ歩きが趣味の同僚の話を思い出した。

 誘ってみるか。


 俺が頭の中で、休日の平和な午後のプランを立てている頃。



 レイは中庭で、とんでもない騒ぎを起こしていた。




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