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キスをする理由は……
しおりを挟む一日の訓練が終わり、夕食前に汗を流したかった俺は、手早くシャワーを済ませてベッドに倒れ込んだ。
もちろんハロルドのベッドだ。
七月も近くなって、日差しに体力を削られる日も増えた。
母国は、亜熱帯気候に属する国だったから、この位の暑さ平気な筈なんだけど。
「疲れたろ」
しばらく横になってると、ハロルドが髪を拭きながらシャワールームから出てくる。
自分だって早くサッパリしたいだろうに、いつだって俺に、先に使えと言うんだ。
「ハロルド、アレ俺も覚える。教えてくれ」
「あれ?」
ハロルドは俺の横にゴロンと寝転がった。
「昼間、食堂でやっただろう? 唇を読むヤツ! アンタが出来るなら、俺も出来るようになりたい」
「じゃあ、クチ、あーってして」
「あー?」
ガシッと両手で頬を掴まれる。
肉厚なハロルドの舌が入ってきて、ジュルリと、オレの舌を捕らえた。
一度捕まってしまえば、もう抗う気も起こらない。
ハロルドは、どうすれば俺が気持ちいいのか、分かりきっているんだ。
ひとしきり俺の舌をもてあそんだ後、ゆっくりと自分のを引き抜いた。
息が上がっている俺の唇を、ペロリとなめる。
「今、なんて言ったか分かる?」
「……ん、なに?」
「口の動き、わかった?」
「アンタ、今のはただキスしただけだろ!」
「あれ?バレた!」
ケラケラと明るく笑うハロルドを、怒る気にもならずに、黙って見ていた。
最近は、寝る時以外でも、こんな風に俺に触れることがある。
目的が、俺を寝かしつける事じゃないなら、ハロルドの……。
ハロルドの意図は、なんだろう。
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