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もしも誰かを好きになるのなら
しおりを挟むハロルドが、ゆるやかな動きで、ずっと俺のナカを擦っている。
確かにいっぱいするって言ったけど。
そう言ったのは、俺だけど。
もう、何度目かわからない射精の後に、抜いたかと思ったら、『同じ体勢は辛いだろ』と、ハロルドは後ろに回ったり、対面で抱いたりと、全然終わりにする気配がない。
今は、ベッドに仰向けに寝た俺の上にいる。
上にいて、突っ込んで、動いてる。
脚を開きっぱなしで、関節が馬鹿になりそうな気もするけど、まあ、大丈夫だろ。
「レイ?眠くなってきたか?」
言われて、自分の目が閉じかけているのに気づいた。
「んぅ……」
俺の上にある大きな身体は、少し汗ばんでいて、筋肉の凹凸にダウンライトの光が当たって光ってる。
なんて言うか、男の色気っていうやつだろうか。
黒い瞳を隠す前髪を、下からすくい上げた。
「ん?」
「どんな顔して、俺に突っ込んでるのかと思って」
「どんな顔してる?」
「ちょっと苦しそう、か?」
ふふ、と笑ってそうかもなと言う。
「ずっと寸止めしてるから」
「なにを?」
「出すのを」
あぁ、射精するのを我慢してるってことか。
「出せばいいだろ?」
「あのな、れーくん、腹壊すぞ」
繋がりながら、こんな風に話をするのも初めてだ。いつも、俺は緊張の糸が切れた途端に眠ってしまうから。
「はらこわす?なんで?」
「だから、ゴムつけてねぇし」
「ごむ?」
「……今度買って来て見せてやる」
「うん?」
なんだかもう、よくまわらない頭で考えて返事をする。
そういえば、聞かなきゃと思ってたことが……あったな。
「なぁアンタ、俺とキスして気持ちいいか?」
「気持ちいいに決まっている。どした?急に」
「アンタ以外とした事がないから、わからなくて」
ピタリと、ハロルドが動きをとめた。
「アンタがするみたいに、舌、動かしてるんだけど。俺のやり方は合ってるのかどうか、わかんなくて」
「俺以外とした事ねぇの?キスを?」
食い入るように見つめられる。
「なんだよ、変か?」
「いや」
「もう少しロマンチックなファーストキスにすればよかった」
俺達の『最初』は、ルームメイトになったその日に、まるで突然に訪れた。
ハロルドは、次の日に目を覚ました俺に、殴ってくれって言った。
でも殴らなかった。
そもそも眠る方法を知れた俺は、別に怒っていなかったからだ。
「ファースト…最初は特別か?」
「まあ、そうだろ」
ふうん?
「ハロルド。ファーストセックスはアンタじゃないんだけど、それはどうなんだ?」
「れーくん、それは言わなくて良い情報だ」
はあ??
「別に、入隊する前のお前に、そういう相手がいたって気にしねぇけど。
ん?セックスはしたけど、その相手とキスはしなかったって事か?ちなみに誰?」
「え?」
「だから、初めてお前がヤッた相手って誰?」
ふっ、ふふふっ。
「ふはっ!気になるんじゃないか!
あはは、ふっ、可笑しいのアンタ」
あっはっはと笑ってたら、ぐぐっと大きくなったハロルドのチンコに、内側から押されてイッた。
気持ち良くなって、射精する事をイクって言うんだって、ハロルドから教わった。
「んっ、くっ……」
ビクビクと全身が痙攣する。
「いま、ちんこデカくなる要素あったか?」
はあっ、と息を吐きながらハロルドを見上げる。
「ッ、だって、おまえがそんな風に笑うの…初めて見た」
黒い瞳をまん丸にしてる。
俺も、自分の顔の筋肉が、こんなに緩むのを初めて知った。
もうだいぶ睡魔に負けて、身体中から力が抜けてるんだ。
アンタと、出会ってから色んな初めてを経験するな。
「レイ、目が閉じそう」
あぁ、そうだ。さっきからまぶたが重い。
ハロルドは抜く事なく、俺のナカで動くのを再開する。
「あっ……なぁアンタ、俺にして欲しい事ないのか?」
「ん?」
「だって、俺は毎日寝かせてもらってるのに……んっ」
んぅぅ~、ジワジワ気持ちいいのが続いてる。
「アンタの事は、初めてのルームメイトで……初めて出来た特別な、友達だと思ってるから」
暮らしてた施設では、そう思える相手は居なかった。
「アンタにも、メリットがある方が、いい」
閉じそうになる目を頑張って開ける。
返事、返事を聞かないと。
「だから、あっ、なんか、してほしいことを……ッ」
まぶたの隙間から見えたハロルドの顔は、なぜかちょっと悲しそうだった。
「もし、おまえが」
黒髪が額に触れる。
「誰かを好きになる事があるなら」
ー俺が?だれかを?……なるなら?
「俺を選んでくれ」
ーハロルド……を。
口の中に入ってきた舌は柔らかくて熱くって。
あぁ。気持ちいい……。
もう出ないと思ってた精液が、トロリと先端から流れたのを感じながら、俺は目を閉じた。
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