上 下
152 / 298
第五章 五国統一

第28話 たまにはこんなのもいいよね?

しおりを挟む
「アジ・ダハーカに弾き飛ばされましたロロちゃんですが、場外寸前で何とか踏みとどまりましたー!!」


「さあ、オヤツ抜きがイヤなら、早くあいつ倒して……」

 ロロを急かせるネム。

「分かったのです! 全く、魔獣使いが荒いのです!」

 ブツブツと文句を言いながら、再びアジ・ダハーカに向かって走るロロ。

「ああっと! 再びロロちゃんがアジ・ダハーカに向かって行くー!! 先程吹っ飛ばされたばかりですが、何か策はあるのかー!?」

「ただ近付いて倒すだけなのです!」

 近寄らせまいと攻撃するアジ・ダハーカだったが、それをことごとくかわして接近するロロ。

「凄え! Aランク魔獣の攻撃を難なくかわしてる!」
「頑張れ、ロロちゃん!!」
「行けえー!!」

「ハイなのです!」

 観客の後押しを受けながら、遂にアジ・ダハーカの尻尾まで辿り着いたロロが、両腕でガッシリと尻尾を掴む。
 そして、ジャイアントスイングのように、アジ・ダハーカを振り回し始めるロロ。

「でやああ!! なのですー!!」

「何とー!! ロロちゃんがアジ・ダハーカを掴んで振り回し始めましたー!! お、恐るべき怪力だー!!」

「このまま真上に投げて、落ちて来た所をカウンターでぶっ飛ばすのです!」

 ロロが頭の中でこの先の展開をイメージしていると、勢いをつけ過ぎた為に手が滑り、アジ・ダハーカが上では無く真横に飛んで行ってしまう。

「あ……すっぽ抜けたのです……」

「ギャアアアア!!」

 本部席に向かって飛んで行くアジ・ダハーカ。
 悲鳴をあげる本部長。
 しかし、本部席に当たる寸前に観客保護の為に張られた魔法障壁に当たり、消滅するアジ・ダハーカ。

「ハ、ハ……ハハ……」

 恐怖の為に椅子から転げ落ちた本部長が、腰を抜かしていた。

「アジ・ダハーカをぶん投げたあああ!! あの小さな体で何という怪力! 何というスピード! Aランクの魔獣すらものともしない、最強メイド様だあああ!!」

「ん~、まあ結果オーライなのです」

 人差し指でポリポリと頬をかくロロ。

「これで舞台に放たれた全ての魔獣が討伐された訳ですが、これはもう集計の必要は無いでしょう! Eグループの決勝進出者は、無敵の美少女召喚獣ロロちゃんを引き連れた、ネムちゃんだあああ!!」

「凄えぞロロちゃ~ん!!」
「あんなの誰も勝てっこないよ~!」
「このまま優勝だ~!!」
「可愛くて強いなんて最強だー!!」

「ロロばっかり……」
「予選では魔装出来ないから仕方無いのです!」

 大歓声を受けながら引き上げて行くネムとロロ。

「ロロ1人であんなに強いのに、まだ更に2段階も強くなるなんて知ったら、みんな驚くだろうね」

 自分の事のように喜ぶユーキ。

「でも、この大会では獣魔装までは披露できないのよね~、くだらない制約のせいで」

 ジロッとアイバーンを見るパティ。

「そ、そうイジメないでくれ、パティ君。私だって頑張って食い下がったのだよ」
「そうですよパティさん! アイバーン様が抗議してくださらなかったら、召喚士の参加自体認められなかったんですから!」

「まあいいわ! こちらとしては、あの厄介な獣魔装を相手にしなくて済む分、助かるしね」
「パティさん……まだ予選すら闘ってないのに、もうネムちゃんと対戦する事を考えてるんですか?」
「だってあたしとネムが勝ち残って対戦する事は決まってるもの」

「あの……一応、Fグループにはレノさんも居るんですから……」
「ああ、大丈夫ですよぉ、メルちゃん。レノは確実に1回戦でネムちゃんに負けますからぁ」

「酷い……あ、でも昨日は予選突破すら怪しいみたいな事言ってたのに、やっぱり予選は通過すると思ってるんですね? セラさん」
「さすがに予選ぐらいは通過するでしょぉ。まあ、試合形式にもよるでしょうけどぉ、レノのあの防御力だけは中々の物ですからぁ」

「あのカオスの猛攻を受けて生き延びたのだ……おいそれと破れる防御壁では無いさ」
「うん、そだね……これはもう、トーナメント1回戦はネムVSレノで確定かな?」


 その頃、闘技場で試合開始の合図を待つレノが、フィーの姿を発見する。

「む!? あの少女は!?」

 フィーに近付き声をかけるレノ。

「フィー君!」
「ん……あなたは……レノ王子?」
「うむ……先日は大変世話になった! 我が妹のセラを助けてくれた事。君には感謝しても仕切れない!」
「礼なんていい……あたしはただ偶然、あなた達を見つけただけだから」
「だとしてもだ! 君が居なかったら、セラは間違いなく死んでいた……いや、実際死んでいたんだが……」
「いえ……そもそもやったのはあたしの……」

 何かを言いかけて、暗い顔でうつむくフィー。

「君と同じグループになったのは不本意だが、こちらとしても負けられない理由がある! 試合では遠慮無く行かせてもらうよ!?」
「当然……遠慮なんか、いらない」

 そんなやり取りを見ていたパティも、フィーの存在に気付く。

「あれは……フィー!? あの娘も大会に出てたの?」


 そして、Fグループの予選試合が開始される。

「さあみなさん、お待たせしました!! ただ今より、Fグループの予選試合を行ないたいと思います!!」

(さあ来い! 例えどんな過酷な試合形式だろうと、俺は必ず勝ち残って優勝する! そして2年前に果たせなかったマナとの結婚を、今度こそ実現させてみせる。待っていろ、マナ!)

 レノが決意を新たにしていると、レフェリーが引いた紙が、巨大モニターに映し出される。
 
「決まりました! な、何と! Fグループの試合形式は! 筆記試験だあああ!!」
 
「へ!? 試験……?」

 呆気に取られるレノ。
 客席のユーキ達も驚きを隠せないでいた。

「え!? 筆記試験ってあの筆記試験?」
「まあ、他に考えられないわよね? それともまた、妨害有りなのかしら?」

 実況者も戸惑いながら、淡々とルール説明をする。

「ええ~、い、一応ルール説明をさせていただきますが……単純に学校で行なわれるような筆記試験を受けていただいて、最高得点の選手が決勝進出となります。最高得点が複数人居た場合は、1人に決まるまで更に難易度の高い問題に挑戦していただきます。なお、試験ですので、カンニング及び他の選手への攻撃は一切禁止とさせていただきます」

「何だとおおお!!」

 絶叫するレノ。
 結果。

「今、採点が終了しました!! 結果は……唯一の百点満点で文句無し! ゼッケン21番、フィー選手だー!! これにより、Fグループからの決勝進出者はフィー選手に決まりましたあああ!!」


 何とか盛り上げようと、必死にテンションを上げる実況者とは裏腹に、客席はお笑い芸人の渾身の一発ギャグがダダ滑りした時の様に静まり返っていた。

「アイバーン様……今回の試合形式は、完全に失敗だと思います……」
「うむ……後でこれを考えた者を処罰しておこう……」

「いくらレノでもぉ、予選ぐらいは突破出来ると思ってましたがぁ、頭の悪いレノには最悪の試合形式でしたねぇ」


 闘技場で真っ白な灰になっているレノ。



 ーー レノ・フレイル ーー

 後に『鋼鉄の守護神』と呼ばれるようになる。
 メンバー1の防御力と耐久力を誇るが、ドMの為、あえて攻撃を受けているのではという疑惑がある。
いつもセラに小馬鹿にされているが、妹の事を何よりも大切に想っている。






「このタイミングで紹介!?」




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記

ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。 これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。 1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ! いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります! 【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界に行ったら国が衰退していたので、不動産屋をしていた経歴を生かしてエルフの王女と国を再建する

おっぱな
ファンタジー
【第一章】 不動産屋で働いていた花島つとむ(27)は外回りの最中に”魔法”と”能力”という二つの異能が存在する世界に飛ばされてしまう。 持ち前の適応能力の高さと図々しさで、ゴーレムの幼女のペットになってみたり、双子の魔法使いの家に居候してみたりと案外、異世界生活を楽しんでいる。 この世界で最強の力を持つ魔女と森の支配者であるゴーレムを掌握した手腕を買われ、エルフの王女に「私の国の再建を手伝いなさい」と半ば強制的に仕事をさせられるのだが... ...。 「異世界初の水洗トイレを開発」・「異世界初のマンションを建設」・「謎の敵との闘い」 *前半は主人公があまりにも図々しいのでイライラするかもしれません。 【第二章】 宿敵である”ハンヌ”を撃退した花島達は破壊された国の復興を本格的に始める。 そんな中、疲弊した様子で隣国の者がホワイトシーフ王国に訪れ_____。 「他国との交流」・「王位継承戦」・「ゴーレム幼女の過去」が明かされます。 *一話平均2000~3000文字なので隙間時間に読んでいただければ幸いです。 *主人公は最強ではありませんが、最弱という訳でもありません。

誓いの嘘と永遠の光

藤原遊
ファンタジー
「仲間と紡ぐ冒険の果てに――君もこの旅を見届けて!」 魔王討伐の使命を胸に集まった、ちょっとクセのある5人の冒険者たち。 明るく優しい勇者カイルを中心に、熱血騎士、影を操る盗賊、癒しのヒーラー、そして謎多き魔法使いが織りなす物語。 試練と絆、そして隠された秘密が絡み合う旅路の中で、仲間たちはそれぞれの過去や葛藤と向き合っていく。 一緒に戦い、一緒に笑い、一緒に未来を探す彼らが最後に見つけるものとは? 友情だけじゃない、すれ違う想いと秘めた感情。 仲間を守るための戦いの果てに待つのは、希望か、それとも……? 正統派ファンタジー×恋愛の心揺さぶる物語。 「続きが気になる」って思ったあなた、その先をぜひ読んでみて!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...