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第五章 五国統一

第6話 子供に大金を持たせてはいけません

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 演技だと分かり、安堵するBL隊と周りの人々。

「2人共、気は済んだかね?」
「はぁい、もう大丈夫ですぅ! 定番のコントみたいな物ですからぁ!」
「コント言うなっ!!」

「まもなく前夜祭が始まるのだが、初めに今大会に参加を表明した5カ国の代表者による挨拶を予定している。そこでヴェルン代表は、国王夫妻がおられない為、本来ならレノ王子が出るのが普通なのだろうが今回に限り、この五国統一の立案者であるセラ君にお願いしたいのだが、どうだろうか? 2人共」

「ああ、俺は別に構わない! 元々そういう堅苦しいのは苦手だからな」
「私も目立つのは苦手なんですけどねぇ……まあ今回は仕方ないですねぇ」

「よろしく頼む! シェーレ代表は当然ネム君! お願いできるかね?」
「う、うん……緊張するけど、頑張る……」

「リーゼル代表は、マルス国王よりユーキ君に任せると言付かっている……頼めるかね?」
「ええ!? 僕!? うう~、何喋ればいいんだよ~?」
「ふふっ! 頑張って! お姫様!」
「もうっ!」

 ユーキを茶化すパティ。

「グレール代表は、シャル陛下よりパティ君にやらせるように言われているのだが……」
「なんですってー!? 何であたしがグレール代表なのよ!? 王族でも何でもないのに!!」

「いや、必ずしも王族である必要は無いのだ……現に私もロイ国王より、トゥマール代表として挨拶するように言われているのだから」
「嫌よ!! 何であたしがあんなバカ猫の為に挨拶しなきゃいけないのよ!!」
「そこを何とか頼むよ、パティ君! 他に頼める者が居ないのだ!」

「ぐぬうぅぅ……もうっ! 今回だけよ!?」
「助かる! ありがとう、パティ君!」
「あんのバカ猫おお! 今度会ったら猫鍋にしてやるんだから~!」
「頑張って! 次期王女様!」
「や、やめてよね!?」

 先程のお返しに、パティをからかうユーキ。

「ハクシュッ!!」
「大丈夫ですか? キティちゃん。風邪ですか? バカなのに?」
「フィー!? あんた今あたしの事、バカなのにって言った!?」
「いいえ、バカンスに行きたいのにって言ったんです」
「何の脈絡も無しに!?」

 先日、街で少年とケンカをしていた少女が、フィーと共に前夜祭に参加していた。


「アイバーン様、そろそろお時間です!」
「ふむ……ではまず私が出て、大会のルール説明等をした後、君達を呼び込むのでよろしく頼む!」
「アイ君! 脱いじゃダメだよ!?」
「む!? それはフリという奴……」
「フリじゃないからっ!!」

 念の為に釘を刺しておくユーキ。

 ユーキの不安を他所に壇上に上がったアイバーンが、マイクを手に喋り始める。

「えー皆様! 本日は五国統一、大武闘大会の前夜祭に多数ご参加いただき、誠にありがとうございます! 申し遅れました、私はトゥマール王国騎士団団長の、アイバーン・サン・クルセイドです」

「お!? 真面目に挨拶してる!?」
「アイバーン様は元々真面目な方ですよ」
「ええ~!? 嘘だ~! 真面目な人が人前でいきなり海パン一枚にはならないよ~!」

 メルクの擁護を、ユーキが否定する。

「アハハ、確かにそこだけ見たら信じられないでしょうが、そもそもあれだって照れ隠しですからね」
「照れ隠し?」
「ええ、アイバーン様はとてもお強い上にあの整ったお顔ですから、常に周りから注目されていたんです」
「そりゃまあ、分かる……」

「ですがアイバーン様は凄くシャイな方でして、注目され過ぎたり女性の前に行ったりすると、恥ずかしさのあまりつい脱いでしまうんです。ユーキさんと2人きりの時も、よく脱いでいたんじゃないですか?」
「い、言われてみれば確かに……でも、恥ずかしさのあまり恥ずかしい格好するって……」

「ですから今もほら! 脱ぎたいのを必死に堪えてるでしょ!?」
「え!?」

 壇上を見るとメルクの指摘通り、涼しい顔をしながらも、左拳を思いっきり握り込んでいるアイバーンが居た。

「わあ、ホントだ……めっちゃ我慢してる……」


「既に配布されている案内状でご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、改めて今大会の概要とルール説明をさせていただきます! 今大会は、トゥマール! リーゼル! ヴェルン! グレール! そしてシェーレの5カ国によって、覇権が争われます!」

「シェーレだって?」
「シェーレって確か、何年か前にパラスに滅ぼされた国じゃ?」

「まずは本戦トーナメントに出場する8名を決める為の予選が、3日後より行われます。抽選により8つのエリアに分けられた予選を1日2戦ずつ、計4日間に分けて行います。」
「一気にはやらないんだ?」
「一応、興行も兼ねてますからね」
「小分けにして、細かく稼ごうって訳ね」
「ハハ、まあそういう事です」

「予選終了後1日空けた後、本戦トーナメント1回戦を行い、翌日に準決勝! 更に翌日に決勝戦を行い、優勝者を決定いたします! そしてその優勝者が推薦する者、もしくはその優勝者本人が五国統一王となる訳です!」
「1週間もかけるんだ?」
「五国の統一王を決める大会ですから、それぐらいはかけないと……」

「本戦トーナメントは純粋に1対1のバトルで行ないますが、予選に関しましては参加人数が多い事もあり、試合時間が長引く事を避ける為に、魔装禁止とさせていただきます」
「魔装禁止? つまり、魔装具だけで戦うって事?」
「そういう事ですね」

「また今大会は特例として、召喚士は召喚獣を一体だけ連れて参加する事が認められています」
「凄ぇ! 召喚士も参加出来るんだ!? でも今時召喚士なんて居るのか?」
「召喚士大国のシェーレが滅んだ事で、随分召喚士の数も減ったもんなー」

「尚、予選の試合形式ですが、必ずしもバトルになるとは限りません! どのような試合形式になるかは、その都度抽選によって決めたいと思います」
「イベント色強いな~」
「興行ですからね。観客を飽きさせない手を、色々考えてるんですよ」

「でも、これ程の大きい大会……トゥマール国はボロ儲けね!?」
「いえいえ、今大会は五国の協力があればこそですからね……勿論興行収入はちゃんと五国で均等に分けられますよ!」

「五国で分ける? ……ハッ!! それじゃあ、ネムも貰えるの?」
「ネムちゃんはシェーレの王女様なんですから勿論です」
「ふわあぁぁぁ! ち、因みに幾らぐらい?」
「ハッキリとは分かりませんが、まあ少なく見積もっても、一国あたり100億ジェルぐらいにはなるかと……」
「ひゃくっ!?」

 とんでもない額に、完全に動きの止まるネムとロロ。

「ロ、ロロロロロ、ロロ? ひゃ、100億ジェルって、1万ジェル金貨何枚ぐらい?」
「ひゃ、ひゃくと言うぐらいだから、100枚はあるのです!」
「それだと100万ジェルだね」

 ネムとロロのやり取りに、冷静にツッコミを入れるユーキ。

「そ、それだけあったらずっと同じ服着なくてもいいよね?」
「下着だって、3日に1回は変えられるのです!」
「下着は毎日変えようよ……女の子なんだから」

「古い食材が大丈夫かを、匂いで判断しなくてもいいよね?」
「味で判断出来るのです!」
「その前に賞味期限で判断しようね」

 完全に舞い上がっている、ネムとロロであった。



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