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第三章 愛と勇気の大冒険

第16話 ロリじゃないよ! ロロだよ!

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「ん……あれ? 僕どうなって……」

 ベッドの上で目覚めたユーキが体を起こすと、自分がウエディングドレスを着させられている事に気付く。

「なっ! なんじゃこりゃあああ!!」

「はわあっ!! ビックリしましたー……いきなり大きな声出さないでくださいよー」

 部屋の隅に座っていた、メイド服を着た白くて長い髪の女性が驚きの声を上げる。


「え、君誰? ここはどこ? 僕、一体どうなったの? 何で僕こんなとこで寝てたの?」

「はわわわ! いっぺんに質問しないでほしいです……一つずつお答えするのです。えと、私のスリーサイズですか?」
「いや聞いてねーわ!」


「冗談ですよー、私の名前はロロ……あるじよりユーキさんの事、諸々を任されているのです」


「ロロって言ったっけ? ここはどこ?」
「ここはオーナー、リッチさんのお屋敷なのです」

「リッチの屋敷? 何で僕そんなとこに……」
「ユーキさんがイベント中に倒れたので、屋敷に連れて来たって聞いてるです」

「倒れた? 確か僕、アイ君と逃げてて……ハッ! ロロ! 今って何時?」
「えとー、今は午前10時なのです」

「午前10時? 一晩中寝ちゃったのか? てかもうすぐイベント終わっちゃうじゃないかー!! 早く戻んないと!」

 ベッドから降りようとしたユーキだったが、ドレスの裾を踏んで転んでしまう。
「あうっ!」

「はわっ! 大丈夫ですかー?」
「忘れてた! 何で僕ドレスなんか着てんだよ!!」
「オーナーの指示で私が着替えさせていただいたのです」

「もうっ! 着替えるから僕の服返して!」
「何だか濡れてたし、ちょっと匂いがしたから洗濯に出してるのです。だから今ここには無いのです」

「川に落ちたからなー……いや時間が無い! もうこのまま行く!」

 ユーキが部屋から出ようとドアノブに手を掛けるが、ピクリとも動かない。

「何だ? 動か……ない……」
「申し訳ないですが、この部屋からユーキさんを出さない様に言われてるのです」
「え? それってどういう?」


「やあ、お目覚めですか? ユーキさん」

 部屋の壁にある巨大なモニターにゲルト・リッチと、その後ろに並ぶ四天王の姿が移し出される。

「ゲルト・リッチ! とあいつらは!」
「ご気分はいかがですか? ユーキさん」
「たった今、最悪になったよ……なるほど、全部あんたの差し金って訳か」

「四天王が少々手荒な真似をしたみたいですが、全ては君をこの屋敷に招待する為だった、許してください」
「招待? 誘拐の間違いだろ?」

「そう思われても仕方ないですね……でもこのまま旅を続けていたら、あなたはどこかで命を落とすかもしれない……それなら旅などやめて、僕とこの屋敷で暮らす方が幸せになれます」

「勝手に決めつけんな! 僕は自分の意志で旅をしてるんだ! あんたにとやかく言われたくない。悪いけど、帰らせてもらうよ!」


 魔装具を具現化させようとペンダントを掴むユーキだったが、何故か何も起こらない。

「フフ、無駄ですよ……あなたの魔法は封じさせてもらいました」
「え? 封じた?」

 ユーキが自分の手足を見ると、両手首両足首にリストバンドの様な拘束具が着けられている。

「何だこれ? は、外れない!」

「それを外すには、この専用の鍵が必要です……僕のプロポーズを受けてくれるなら、すぐにでも外してあげますよ?」

「そんなの、完全に脅迫じゃないかー! こんな事されて受ける訳ないだろ!」

「すぐに結論を出す必要はありません……そこでゆっくり考えてください。それじゃあロロ君、ユーキさんのお世話を頼んだよ」

「ハイ! 頼まれましたです」

 モニターの映像が消える。

「あ、待てコラ! この誘拐犯ー!!」


(クソッ! 誘拐して閉じ込めて魔法まで封じて……これでオーケーするとか、本気で思ってんのか? あいつ。ハッ、待てよ? オーナーが黒幕だったのなら、景品も貰えないって事か……はあ、ガッカリだ)

(アイ君達、無事かなー? 僕がさらわれた事、気付いてるかなー? また助けに来てくれるかなー? ……こうなったらまず僕がやるべき事は!)

「ロロ!!」
「ハ、ハイです!」

「お腹すいた! 何か食べるもの頂戴!」
「ハイ、分かりましたです! 少々お待ちくださいです」

 部屋の端にあるキッチンで、料理を作り始めるロロ。

 昨晩から何も食べてないので、まずは腹ごしらえをする事にしたユーキ。




 街を歩いているパティ、メルク、セラの3人。

「さあ、どんな服が似合うかしら?」
「やめましょうよー、パティさーん」
「ダメよ! うんと可愛くしてユーキをビックリさせるんだから……ねえ、セラ?」

「……」

「セラ?」

「あ、ハイ! 呼びましたかぁ? パティちゃん」
「どうしたの? あなた昨日からボーッとして、変よ?」

「パティちゃん!」
「何? セラ」
「魔装具はいつ完成しますかぁ?」
「え? 多分もうそろそろ出来てる頃だと思うけど、それがどうしたの?」
「なら、早く取りに行った方がいいですぅ」
「どういう事?」
「ユウちゃんがピンチですぅ……私達の助けを待ってますぅ」

「え? ユーキが? ど、どういう事よ? セラ!!」
 セラの肩を掴んで激しく揺するパティ。

「ユ、ユ、ユウちゃんがぁ、あ、あ、そ、そんな、にぃ、ゆ、ゆすらないでぇ、え、き、気持ち悪っ、う、うぷっ!」

 羽をユーキに追尾させて、ずっと様子を見ていた事、ユーキがリッチの屋敷に幽閉されている事をパティに伝えるセラ。


「な! な! な! なんですってえええ!!」
「一度フラれたのに、力尽くで誘拐して屋敷で一緒に暮らそうだなんて! うらやま、いや許せない!!」

「今はまだ無事ですがぁ、あのオーナー、何をするかわかりません……急いだ方がいいですぅ」

「分かったわ! すぐ魔装具取りに行って来るわ!」



 ダッシュで魔装具屋に到着したパティ。

「おじさんっ!! あたしの魔装具出来てる?」
「やあパティちゃん! バッチリ出来てるよ」
「良かった、すぐに所有権の譲渡をお願い!」
「あ、ああ……何やら急ぎのようだな?」

 魔装具の所有権の譲渡が無事終わる。

「ありがと! 料金、ここに置いておくわね!」
「あ、パティちゃん! 最初に魔装する時は……」

 しかし、すでにパティは店を飛び出していた。
「まあ、パティちゃんなら何とかするか」

 パティの置いて行った料金を確認する店主。
「おいおいパティちゃん、こりゃ多過ぎるよ……まあ、今度来た時にはいっぱいサービスしてやるか」


 待っていたセラ達と合流するパティ。

「お待たせ! セラ! メル君! さあ、行くわよ!」
「ハイ! 行きましょう!」
「行きましょぉ!」

「ユーキを助けに!! あとユーキをむざむざ誘拐された、不甲斐ないアイ君をぶっ飛ばしに!!」




 ブルッ!!
 身震いするアイバーン。


「大丈夫でフか? 寒いんでフか?」

「いや……ちょっと背筋に悪寒が走ったものでね」
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