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第ニ章 全てはゲーム機の為に

第7話 番号! 1、2、3!

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「ユーキ選手を追い詰めていたバルカン選手でしたが、何かを警戒したのか急に距離を取ったー!」


「ロッドに炎をまとわせた」
「ふむ……まあワイバーン戦の時に、剣に雷をまとわせていたんだ、出来て当然だろう」


(さて……炎対策はこれで何とかなりそうだ……次はあの厄介な盾を何とかしないと……あ、そうだ! あの技なら通用するかも?)


「ホーミングアローズ!!」
 ユーキが叫ぶと、ユーキの周りに3本の光の矢が現れる。


「ユーキ選手の周りに光の矢が現れたー! それを見てバルカン選手、更に距離を取る!」


「アローズ? まさかアローズまで使えるって言うの?」
「どうやらユーキ君が相手の能力をコピー出来ると言うのは本当のようだね」
「ええ、アローズはあたしが考え出したオリジナル技……元から知っていたなんて事はあり得ない」


 だがユーキの放ったアローズは宙に浮いたままだ。
「あれ? 何で動かないの? 敵に向かって飛んで行くんじゃないの?」


 その様子を見たパティ。
「え? もしかしてあの娘、アローズの特性を分かってない?」


(何かの魔法らしいがこっちに撃って来る様子がない……罠か?)
 ユーキの動きを警戒していたバルカンだったが。
「ええい! じっと待つのは性に合わねえ!」
 ユーキに向かって行くバルカン。


「バルカン選手動いたー! さあ、ユーキ選手の魔法が発動するのかー!」

「うわ! ちょ、ちょっと待って!」
「もう待たない!」

 バルカンの勢いに押されて数メートル後退するユーキ。するとアローズが動き出す。

「ユーキ選手の放った魔法が発動したー! やはり罠だったのかー!」

「来たか!」
 アローズを防ごうと盾を構えるバルカンだったが、アローズは何故かバルカンではなく、ユーキに向かって飛んで行く。

「え? 何でこっちに?」
 とっさにしゃがみ込んだユーキの上を通過したアローズだったが、すぐにUターンして再びユーキに向かって来る。

「ええ? 何で僕に向かって来るのさー!」
 逃げ出すユーキ。

「ああっと! これはどうした事か? ユーキ選手、自分の放った魔法に追いかけられているー!!」


「やっぱりだわ! あの娘、アローズの特性を理解してない」
「特性って何ですか? パティさん」

「ええ、ホーミングアローズって言うのはその名の通り、追尾する矢……一の矢が術者を追尾して飛び、二の矢三の矢はそれぞれ1つ前の矢を追尾するようになってるの……そして術者が加速すればするほどその威力は増して行く」
「もっとも、さほど速度が出ていない状態なら、それぞれの矢を個別に操作する事は出来るけども」

「ふむ……つまりユーキ君は見た目をまねているだけで、その本質までは理解していない……と言う事か?」
「ええ、でもストレングスはちゃんと機能してたのよねー……あれも見た目では分かりにくい魔法なのに」
「あ、ストレングスならあの時僕がユーキさんに説明しました」

「そうか……つまり技の特性さえ理解すれば普通に使えるって事か」


 まだアローズに追いかけられているユーキ。
「ハアッ! ハアッ! 何か……さっきも……逃げ回ってた……ような…………もう!!」
 立ち止まり振り返って手のひらを突き出す。

「ストーップ!!」
 そう言うと、その声に反応したのか、アローズが止まる。
「いい加減にしろ!! 番号!!」
 ユーキが号令をかけると、アローズが順番に立ち上がって行く。


「え? 何をやってるの? ユーキ」


「分かってるのか? 君達! 追いかけるのは僕じゃなくてあいつなの!! 分かった?」
 バルカンを指差すユーキに、うなずくアローズ。

「な、何とユーキ選手! 自分の魔法を調教しているー!!」

「よし! じゃあ行ってこい!!」
 ユーキの命令を受けて、バルカンに向かって行くアローズ。
「コントは終わったかい?」
 だが盾に弾かれて地面に突き刺さるアローズ。
「あれ? 全然弱い?」

「あれではダメよ……操る事は出来たけど、速度がまったく出ていない」


「ユーキ選手! 魔法を当てる事は出来ましたが、バルカン選手に簡単に弾かれてしまったー!」


「どうやらここまでのようだね」
 トドメをさそうとユーキに向かって行くバルカン。

「く……ファントムウォール」
「無駄だよ!」
 姿を消したユーキだったが、バルカンの横薙ぎの剣で左肩を切り裂かれてしまう。
「あぐっ!!」

 痛みの為に姿を現してしまうユーキ。
「その技はあくまで見えなくなるだけで、実際に居なくなる訳じゃない……目の前で見せられれば、大体の場所は見当がつく」


「ああっと! 一瞬消えたユーキ選手でしたが、再び現れた時には肩を負傷していたー! これはバルカン選手がやったのかー?」


「あいつ、以外とやるわね」
「さすがにそろそろ魔装しないとマズイぞ? ユーキ君」


 攻撃を警戒しつつ、何度もロッドを回転させるユーキ。
「ここまで追い込まれても、まだ魔装しないのかい?」
「こんな所で魔力切れになってる場合じゃないんでね」
「だからってここで負けたら元も子もないと思うけどね」

 ロッドを回しながら距離を取るユーキ。間合いを詰めて来るバルカン。それを何度も繰り返す。
「魔法を発動させる暇は与えないよ」
「く……」

「何とか魔法を撃てないの? ユーキ!」
「ああも間合いを詰められたら難しいだろう……私がもしユーキ君やパティ君と闘ったとしても、おそらく同じ戦法を取るだろう」


 身体中傷だらけになり、倒れ込むユーキ。
 その光景に会場中から大ブーイングが起こる。

「テメェ! いい加減にしろー!!」
「もうやめてー!! ユーキちゃんが可哀想よ!!」
「ユーキちゃんの代わりに俺がぶっ飛ばしてやる!!」
「かかって来いコラー!!」

「物凄いブーイングです! 闘技場の全てがユーキ嬢の味方になったようだー!!」

「やれやれ……これ以上やると、俺がみんなに殺されそうだ……いい加減ギブアップしてくれないか?」
 バルカンの提案にニヤッと笑うユーキ。

「勝てる試合を何で降りなきゃいけないんだ?」
「何? どういう……」
 バルカンが疑問に思っていると、ユーキは人差し指を振り上げ。
「行け!」

 ユーキがそう言うと、何も無い地面からいきなりアローズがバルカンめがけ飛び上がって来る。
「何?」
 とっさに構えた盾に一の矢が刺さり、二の矢が同じ場所に刺さった時、盾が砕け散る。
 そして三の矢がバルカンの右肩を貫く。
「ぐわあっ!!」
 激痛に剣を手放すバルカン。


「な、なんと!! 地面からいきなり光の矢が現れて、バルカン選手の盾と肩口を貫いたー!! これはユーキ選手が仕掛けた物なのかー?」


「ええ? どう言う事なんですか? アイバーン様!!」
「そうか……あの時ファントムウォールを使ったのは自分を隠す為ではなく、地面に刺さったままのアローズを隠す為だったのか」
「ええ、しかも加速していないアローズの威力を強制的に上げた……てっきりストレングスの威力を上げているんだとばかり思ってたけど」
「ユーキさん、凄い……」


「そうか……追い込んでたつもりが、逆にこの場所に誘い込まれてたって訳か……」
「してやられたよ……利き腕をやられたんじゃこれ以上闘えない……俺の負けだ」


「ああっと!! バルカン選手負けを認めましたー! これによりユーキ選手の勝利でーす!!」




「はあー!! しんどー!!」
 大の字に倒れ込むユーキ。
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