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因果応報編
魔王討伐の真実
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何だろう?重い話かな?
「ウィルよ、勇者を召喚したのはどこの国だったかな?」
随分と唐突な質問だな?
「え~と、確かソレイユ神聖国家だったと思います」
そう、ソレイユ神聖国家なんだよな……なんか引っかかるな。
「魔族の王である魔王はこの世界の他の種族を奴隷化しようとしている、として世界の為に倒すという名目だったな」
「そうですが……違うのですか?」
「違う。当時、魔族は他の種族と問題などなく普通に交流していた」
「それが何故?」
「2195年前、ソレイユ王国と言う小さな国が在った」
「そうでした。小さな国だったのが、急に周りの小さな部族を吸収して勢力を伸ばしてきて国名が神聖国家と代わったって習ったっけ」
「その時に動いていたのがラクーザの神の信徒、今のソレイユ神聖国家の上層部の子孫だ」
「今の神聖国家の礎を築いたのはその者達という事ですね」
「大した事のないソレイユ王国が急に大きくなったのには理由がある。ダイアストという土地神を信仰する国が在ったのをを知っているか?」
「ダイアスト神ですが聞いた事が無いですね」
「ダイアスト神と信仰していた国は或る者達によって歴史から消されたと言っていいだろうな。皆が知らないのは仕方あるまい」
「何が有ったのです?」
「ダイアストの大司教が殺されたのだ」
「……話の流れではソレイユの人達が怪しいですが、どうして?」
「当時は宗教として確立しているものは2つしかなかったのだ。出来たばかりのラクーザ神と歴史あるダイアスト神。当然ダイアストを信仰している者が多く、自分達が勢力を伸ばすのに邪魔だったのだ。そこに不幸な偶然が重なった。魔族の1人が大司教が殺されるというその現場を見ていた。犯人はそれに気づいて目撃した魔族を殺し、その魔族に罪を被せたのだ」
「酷い話ですね」
「犯人されたのは魔王の娘だった」
「えっ、それじゃ……でも何でそんなことが判ったのですか?」
「私を誰だと思っておる?」
「うっ、そうだった」
時空魔法を応用したのかな?……今度、考えてみよう。
「魔王であったザヴォロと私は、魔法を学び極めるライバルであり親友だった」
「……話が見えて来ましたよ。ソレイユ王国の者が犯人で、真相を知ったであろう魔王を排除しようとした。師匠は友の為に共に戦ったのですね」
「ふふ、召喚された勇者達は強く、願いは叶わなかったがな。ザヴォロと私の無念、魔族の怨念を糧に再起を図って私はリッチになった。面白い物よのう、今はお前が私と出会いソレイユの奴らと関わり合いを持っている。因果だな」
「運命だったのかもしれません」
ーーーー
「酷い話ね」
「それじゃ勇者達って騙されてたわけじゃないの……」
「世間の人達もね」
「ソレイユの連中ってろくでなしだな。神聖国家が聞いて呆れる」
「上層部の僧呂の連中だけだと思うけど。人々も騙されてると思う」
「フレア、どうした?」
「急に頭が痛くなってきたの」
「無理しないで休んだ方がいい」
「……そうする」
☆☆☆
ウィルの話しを聞いていたら急に頭が痛くなってしまった。頭の中にかかっている霞が晴れて行くような……ダメだ、やっぱり思い出せない。
ーーーー
「それでウィルはこれからどうするつもりですか?」
「フレアを狙っている連中の正体も判ったし、おおよその理由も判った。師匠の敵でもあるし、ちょっかいを出してくるのであれば、もちろん戦うが俺の目的の第一は、お家再興だ。なので先ずは爵位を手に入れる」
「どうやって?」
「リベレルの葉を使う。ゼスさん達が面白い情報を仕入れて来てくれたんだ」
「何ですかそれは?」
「ハレイス帝国が本腰を入れてガラザス王国を攻めるらしい」
「ハハァ、奴らアナマサを攻めきれないもんだから作戦を変えてきたな」
「そのようですね。……とすると戦争が起こればアルバウア王国とキースロイ王国はガラザスを支援しなくてはなりませんね」
「そうか、そうなるな……」
「そこでリベレルの葉で作ったポーションが必要になるだろう?」
「帝国が本腰を入れたとなれば、物資だけではすまない。兵を送れば怪我人もでるという事か」
「食い込むチャンスですね」
「サラン公爵に力を貸してもらおうと思うんだ」
「それはいい」
「今、ベンジャミンにサラン公爵と接触してもらってる」
「良い返事が貰えるといいですね」
その夜にベンジャミンから連絡が来た。
『ウィル様、サラン公爵から返事を頂きました』
「どうだった」
『『任せておきたまえ』と力強い返事を頂きました。ハレイス帝国がガラザスに兵を差し向けた事が判り次第、国王にお話をするそうです』
「解った、ありがとう」
「やったな、ウィル」
「ああ、取り敢えず出発点には着いたようだ」
ーーーー
ゼスさんの情報通り1週間後に帝国がガラザスに侵攻を開始したとの連絡を、ボイドさんが持って来てくれた。
1日遅れでガラザスの使者が、王都に来た。それによって王都は一気に騒がしくなった。
☆☆☆
「陛下、ガラザスの友人に聞いた所によると帝国は今回本気のようです。今までにない大軍勢で侵攻して来たそうです」
「そ、そんな事は解っておる。だからこうやって皆の意見を聞こうと言うのだ」
「帝国軍は屈強な兵も多く、魔道師もたくさんいるのです。我が軍も今回はただではすまないでしょう」
「ええい、情けない事ばかり言いおって、何か策はないのか?」
「陛下、1つご提案が」
「おお、サラン公爵か、言ってみよ」
「リベレルのポーションを商いしているウィルとか言う男を懐柔しては如何でしょう?」
「ウィル?……あの男か、確か大物の後ろ盾が居った筈、どうやってだ?」
「所詮、廃爵になった者の息子で御座います。爵位をちらつかせてある程度の権限を与えれば飛びつくでしょう」
「ふむ、……そうだのう」
「リベレルのポーションがあれば、兵士達も安心して戦え士気も上がるでしょうな」
「なるほど。よし、そなたに全て任すゆえ直ぐに取り掛かるが良い」
「ははっ、直ちに」
ーーーーーーーーーーーー
☆☆
「旦那様、お手紙が届いております」
「手紙?私に?誰からだ、……サラン公爵からか。………………ふふふ、あのウィルがな……男爵だと。やっとやる気になりおったか。父はここでお前の活躍を見ておるぞ、しっかりやるのだ」
ーー
王の命により叙爵をする旨の書状を持った使者が俺の所に来たのは、帝国がガラザスに進行を開始してから15日だった。
「ウィルよ、勇者を召喚したのはどこの国だったかな?」
随分と唐突な質問だな?
「え~と、確かソレイユ神聖国家だったと思います」
そう、ソレイユ神聖国家なんだよな……なんか引っかかるな。
「魔族の王である魔王はこの世界の他の種族を奴隷化しようとしている、として世界の為に倒すという名目だったな」
「そうですが……違うのですか?」
「違う。当時、魔族は他の種族と問題などなく普通に交流していた」
「それが何故?」
「2195年前、ソレイユ王国と言う小さな国が在った」
「そうでした。小さな国だったのが、急に周りの小さな部族を吸収して勢力を伸ばしてきて国名が神聖国家と代わったって習ったっけ」
「その時に動いていたのがラクーザの神の信徒、今のソレイユ神聖国家の上層部の子孫だ」
「今の神聖国家の礎を築いたのはその者達という事ですね」
「大した事のないソレイユ王国が急に大きくなったのには理由がある。ダイアストという土地神を信仰する国が在ったのをを知っているか?」
「ダイアスト神ですが聞いた事が無いですね」
「ダイアスト神と信仰していた国は或る者達によって歴史から消されたと言っていいだろうな。皆が知らないのは仕方あるまい」
「何が有ったのです?」
「ダイアストの大司教が殺されたのだ」
「……話の流れではソレイユの人達が怪しいですが、どうして?」
「当時は宗教として確立しているものは2つしかなかったのだ。出来たばかりのラクーザ神と歴史あるダイアスト神。当然ダイアストを信仰している者が多く、自分達が勢力を伸ばすのに邪魔だったのだ。そこに不幸な偶然が重なった。魔族の1人が大司教が殺されるというその現場を見ていた。犯人はそれに気づいて目撃した魔族を殺し、その魔族に罪を被せたのだ」
「酷い話ですね」
「犯人されたのは魔王の娘だった」
「えっ、それじゃ……でも何でそんなことが判ったのですか?」
「私を誰だと思っておる?」
「うっ、そうだった」
時空魔法を応用したのかな?……今度、考えてみよう。
「魔王であったザヴォロと私は、魔法を学び極めるライバルであり親友だった」
「……話が見えて来ましたよ。ソレイユ王国の者が犯人で、真相を知ったであろう魔王を排除しようとした。師匠は友の為に共に戦ったのですね」
「ふふ、召喚された勇者達は強く、願いは叶わなかったがな。ザヴォロと私の無念、魔族の怨念を糧に再起を図って私はリッチになった。面白い物よのう、今はお前が私と出会いソレイユの奴らと関わり合いを持っている。因果だな」
「運命だったのかもしれません」
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「酷い話ね」
「それじゃ勇者達って騙されてたわけじゃないの……」
「世間の人達もね」
「ソレイユの連中ってろくでなしだな。神聖国家が聞いて呆れる」
「上層部の僧呂の連中だけだと思うけど。人々も騙されてると思う」
「フレア、どうした?」
「急に頭が痛くなってきたの」
「無理しないで休んだ方がいい」
「……そうする」
☆☆☆
ウィルの話しを聞いていたら急に頭が痛くなってしまった。頭の中にかかっている霞が晴れて行くような……ダメだ、やっぱり思い出せない。
ーーーー
「それでウィルはこれからどうするつもりですか?」
「フレアを狙っている連中の正体も判ったし、おおよその理由も判った。師匠の敵でもあるし、ちょっかいを出してくるのであれば、もちろん戦うが俺の目的の第一は、お家再興だ。なので先ずは爵位を手に入れる」
「どうやって?」
「リベレルの葉を使う。ゼスさん達が面白い情報を仕入れて来てくれたんだ」
「何ですかそれは?」
「ハレイス帝国が本腰を入れてガラザス王国を攻めるらしい」
「ハハァ、奴らアナマサを攻めきれないもんだから作戦を変えてきたな」
「そのようですね。……とすると戦争が起こればアルバウア王国とキースロイ王国はガラザスを支援しなくてはなりませんね」
「そうか、そうなるな……」
「そこでリベレルの葉で作ったポーションが必要になるだろう?」
「帝国が本腰を入れたとなれば、物資だけではすまない。兵を送れば怪我人もでるという事か」
「食い込むチャンスですね」
「サラン公爵に力を貸してもらおうと思うんだ」
「それはいい」
「今、ベンジャミンにサラン公爵と接触してもらってる」
「良い返事が貰えるといいですね」
その夜にベンジャミンから連絡が来た。
『ウィル様、サラン公爵から返事を頂きました』
「どうだった」
『『任せておきたまえ』と力強い返事を頂きました。ハレイス帝国がガラザスに兵を差し向けた事が判り次第、国王にお話をするそうです』
「解った、ありがとう」
「やったな、ウィル」
「ああ、取り敢えず出発点には着いたようだ」
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ゼスさんの情報通り1週間後に帝国がガラザスに侵攻を開始したとの連絡を、ボイドさんが持って来てくれた。
1日遅れでガラザスの使者が、王都に来た。それによって王都は一気に騒がしくなった。
☆☆☆
「陛下、ガラザスの友人に聞いた所によると帝国は今回本気のようです。今までにない大軍勢で侵攻して来たそうです」
「そ、そんな事は解っておる。だからこうやって皆の意見を聞こうと言うのだ」
「帝国軍は屈強な兵も多く、魔道師もたくさんいるのです。我が軍も今回はただではすまないでしょう」
「ええい、情けない事ばかり言いおって、何か策はないのか?」
「陛下、1つご提案が」
「おお、サラン公爵か、言ってみよ」
「リベレルのポーションを商いしているウィルとか言う男を懐柔しては如何でしょう?」
「ウィル?……あの男か、確か大物の後ろ盾が居った筈、どうやってだ?」
「所詮、廃爵になった者の息子で御座います。爵位をちらつかせてある程度の権限を与えれば飛びつくでしょう」
「ふむ、……そうだのう」
「リベレルのポーションがあれば、兵士達も安心して戦え士気も上がるでしょうな」
「なるほど。よし、そなたに全て任すゆえ直ぐに取り掛かるが良い」
「ははっ、直ちに」
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「旦那様、お手紙が届いております」
「手紙?私に?誰からだ、……サラン公爵からか。………………ふふふ、あのウィルがな……男爵だと。やっとやる気になりおったか。父はここでお前の活躍を見ておるぞ、しっかりやるのだ」
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王の命により叙爵をする旨の書状を持った使者が俺の所に来たのは、帝国がガラザスに進行を開始してから15日だった。
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