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因果応報編

アジト

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 カルビンさんはハミルトン王国の出身だった。他の商人とは違い、取り扱う物は特別な物が多いそうだ。各国の貴族やお金持ちに依頼されて変わった物を扱っている内に評判になり、今では業界の間で一風変わった存在になっているらしい。

「今回は本当にありがとう御座いました。この御恩に報いる為に、何か有れば必ず協力させて頂きます」

「ありがとう御座います」

ーー

「商業ギルドに行けば必ず連絡がつくなんて凄いですね」

「相当な人脈があるんだろうね」

キースロイ王国側の国境の街デカンタでカルビンさん達と別れ王都マヒナに向う。

そこからの移動は何の問題はなく、7日目後にはマヒナに着いた。

「明日から情報収集と行こうか」
「はい」

ちょっと高級な風呂付きの宿に泊まる。朝食付きで部屋に持って来てくれるらしい、中々いいサービスだ。

翌日、スパイスの利いた独特の食事を済ませ、王都を散策する。マヒナは活気が有った。2つ街を過ぎた東に港街シェスタが在るからだろう。色んな種族がここにはいる。

「ここだな、あいつが言っていたアジトは」
「そのようです」

城から放射線状に伸びた路の西側の端、歓楽街の奥にあたる所に煉瓦造りの建物が並んでいる。

「怪しい雰囲気です」

「確かに。ここいらの元締めが住んでそうな感じだな」

「ウィル様、どうするのです?」

「堂々と乗り込むさ。入口は左から3番目の建物だったな」

扉に付いているノッカーを使う。

「どなたです?」

「ここに来ればパロウパロウの幹部に会えると聞いて来たのだが?」

「どなたの紹介でしょう?」
「ボイドさんだ」

「……お入り下さい」

静かに扉が開いた。入った所は狭く奥に下り階段が有るだけだ。上階に行くには別のルートが有るのだろう。

1回、2回、……5回、ただ階段を降りて行く。通された部屋には5人の男達がいた。

「ボイドの紹介とか言ったそうだな」

真ん中の男が凄味の有る声で口を開いた。

「ああ」
「ボイドは何処にいる?」

「俺が造った特別な空間にいるよ」
「会わせて貰おうか」

「お安い御用さ」

俺が指をパチンと弾くとボイドが空中から現れた。

「うっ!」
「ボイド、大丈夫か?」

「ゼスさん、この人達に逆らってはダメです。パロウパロウは壊滅してしまいます」

「何だと!」

「この男がその気になれば、ここに居る全員一瞬で廃人になります」

「…………お前ほどの男が言うのだ、そうなのだろうな。貴様の目的は何だ?」

「解ってもらえて嬉しいです。余計な事をしないで済みますからね。聞きたいのは1つ、カレンを狙う理由と依頼主の名だ」

「そ、それは……」

[ドッゴーン!]

轟音と共に突如壁が吹き飛び、数名の僧侶の様な格好をした男達が乱入してきた。

「そこまでだ」

「くぅ……喋っても喋らなくてもパロウパロウはお仕舞か。どうやら我らは組む相手を間違えたようだな」

何がどうなっている?状況が把握出来ない内に、パロウパロウの幹部の1人が僧侶に杖で胸を突かれて倒れた。

「ぐぁ」

「ウィル様!」

そうか口封じか。こいつらが雇主だ。

「幹部はいい。僧侶の1人を捕まえる」
「はい」

気がつくとサユリカ越しにボイドが僧侶に狙われているのが見えた。杖が襲う寸前だ。

不味い!フェイクライフが殺られれば、俺の魔力が無くなりすべてのフェイクライフが消えてしまう。防ぎに行く余裕は無い……。

「ボイド!戻れ」

ピンチで思考停止していたが、俺は声を限りに叫んでいた。僧侶の杖はボイドの眉間があった所で空を切る。

「ぬぅ」

獲物を仕留めそこなった僧侶は、血走った眼で俺を睨んだ。殺気を隠す気もなく俺に向かって来る。

こいつらの方がよっぽど犯罪組織の構成員らしく見える。パロウパロウと違って品が無い。

僧侶の杖をサイドステップで躱し、出足を止める為に拘束魔法を使う。

『バインド!』

しかし僧侶の動きは止まらなかった。ちっ、こいつらも何か魔法防御しているのか?仕方ない。聞きたい事があるので、いつものラベジソードではなくミスリルソードで応戦する。

僧侶の杖は剣の動きとは違うのでやりづらい。円を描きあらゆる方向から飛んでくる感じだ。俺の剣は杖に操られているようで一向に当たらない。サユリカは大丈夫か?

サユリカは持ち前の素早さで上手く対応している。スキあらばスキルを使って取り込もうとしているようで大丈夫そうだ。

僧侶の杖の動きの理屈が解って来た。俺の力を利用しているのだ。攻撃すると倍の速さで返って来る。ならば考えがある。力いっぱい肩にめがけて剣を降ろす、杖の上部で受け止められる。

今までなら力を込め押し込んでいたのだが、それでは俺の力を利用し上部を反動で回転させ杖の下部が弧を描きカウンターの様に飛んでくる。

悟られない様に一瞬だけ力を込め、杖の回転と同時に剣を離す。その時には俺の左手にはラベジソードが握られ僧侶の首をハネる軌道に乗っていた。

肩透かしを食らった形の僧侶の杖に勢いは無い。俺には届かない。しかし僧侶は強者だった。ラベジソードは顎をかすっただけだ。でもこれで充分だ。

「くっ、動かん……」

麻痺の効果が当たったようだ。こんな奇襲は何回も通用しない、直ぐに殺した方が無難だ。首をハネる。

「ザライ様!」

「くそっ、我らの事を知ってる奴は始末した。皆、引け」

「はっ」

僧侶達はあっという間にいなくなった。

「サユリカ、大丈夫か?」
「はい、なんともありません」
「そうか」
「幹部達は殺られてしまいましたね」

「手がかり無しか……待て、まだ息が有るものがいる」

最初に胸を刺された奴と俺と話した奴だ。虫の息だが何とかなる。

「ララメリア!」

死なせはしない。
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