上 下
9 / 25
因果応報編

帝国の影

しおりを挟む
 門に着いてサーチで周りを確認する。近くに人の気配はないので、帝国軍は遠距離からの魔法攻撃で門を壊すつもりらしい。

遠くから飛んで来る火球をテレスさんを始め、ここの人達が水や火の魔法をぶつけて、撃ち落としたり威力相殺して何とか対応しているが、追いついていないので防壁が所々崩れかけている。来る時に見た防壁はこのせいだったのか。

「アナサマの人達は魔法が使えるんだ」
「ウィル、感心してないで何とかしないと」

「おっと、そうだった。マジックシールド!」

対魔法用のシールドを張ったので、火球は弾かれ沼地に落ちたりシールドに当たりそのまま消滅する。

「おお!」

「テレスさん、防壁の上には何処から上がるんです?」

「貴方でしたか……助かります、あそこの階段から上に行けます」

「分かりました。サユリカ、フレア行こう」
「「はい」」

防壁の上から見ると、遠くに帝国軍が陣を張っているのが見える。

「シールドの内側からは魔法攻撃が出来るから存分にやってくれ」

「解りました」
「了解」

「アイシクルディフュージョン!」

フレアが放った氷魔法が帝国軍の上空で形成され、氷の塊がはじけ、幾つもの鋭い剣の様になって降り注ぐ。

しかしそれは帝国軍に届く事はなかった。

「あら?」
「それなりに魔法を使う奴がいるみたいだね」

「魔法障壁を張れる人がいるのですね」

「フレアが囮の魔法を撃って弾かれたら、俺が障壁を壊す魔法を出すから、サユリカは直ぐに仕掛けてくれ」

「任せて」「解りました」

「いくわよ。アイシクルディフュージョン!」

「ディスオーダーメソッド!」
「エクスプロージョン!」

フレアが撃った魔法は予定通り弾かれた。一拍おいて俺の魔法方式を意味の無い物にする魔法が障壁を覆い尽くし、そこにサユリカのエクスプロージョンが炸裂した。

「決まりましたね」

「追い討ちと行こうか。ライトニングウェーブ!」

「じゃ、私もっと。ライトニングウェーブ!」
「私もです。ライトニングウェーブ!」

地を這うようにバリバリバリと音をたてながら、放電による光と共に帝国軍に襲いかかる、それも時間差で3発。


「どうなったかな?」
「音沙汰が有りませんね」
「炭になったのでは?」

「なら良いか」



         ☆☆☆☆☆


「へ、陛下、たった今アナサマからの情報が入りました」

「おお、そうか。今回は首尾よく事は進んだであろう」

「そ、それが……全滅したとの知らせがあったとの事です」

「全滅だと!前回の失敗を踏まえて優秀な魔道師を揃えた筈だ。1万もの兵士を連れて行けば必ず落とせると、息巻いておったザケロ将軍は何をしていたのだ」


「も、申し訳ございません。見に行った者に依りますと全てが炭になっていたそうでございます」

「全てが炭に……」

「陛下、アナサマには手を出さない方が宜しいのでは?」

「ギレル、貴公もあそこの重要性は知っておろう」
「それは承知しておりますが……」

「くぬぅ、もっと策を練らねばならぬ様だな。会議を行う、皆を召集せよ」

「はっ」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



帝国軍を撃退した後、再び長の建物に招かれた。今度はフレアとサユリカも一緒だ。

「食事はとても美味しかったです」

「それは何よりです、あなた達がいてくれて良かったです。お約束通りお話しの続きを致しましょう、ですが他言無用と言う事でお願い致します」

「解りました」

「先ずは帝国の件ですが……私達はスキルとは別の能力が有るのです」

「別の能力ですか」

「はい、その力はスキルと同じ様な物も有りますが違う物も多く有ります。アナサマは特殊な場所ですので知られる事はなかったのですが……」

「帝国は何らかの形で気づいてしまったんですね」

「そうです。自国で生まれた者の中にいたのでしょう。それで、ここの者を連れて行こうとしたのです。特に子供達を」

「戦争に利用するつもりか?それにしても攻撃して来るなんて……帝国はゾアスタ教では無いから殺してもかまわない、と言う事か」

「酷い話ね」

「ウィルさんはもう1つ聞きたい事が有るのでしょう?」

「……はい、大変失礼な言い方になってしまうと思いますが……気を悪くしないで下さい」

「構いません」

「俺が小さい頃、ここの話は色んな所から聞いていました。それは子供の俺にとって、とても恐ろしい事でした。でも、ここの人達は俺達と変わらない。なぜですか?」


「……異形の姿で生まれれば皆、この地に来ることになり己の宿命を呪い、普通の姿に憧れる。いいでしょう貴方には私の本当の姿をみせましょう」

テレスさんは立ち上がり着ている服を脱いだ。上半身は鍛え上げられて均整がとれ、非の打ち所が無い健康美と言って良い。

しかし次の瞬間全てが終わる。

うっ、…………腕が4本……2本生えて……き……た。

「特殊な能力を持っている私達は長い年月をかけ、肉体を変化させる事が出来るようになったのです」

「そ、それで……」
「もちろん出来ない事も有りますが」

「そんな大切な秘密を教えてくれたんですね」

「病気に対して差別の無いウィルさんには、私達の心情を理解して欲しかった」

「い、いや、それは買いかぶりすぎです。治せると判っているからでして」

「ふふ、それだけではないと思いますが」



それから俺は、一刻の猶予の無い人達から1人また1人と治して行った。


「ウィル、良いですか?」
「何ですかアリスさ、ま、いや、アリス」

「ぷっ、何それ」

「仕方ないだろフレア、いきなり呼び捨てになんて出来ないよ」

「そろそろここに来た理由を話して下さい」
「そうでした。実は……」

ーー


「お父様が……」
「お姉様、父上を止めなくては」

「ウィル、お父様の所へ」

「はい、と言いたいのですが、居場所は判らないですし、いつ街を襲ってくるかも判りません」

「そうですか……しかしその街へ連れていって下さい」

「解りました」


ーー

「戻られるのですね」

「はい、帝国もあれだけの力を見せられたんです。暫くは攻めて来ないと思いますし、直ぐに戻ってこれるように造りたい物があるので、場所を提供して貰えますか?」

「造りたい物?解りました、用意しましょう」


「これは、魔法陣?」
「そうです。これで行き来が瞬時に出来ますよ」

「……ザラストの弟子ですか。うむむ」


「皆、魔法陣に入って」
「「はい」」


一旦帰って師匠に報告だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

入れ替わりノート

廣瀬純一
ファンタジー
誰かと入れ替われるノートの話

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】ミックス・ブラッド ~異種族間混血児は魔力が多すぎる~

久悟
ファンタジー
 人族が生まれる遙か昔、この大陸ではある四つの種族が戦を繰り返していた。  各種族を統べる四人の王。 『鬼王』『仙王』『魔王』『龍王』 『始祖四王』と呼ばれた彼らが互いに睨み合い、この世の均衡が保たれていた。    ユーゴ・グランディールはこの始祖四王の物語が大好きだった。毎晩母親に読み聞かせてもらい、想いを膨らませた。  ユーゴは五歳で母親を亡くし、父親は失踪。  父親の置き手紙で、自分は『ミックス・ブラッド』である事を知る。  異種族間に産まれた子供、ミックス・ブラッド。  ある者は種族に壊滅的な被害をもたらし、ある者は兵器として生み出された存在。  自分がそんな希少な存在であると告げられたユーゴは、父親から受け継いだ刀を手に、置き手紙に書かれた島を目指し二人の仲間と旅に出る。  その島で剣技や術を師匠に学び、様々な技を吸収しどんどん強くなる三人。  仲間たちの悲しい過去や、告白。語られない世界の歴史と、種族間の争い。  各種族の血が複雑に混じり合い、世界を巻き込む争いへと発展する。  お伽噺だと思っていた『始祖四王』の物語が動き出す。  剣技、魔法、術の数々。異世界が舞台の冒険ファンタジー。

異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠
ファンタジー
大学受験に失敗し引きこもりになった男、石動健一は異世界に迷い込んでしまった。 特殊な力も無く、言葉も分からない彼は、怪物や未知の病に見舞われ何度も死にかけるが、そんな中吸血鬼の王を名乗る者と出会い、とある取引を持ちかけられる。 その内容は、安全と力を与えられる代わりに彼に絶対服従することだった! 吸血鬼の王、王の娘、宿敵、獣人のメイド、様々な者たちと関わる彼は、夢と希望に満ち溢れた異世界ライフを手にすることが出来るのだろうか? ※こちらの作品は他サイト様でも連載しております。

異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...