上 下
2 / 25
因果応報編

リッチの頼み事

しおりを挟む
「お前に頼みがある。聞いてくれたら、私の知る限りの魔法の伝授とスキルを授けよう」

「魔法とスキルですか?」

「そうだ、一目見て判るぞ。お前はサボって、ろくに魔法の勉強をしてこなったであろう。素質があるのに愚かな事だ、大体お前はだな……クド、クド、クド……クド…………」

うっ、リッチに説教される俺って……。

「わ、解りました。俺は何をすればいいんです?」

俺としてもリッチの魔法が使えるなら、願ったり叶ったりだ。

「うむ、そこに刺さっているダガーを抜いてくれるだけでよい」

「えっ、それだけですか?」
「そうだ」
「理由を聞いても?」

「仕方あるまい。200年前にお前と同じ様にここに飛ばされて来た奴が、私を見て破れかぶれで投げたダガーが私の影に刺さったのだ」

「それが?」
「動けんのだ」
「ヘ?」

「そのダガーには光属性のヒールが付与されている。おそらく武器と言うより、護符の類いの物であろう。それが影に刺さった途端に動けなくなった」

「そんな簡単な事で、リッチを封印出来るのですか?」

「ああそうだ、私も初めて知った。リッチになって怖い物など無いと思ったが、まさかこのような弱点が有るとは思いもしなかった」


「解りました。このダガーを抜けば……あの~、抜いた途端に闇魔法かなんかで、俺を消したりなんかしませんよね?」

「ふふ、慎重だな、実に良い。このダンジョンに居るヘルカッツェルの様に用心深く、慎重で思慮深くなければ、これから外に出た所で時代は動く故、生きてはいけぬ。心配なら契約をしよう、親指を切って私の親指と合わせるがよい」

言われた通りに剣で親指を傷つけ、血が出たところでリッチの親指と合わせた。"血の契約"って言うやつだな、聞いた事が有る。

「これで私が約束を反古にしようとすれば、即座に塵となろう。しかし、そうなるとお前もこのダンジョンからは出られんな」

「そんなぁ~」

「安心しろ、私もまだ消えるつもりなど無いわ」
「で、では抜きます」

ダガーは、いとも簡単に抜けた。

「おお、動けるぞ。ふふふ、ふはは、ふぅはっはっは!」

背筋が凍る笑いとはこの事だ。契約が無かったら、と思うとマジに怖い。

「200年も動かなかったのだ。肩などこらぬが、こった気になるわ。約束だ、先ずはスキルだが何にするか?」

どんなスキルくれるのかな?

「お前のいい加減な性格を考えるとだな……」

なにげに悪口を言われてる気がするが?

「良し、これに決めた」

リッチが干からびた手を広げると、光と共に宝珠が2つ現れた。

「さあ、受けとるがよい」
「は、はい」

「宝珠に魔力を込めるのだ」

言われた通りに宝珠に魔力を込める。宝珠が再び光だし俺を包み込んだ。気がつくと俺の手に宝珠は無かった。

「うまく行った様だな」
「どんなスキルをくれたのです?」

「フェイクライフとお前に足りない魔法属性だ」
「フェイクライフと魔法属性ですか?」

「フェイクライフは、偽りの生命体を造る事が出来る。偽りと言っても本物と同様の働きをする、疑似生命体とも言える。色々試してみるがよい。魔法属性はお前の持っていない属性になる、但し光属性は無い」

「分かりました、ありがとう御座います」

「次は魔法だな、こればかりは今すぐとはいかん。それなりに修練せねばならんぞ?」

「今度はちゃんとやります」

「ほう、少しはまともな顔つきなったか。ではこれを持って行け」

受け取ったのは、この部屋とダンジョン内の好きな場所で転移して行き来が出来る魔道具だった。

「貴方のお名前は?」
「私の名はザラスト」

ザラストさんか。どこかで聞いた事が有るような……でもザラストさんでは流石に馴れ馴れしいな、何て呼ぼう?

「あのぅ、師匠と呼んでもいいですか?」

「師匠だと……。生きていた時は弟子など取らなかったのだがな。よかろう、これも何かの縁である。大賢者ザラストの弟子を名乗るのを許す」

ーーーー


あれから暫くスキルの基本を師匠に聞いて、魔法の修練と思ったが、俺の気力が落ちているとの師匠の判断で、修練は次からにして宿に帰って来た。

俺の性格など何から何まで見透かされている、流石は師匠と言う事か。

"フェイクライフ"か、試しに使ってみるか。何にしよう?手頃なところで、鳥にしてみよう。

ハミングバードを思い描く。空中が一瞬歪み、ハミングバードが現れ俺の肩に止まった。

「信じられない」 何これ?
「歌ってくれるかな?」

ハミングバードは綺麗な声でさえずり始める。

「たまげたな、師匠の言った通りだ」
 
師匠に教わった通りに、元に戻る意識をすると消えた。

「う~む、凄い……………………」

俺の頭に1つの考えが浮かぶ。ふっ、ふっ、ふっ、どうだ。

「おお~!」
 
なんと、俺の前に現れたのはリリアさんなのだ。俺の言うこと聞いてくれるよね?

「リリアさん、ここに座って」
「はい、ご主人様」

う~、たまらん。ベッドに座り俺の横に来た。よからぬ考えが、次から次に湧き出てくる。少しだけなら、……俺は手を伸ばす、リリアさんの胸に。

「いかん!いかんぞウィル。それはリリアさんに対する冒涜だ……我慢、正々堂々……我慢だ」

かろうじて踏み止まる。もったいないが元に戻ってもらう。

「はぁ~」

一気に疲れが出る。魔力もそこそこ量を使うようだ。
もう風呂に入って寝よう。


まる1日休養にあてる。昨日の事は俺にとって最後のチャンスだろう。こんな事は普通ではあり得ないからな。

あの師匠を相手に、嘘や誤魔化しは通用しない。魔法学院の様に甘くは無いのだ。早くリリアさんの所に行く為にも頑張らねば。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

処理中です...