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伏兵
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広域魔法デトネーションが魔物の群れの中で炸裂する。
大きな半円の炎の形が崩れると、恐ろしい速さの爆風が魔物達を吹き飛ばしながらその身体をバラバラにして行った。
「なかなかの威力だな。3割くらい減らせたかな?今ので魔物の死体や衝撃波で足下が悪くなっているから気をつけろ」
「「分かった」」「「解りました」」
「よし!さあ皆、我々の街を護りぬくぞ」
ギルド長の号令でバラけた魔物の群れに進んで行く。
魔物の中で数が多いのはゴブリンとオークだ。身体能力が他種族より優っている獣人の冒険者達は問題なく葬って行った。
ギルド長とマリーナ女史率いるAランクパーティーは、ハイオークやオーガを倒しながら、俺達が倒した雑魚どもの間を抜けて後方にいるアラクネ、バジリスクに向かって進む。
「よくもまあ、これだけ集めわね」
「オーガファイターの群れに入ったようです」
ミラ達も無駄口を言いながら、ショートレンジの魔法を使い上手く戦っている。この程度の相手なら余裕が有る。
討ち漏らした雑魚は防壁前に居る兵士と騎士が始末をする。この流れなら何とかなりそうだ。
CとDクラスの冒険者達の頑張りで魔物達の群れはハッキリとバラけて来た。
間をぬって突進してくるビックブルを念動力スキルで抑え、毒水ではなく普通の水を圧縮して眉間に撃ち込む。後で食べる時、毒抜きが面倒くさいからな。
こいつの肉は結構美味い。時の空間にビックブルを入れると、先の方でギルド長達が戦っているのが見えた。
ギルド長が握っている巨大な斧を振ると斬撃が発生し、噛みつこうとするバジリスクの牙を砕く。あれ?簡単過ぎるな。バジリスクには石化能力があったんじゃなかったか。
違和感があったので、鑑定して見る。このバジリスクは8本の足付きで俺がラノベで読んでいた物と違っていた。正確にはリーチバジリスクというらしい。後で聞いたが本物のバジリスクはSSクラスだそうだ。
マリーナ女史のパーティーはアラクネ2頭を囲んでいた。パーティーの仲間の剣には火属性が付与されているらしく、アラクネの出す糸を難なく切って行く。
こっちも直ぐに決着がつきそうなのだが……。
「クロスさん、もうすぐ終わるね」
「そうか?周りの気配を確認してみろ」
「は、はい」
アンが慌ててサーチの魔法を広範囲に渡って繰り出す。
「これは?」
「なかなかの気配だろ?」
「そうですね」
マリーナ女史がアラクネの首をハネたのが見えた。まだ魔物は数多く残っていたが周りから歓声が上がる。
「これで後は大した事のない魔物だけね」
「うむ、やったな」
「ほ~う、流石はマリーナお嬢様だ」
「誰だ!」
魔物の後ろから現れたのは、某有名世紀末アニメに出て来る様な4頭立て馬車を改造し、大きな椅子を取り付け、ふんぞり返えって座っている大男だった。
「お前はタックズ!」
「ふん、覚えていたか。よくも俺様の留守中に子分達を痛めつけ、奴隷どもを盗んでいったな」
「阿漕なやり方で獣人を奴隷にしたくせに、図々しい。この場でグリフォンの爪など潰滅してやるわ」
「舐めるなよ」
「誰です?あれ」
「グリフォンの爪の頭目、タックズだよ」
「奴の仕業だったのか」
「盗賊か。吸血鬼は関係無かったか」
「これを見ても大口を叩けるかな?」
改造馬車の後ろにもう1台のトレーラの様な馬車が有り、ゆっくりと扉が開いた。
「何だと……ボルテックスタイガー……か?」
「2頭もいるのか、信じられん」
「魔道具の力を借りたとしても詳細もよく判っていないSSクラス認定の魔物を従魔にする事なんて容易く出来る筈がない」
「そんな事はどうでも良い。死ね。その後は街の全ての者を奴隷にしてやる」
「貴様」
「SS認定のボルテックスタイガーが2頭では、さすがにギルド長でも無理だろう。下手すりゃ全滅だ。ヤバイぜ」
「そんなに強いのか?」
「あ、あたり前だ。あん時の事は忘れた事がねぇ、奴の実力は計り知れないんだ」
「さあ、お前達、こいつらを八つ裂きにしろ」
命令されたボルテックスタイガーが咆哮すると、ギルド長もマリーナ女史もパーティーの者達も疾風により吹き飛ばされた。その威力は冒険者達が協力して放ったデトネーションには及ばないが凄まじいものだった。
「クロス様、不味いです」
「ああ、皆、行くぞ」
吹き飛ばされた者達は防具はヒビ割れ、全身にパックリと裂けた傷が付いている。
「くっ」
「大丈夫か?」
「何とかな。お前達は逃げた方がいい」
「ミラ、治療を頼む」
「はい」
「何だ、お前達は?邪魔をする気か?まあ、どうでもいいがな」
近くで2頭のボルテックスタイガーと対峙すると威圧感は半端なかった。直ぐに鑑定する。
名称 ボルテックスタイガー LV72
種族 魔獣
体力 530000
魔力 35000
攻撃力 23000
知力 15500
素早さ 9950
魔法Lv98
幸運 85
属性 風・水・雷
スキル 魔法効果無効 (9)
状態異常無効化(8)
回復再生 (4)
おっと、これはかなりヘヴィーだ。カッコ内の数字はスキルレベルという事は判っている。
まず、毒は効かないとみて良いし、中途半端な傷は回復して再生してしまうだろう。魔法も返し技を喰らいそうだ。
「負傷者を連れて全員、時の空間に入ってくれ」
「解りました。さあ、皆んな早く」
「はい」「分かったです」
「ジーナ、悪いが魔剣ヴェジットを貸してくれないかな?」
「はい、です」
「ありがとう」
全員、時の空間に入って準備完了。
「うっ、貴様、今なにをやった?」
「ボルテックスタイガーを殺ったら教えるよ。どうせお前も命は無いがな」
「ぬ、ぬかせ。殺れボルテックスタイガー」
2頭のボルテックスタイガーは俺の目の前から居なくなった。目で奴らの動きを追いかけるのは無理だ。思念の輪を広げ集中する。
俺の頭上がピカッと光る。先手はボルテックスタイガーにどうやら取られたようだ。
大きな半円の炎の形が崩れると、恐ろしい速さの爆風が魔物達を吹き飛ばしながらその身体をバラバラにして行った。
「なかなかの威力だな。3割くらい減らせたかな?今ので魔物の死体や衝撃波で足下が悪くなっているから気をつけろ」
「「分かった」」「「解りました」」
「よし!さあ皆、我々の街を護りぬくぞ」
ギルド長の号令でバラけた魔物の群れに進んで行く。
魔物の中で数が多いのはゴブリンとオークだ。身体能力が他種族より優っている獣人の冒険者達は問題なく葬って行った。
ギルド長とマリーナ女史率いるAランクパーティーは、ハイオークやオーガを倒しながら、俺達が倒した雑魚どもの間を抜けて後方にいるアラクネ、バジリスクに向かって進む。
「よくもまあ、これだけ集めわね」
「オーガファイターの群れに入ったようです」
ミラ達も無駄口を言いながら、ショートレンジの魔法を使い上手く戦っている。この程度の相手なら余裕が有る。
討ち漏らした雑魚は防壁前に居る兵士と騎士が始末をする。この流れなら何とかなりそうだ。
CとDクラスの冒険者達の頑張りで魔物達の群れはハッキリとバラけて来た。
間をぬって突進してくるビックブルを念動力スキルで抑え、毒水ではなく普通の水を圧縮して眉間に撃ち込む。後で食べる時、毒抜きが面倒くさいからな。
こいつの肉は結構美味い。時の空間にビックブルを入れると、先の方でギルド長達が戦っているのが見えた。
ギルド長が握っている巨大な斧を振ると斬撃が発生し、噛みつこうとするバジリスクの牙を砕く。あれ?簡単過ぎるな。バジリスクには石化能力があったんじゃなかったか。
違和感があったので、鑑定して見る。このバジリスクは8本の足付きで俺がラノベで読んでいた物と違っていた。正確にはリーチバジリスクというらしい。後で聞いたが本物のバジリスクはSSクラスだそうだ。
マリーナ女史のパーティーはアラクネ2頭を囲んでいた。パーティーの仲間の剣には火属性が付与されているらしく、アラクネの出す糸を難なく切って行く。
こっちも直ぐに決着がつきそうなのだが……。
「クロスさん、もうすぐ終わるね」
「そうか?周りの気配を確認してみろ」
「は、はい」
アンが慌ててサーチの魔法を広範囲に渡って繰り出す。
「これは?」
「なかなかの気配だろ?」
「そうですね」
マリーナ女史がアラクネの首をハネたのが見えた。まだ魔物は数多く残っていたが周りから歓声が上がる。
「これで後は大した事のない魔物だけね」
「うむ、やったな」
「ほ~う、流石はマリーナお嬢様だ」
「誰だ!」
魔物の後ろから現れたのは、某有名世紀末アニメに出て来る様な4頭立て馬車を改造し、大きな椅子を取り付け、ふんぞり返えって座っている大男だった。
「お前はタックズ!」
「ふん、覚えていたか。よくも俺様の留守中に子分達を痛めつけ、奴隷どもを盗んでいったな」
「阿漕なやり方で獣人を奴隷にしたくせに、図々しい。この場でグリフォンの爪など潰滅してやるわ」
「舐めるなよ」
「誰です?あれ」
「グリフォンの爪の頭目、タックズだよ」
「奴の仕業だったのか」
「盗賊か。吸血鬼は関係無かったか」
「これを見ても大口を叩けるかな?」
改造馬車の後ろにもう1台のトレーラの様な馬車が有り、ゆっくりと扉が開いた。
「何だと……ボルテックスタイガー……か?」
「2頭もいるのか、信じられん」
「魔道具の力を借りたとしても詳細もよく判っていないSSクラス認定の魔物を従魔にする事なんて容易く出来る筈がない」
「そんな事はどうでも良い。死ね。その後は街の全ての者を奴隷にしてやる」
「貴様」
「SS認定のボルテックスタイガーが2頭では、さすがにギルド長でも無理だろう。下手すりゃ全滅だ。ヤバイぜ」
「そんなに強いのか?」
「あ、あたり前だ。あん時の事は忘れた事がねぇ、奴の実力は計り知れないんだ」
「さあ、お前達、こいつらを八つ裂きにしろ」
命令されたボルテックスタイガーが咆哮すると、ギルド長もマリーナ女史もパーティーの者達も疾風により吹き飛ばされた。その威力は冒険者達が協力して放ったデトネーションには及ばないが凄まじいものだった。
「クロス様、不味いです」
「ああ、皆、行くぞ」
吹き飛ばされた者達は防具はヒビ割れ、全身にパックリと裂けた傷が付いている。
「くっ」
「大丈夫か?」
「何とかな。お前達は逃げた方がいい」
「ミラ、治療を頼む」
「はい」
「何だ、お前達は?邪魔をする気か?まあ、どうでもいいがな」
近くで2頭のボルテックスタイガーと対峙すると威圧感は半端なかった。直ぐに鑑定する。
名称 ボルテックスタイガー LV72
種族 魔獣
体力 530000
魔力 35000
攻撃力 23000
知力 15500
素早さ 9950
魔法Lv98
幸運 85
属性 風・水・雷
スキル 魔法効果無効 (9)
状態異常無効化(8)
回復再生 (4)
おっと、これはかなりヘヴィーだ。カッコ内の数字はスキルレベルという事は判っている。
まず、毒は効かないとみて良いし、中途半端な傷は回復して再生してしまうだろう。魔法も返し技を喰らいそうだ。
「負傷者を連れて全員、時の空間に入ってくれ」
「解りました。さあ、皆んな早く」
「はい」「分かったです」
「ジーナ、悪いが魔剣ヴェジットを貸してくれないかな?」
「はい、です」
「ありがとう」
全員、時の空間に入って準備完了。
「うっ、貴様、今なにをやった?」
「ボルテックスタイガーを殺ったら教えるよ。どうせお前も命は無いがな」
「ぬ、ぬかせ。殺れボルテックスタイガー」
2頭のボルテックスタイガーは俺の目の前から居なくなった。目で奴らの動きを追いかけるのは無理だ。思念の輪を広げ集中する。
俺の頭上がピカッと光る。先手はボルテックスタイガーにどうやら取られたようだ。
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