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初依頼
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店は開けたのだが……。
「お客様来ませんね」
「広場でチラシを配っただけだからね、気長に待つさ」
ここに詰めているのは俺達3人だ。マリとジーナはは別途用意した家で実力をつけるべく家庭教師による魔法の特訓中だ。
マリも猫族の子ジーナも、面白いスキルを持っているので楽しみだ。
「いらっしゃいませ」
ん、客か?素敵な紳士だ、きっと女に持てるに違いない。どこかの貴族だろうな。しかし顔が青い、深刻な問題かな?
「ギルドではいつ手に入るか判らんのだ、この店はどうなのだ?」
「申し訳ご座いません。順をおってお話を」
「ああ、すまない。焦っているようだ、ミノタウロスの肝が欲しい」
ミノタウロスならダンジョンで散々出会した。時の空間に幾らでも有る。
「薬が必要と言う事ですか?」
「その通りだ」
「宜しければ詳しいお話をお聞かせ下さい。ミノタウロスならなんとかなりそうです。相談や調査などもやりますよ」
「ほ、本当か?……解った話そう」
「ハーブティーです、落ち着きますよ」
「ありがとう。私の娘が3ヶ月前から病気になってな、薬に必要なミノタウロスの肝は以前から依頼はしてたのだ」
「病気はゼッヘルス病ですか?」
「その通りだ。そんなに慌てる病でもないので気にはしてなかったのだが、10日前にザラステン王国から来た商人が、ゼッヘルス病の薬が有ると言って私の所に来たのだ」
またザラステン王国か。
「ザラステン王国から?それで見返りは」
「私の領地に在るアルケロ山を採掘させろと言って来た」
私の領地、アルケロ山、……ここの領主か
「断ったのですね」
「勿論だ。あの山は先祖代々からアンドリュース家の護り神とされて来た神山だ。採掘など、とんでもない話しだ」
「何かの鉱脈でも有るのですか?」
「そんな話は聞いた事が無いがな」
「今回、何で急に薬を?」
「娘の容態が急に悪化したのだ。治癒師の話だと、ゼッヘルス病が急激に進行したとかで、直ぐに薬を与えないと危ないらしい。それを見計らった様に、あの商人がまた来てな」
「確かに、都合が良すぎますね」
「そうなのだ、どうも裏が有る様で気に入らない」
「解りました。肝は薬にして明日にでも御屋敷にお持ち致しましょう」
「本当か、助かる。ん、私は名乗ったかな?」
「先ほどアンドリュース家と、仰いました。領主様」
「ふふ、さすがは、何でも屋だな。改めて名乗ろう、ダビルドだ」
「ありがとう御座います。商人の調査は、その後に直ぐに始めます」
「頼む」
ーー
「クロスさん、何か引っ掛かるのね?」
「そうなんだ」
ザラステン王国には絶対に何か有る。
翌日、領主ダビルド伯爵のお屋敷に薬を持って行った。治癒師の立ち会いの下、お嬢様に薬を飲んでもらう。
「どうだ?マユリカ」
「だいぶ楽になりました」
「効果が早いですね。薬の出来が良かったのでしょうな」
「ダビルド伯爵、お嬢様が治った事は内密にして置いて下さい」
「……なるほど、解ったそうしよう。メキスル殿も頼むぞ」
「畏まりました」
ーーーー
店に戻り、伯爵に教えてもらった人相の商人を、思念の輪で捜す。
この街には色んな人達が居る。いつも気になっているあの兄ちゃん、また小屋で女とよろしくやっている。何の仕事をしてる人だろう?
「ん、」
「もう見つけたのですか?」
「いや、肉料理の美味しそうな店を見つけた。今度、食べに行こう」
「ホント。あっ、嬉しいけど、真面目にお願いします」
「済まん。では改めて」
宿を中心に当たって見るか。伯爵相手に商売しようと言うのだ、安い宿にはいないだろう、格が中以上を先に調べようか……居たね。豪華な宿に泊まっている。しかし、違和感が有るな、直接会うか。
「見つけた、行ってくる」
「私達も行く」
「ちょっと変な感じがするから、捕まえたら出すので時の空間に入ってくれ」
「分かった」
ーー
平民街を抜けて、貴族住居地区に入る手前に在る高級宿の1つに商人は泊まっていた。
俺は、貴族の服に着替えて堂々と目的の部屋まで行く。
「失礼致します。ダビルド伯爵の命でお話したく御伺いしました」
「ダビルド伯爵の使いですか?よく私の居場所が判りましたね」
「私もそれなりに情報網は御座います」
「成る程、それぐらいは当然の事か。解った。今、開ける」
部屋の中も立派だった。下手な貴族の屋敷より良い。
「どうも、デリウトと申します」
「クロスです。早速ですが、薬を見せて貰えますか?」
「宜しいですよ。これです」
テーブルに置かれた瓶を鑑定する、確かに本物だ。
「どうしてお嬢様が病気だと、お判かりに?」
「私どもにも情報網は御座います」
「う~ん、そうだよね」
「伯爵は、なんと仰っているのです?」
「アルケロ山で何を探しているのか、吸血鬼は?と」
「貴様、何者だ!」
「いやぁ、最近、吸血鬼に会う機会が多くてさ、なんとなく判るんだよね。おっと、動くな。質問に答えてくれたら見逃してやる」
「貴様ごときに殺られるか」
「西の森にいた奴より、お前が強いとは思えないが?」
「ペダルスを殺ったのは、貴様か……クッ、何が聞きたい?」
「時間が惜しい、では本題に戻ろう。アルケロ山で何を探している?」
「それを言えば仲間に殺される」
それはそうだな、簡単に言うわけ無い。連れて帰ってゆっくり聞くか。
「ぐはっ!」
「しまった、やられた」
窓の外を見るが誰もいない。思念を広げても、引っ掛かからなかった。
油断した、口封じか。身体に何か、撃ち込まれた様だ。直ぐに溶けて無くなった。ヒュドラの毒より効き目が早い、吸血鬼専用の薬なのだろうか?
時の空間から2人を出す。
「捕まえたの?」
「いや、殺されたよ。口封じだ」
「伯爵には何と言うの?」
「正直に言うしかないな。証拠として、こいつの持ち物を持って行こう」
ーー
「うむ、確かに商人が着ていた服に、これ見よがしに付けていた指輪だ」
「申し訳御座いません、油断しました。理由までは突き止められませんでした」
「いや、上出来だ。娘は助かったしな、これを受け取ってくれたまえ」
テーブルに、金貨の入った革袋がドンと置かれた。
「ありがとう御座います。奴の仲間が諦めたとは考えにくいです。それに特殊なスキルを持っていると思われますので、ご注意を」
「解った。こちらも、対応が出来る護衛を傭い警備を強化しよう」
「奴らが吸血鬼だと言わなくてよかったの?」
「そうだな……様子を見て話して見るか」
俺も伯爵の事は気になる、気にはしておこう。
吸血鬼商人を探す時に見つけた、肉料理の店に行ってから帰る事にした。店に入ると、あの兄ちゃんが肉をムシャムシャ食べていた。精力を付けているな。身なりも良いし、本当に何者だ?
「クロスさん、どうしました?」
「何でもないよ、思った通り良い店だね」
「はい、とっても美味しい」
ミラとアンは美味しそうにオークのステーキを食べている。牛で言うとハラミの部分だと思う。メニューに部位の図が書いてある。
横隔膜辺りの肋骨に付いている肉だ。オークにも横隔膜が有るんだ、面白い。美味しそうなので俺も頼む事にした。ハニーワインもイケてる。
「最初の仕事としては、少しばかりしくじったが、良しとするか」
「そうですよ、儲かりましたもの」
こういう計算はアンが担当らしい。
「うん、……」
「クロスさん、心配事でも有るの?」
「なに、吸血鬼とザラステン王国との関係がな」
「そうなんだ」
あの国には何かがあるに違いない、と漠然と感じてはいたが、この先、俺達は奴らと戦い続けて行く事になるとは夢にも思わなかった。
「お客様来ませんね」
「広場でチラシを配っただけだからね、気長に待つさ」
ここに詰めているのは俺達3人だ。マリとジーナはは別途用意した家で実力をつけるべく家庭教師による魔法の特訓中だ。
マリも猫族の子ジーナも、面白いスキルを持っているので楽しみだ。
「いらっしゃいませ」
ん、客か?素敵な紳士だ、きっと女に持てるに違いない。どこかの貴族だろうな。しかし顔が青い、深刻な問題かな?
「ギルドではいつ手に入るか判らんのだ、この店はどうなのだ?」
「申し訳ご座いません。順をおってお話を」
「ああ、すまない。焦っているようだ、ミノタウロスの肝が欲しい」
ミノタウロスならダンジョンで散々出会した。時の空間に幾らでも有る。
「薬が必要と言う事ですか?」
「その通りだ」
「宜しければ詳しいお話をお聞かせ下さい。ミノタウロスならなんとかなりそうです。相談や調査などもやりますよ」
「ほ、本当か?……解った話そう」
「ハーブティーです、落ち着きますよ」
「ありがとう。私の娘が3ヶ月前から病気になってな、薬に必要なミノタウロスの肝は以前から依頼はしてたのだ」
「病気はゼッヘルス病ですか?」
「その通りだ。そんなに慌てる病でもないので気にはしてなかったのだが、10日前にザラステン王国から来た商人が、ゼッヘルス病の薬が有ると言って私の所に来たのだ」
またザラステン王国か。
「ザラステン王国から?それで見返りは」
「私の領地に在るアルケロ山を採掘させろと言って来た」
私の領地、アルケロ山、……ここの領主か
「断ったのですね」
「勿論だ。あの山は先祖代々からアンドリュース家の護り神とされて来た神山だ。採掘など、とんでもない話しだ」
「何かの鉱脈でも有るのですか?」
「そんな話は聞いた事が無いがな」
「今回、何で急に薬を?」
「娘の容態が急に悪化したのだ。治癒師の話だと、ゼッヘルス病が急激に進行したとかで、直ぐに薬を与えないと危ないらしい。それを見計らった様に、あの商人がまた来てな」
「確かに、都合が良すぎますね」
「そうなのだ、どうも裏が有る様で気に入らない」
「解りました。肝は薬にして明日にでも御屋敷にお持ち致しましょう」
「本当か、助かる。ん、私は名乗ったかな?」
「先ほどアンドリュース家と、仰いました。領主様」
「ふふ、さすがは、何でも屋だな。改めて名乗ろう、ダビルドだ」
「ありがとう御座います。商人の調査は、その後に直ぐに始めます」
「頼む」
ーー
「クロスさん、何か引っ掛かるのね?」
「そうなんだ」
ザラステン王国には絶対に何か有る。
翌日、領主ダビルド伯爵のお屋敷に薬を持って行った。治癒師の立ち会いの下、お嬢様に薬を飲んでもらう。
「どうだ?マユリカ」
「だいぶ楽になりました」
「効果が早いですね。薬の出来が良かったのでしょうな」
「ダビルド伯爵、お嬢様が治った事は内密にして置いて下さい」
「……なるほど、解ったそうしよう。メキスル殿も頼むぞ」
「畏まりました」
ーーーー
店に戻り、伯爵に教えてもらった人相の商人を、思念の輪で捜す。
この街には色んな人達が居る。いつも気になっているあの兄ちゃん、また小屋で女とよろしくやっている。何の仕事をしてる人だろう?
「ん、」
「もう見つけたのですか?」
「いや、肉料理の美味しそうな店を見つけた。今度、食べに行こう」
「ホント。あっ、嬉しいけど、真面目にお願いします」
「済まん。では改めて」
宿を中心に当たって見るか。伯爵相手に商売しようと言うのだ、安い宿にはいないだろう、格が中以上を先に調べようか……居たね。豪華な宿に泊まっている。しかし、違和感が有るな、直接会うか。
「見つけた、行ってくる」
「私達も行く」
「ちょっと変な感じがするから、捕まえたら出すので時の空間に入ってくれ」
「分かった」
ーー
平民街を抜けて、貴族住居地区に入る手前に在る高級宿の1つに商人は泊まっていた。
俺は、貴族の服に着替えて堂々と目的の部屋まで行く。
「失礼致します。ダビルド伯爵の命でお話したく御伺いしました」
「ダビルド伯爵の使いですか?よく私の居場所が判りましたね」
「私もそれなりに情報網は御座います」
「成る程、それぐらいは当然の事か。解った。今、開ける」
部屋の中も立派だった。下手な貴族の屋敷より良い。
「どうも、デリウトと申します」
「クロスです。早速ですが、薬を見せて貰えますか?」
「宜しいですよ。これです」
テーブルに置かれた瓶を鑑定する、確かに本物だ。
「どうしてお嬢様が病気だと、お判かりに?」
「私どもにも情報網は御座います」
「う~ん、そうだよね」
「伯爵は、なんと仰っているのです?」
「アルケロ山で何を探しているのか、吸血鬼は?と」
「貴様、何者だ!」
「いやぁ、最近、吸血鬼に会う機会が多くてさ、なんとなく判るんだよね。おっと、動くな。質問に答えてくれたら見逃してやる」
「貴様ごときに殺られるか」
「西の森にいた奴より、お前が強いとは思えないが?」
「ペダルスを殺ったのは、貴様か……クッ、何が聞きたい?」
「時間が惜しい、では本題に戻ろう。アルケロ山で何を探している?」
「それを言えば仲間に殺される」
それはそうだな、簡単に言うわけ無い。連れて帰ってゆっくり聞くか。
「ぐはっ!」
「しまった、やられた」
窓の外を見るが誰もいない。思念を広げても、引っ掛かからなかった。
油断した、口封じか。身体に何か、撃ち込まれた様だ。直ぐに溶けて無くなった。ヒュドラの毒より効き目が早い、吸血鬼専用の薬なのだろうか?
時の空間から2人を出す。
「捕まえたの?」
「いや、殺されたよ。口封じだ」
「伯爵には何と言うの?」
「正直に言うしかないな。証拠として、こいつの持ち物を持って行こう」
ーー
「うむ、確かに商人が着ていた服に、これ見よがしに付けていた指輪だ」
「申し訳御座いません、油断しました。理由までは突き止められませんでした」
「いや、上出来だ。娘は助かったしな、これを受け取ってくれたまえ」
テーブルに、金貨の入った革袋がドンと置かれた。
「ありがとう御座います。奴の仲間が諦めたとは考えにくいです。それに特殊なスキルを持っていると思われますので、ご注意を」
「解った。こちらも、対応が出来る護衛を傭い警備を強化しよう」
「奴らが吸血鬼だと言わなくてよかったの?」
「そうだな……様子を見て話して見るか」
俺も伯爵の事は気になる、気にはしておこう。
吸血鬼商人を探す時に見つけた、肉料理の店に行ってから帰る事にした。店に入ると、あの兄ちゃんが肉をムシャムシャ食べていた。精力を付けているな。身なりも良いし、本当に何者だ?
「クロスさん、どうしました?」
「何でもないよ、思った通り良い店だね」
「はい、とっても美味しい」
ミラとアンは美味しそうにオークのステーキを食べている。牛で言うとハラミの部分だと思う。メニューに部位の図が書いてある。
横隔膜辺りの肋骨に付いている肉だ。オークにも横隔膜が有るんだ、面白い。美味しそうなので俺も頼む事にした。ハニーワインもイケてる。
「最初の仕事としては、少しばかりしくじったが、良しとするか」
「そうですよ、儲かりましたもの」
こういう計算はアンが担当らしい。
「うん、……」
「クロスさん、心配事でも有るの?」
「なに、吸血鬼とザラステン王国との関係がな」
「そうなんだ」
あの国には何かがあるに違いない、と漠然と感じてはいたが、この先、俺達は奴らと戦い続けて行く事になるとは夢にも思わなかった。
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