103 / 104
【第6章】契約破棄、そして新たな約束
離婚したくない
しおりを挟む「……昂士くん」
「だから、ずるい人間同士、お似合いなんじゃないか。
俺は佐奈子と離婚したくない。1年経っても、その後もずっと、夫と妻でいたいと思ってる。
もし、佐奈子もそう思ってくれてるなら──そばにいてくれ。俺の隣にいて、子供を産んで、一緒に育てていくって、そう言ってほしい」
低い、意思の強い声が、耳から頭に、心に響く。
彼の想いが、体温と一緒に全身に伝わっていく。
──ああ、私は、この人が好きだ。
好きだから、一緒にいたい。
好きだから彼の子供を産みたい。
遠い昔に芽生えていた想いは、おそらくずっと、私の心の底に眠っていた。年月が経っても他の人と付き合っても、消えてはいなかった。
だから、酔った勢いとはいえ「結婚しようか」なんて口走ったのだろうし、彼の言う「契約結婚」をする気にもなったのだ。いくら困っていたとしても、好きだと思わない相手に対して、そんな気にはならない。
「佐奈子、答えは?」
「──私は」
声が震えるのを抑えて、抱きしめられたまま、答える。
「昂士くんの、隣にいたい。子供を産んで、一緒に育てたい……です」
「本当に?」
「はい」
ぎゅうっと、彼の腕にさらに力がこもる。
ありがとう、とささやいた声は、涙混じりに聞こえた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
382
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる