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【第6章】契約破棄、そして新たな約束
かっこよくなんか
しおりを挟むそして今では、新進気鋭の風景画家として依頼が引きも切らず、展覧会でも毎回評判が良いらしい。中学の同窓会でそんな噂を耳にした。
「あの時から、佐奈子のことが好きだった。
大学とかで他の女と付き合ったりもしたけど──佐奈子を忘れたことはたぶんなかった。だからかな、フラれるのはいつも、俺の方だった」
苦笑いする彼の告白が、信じられない思いだった。
そんなに前から、私のことを……?
高校までは同じ学校で、中2以降にも同じクラスになったことはあるのに、まったく気づかなかった──いや。
「……かっこよくなんか、なかったよ」
「佐奈子?」
思わず出た自嘲のつぶやきに、彼は首を傾げる。
「あの頃、私も……昂士くんのこと、ちょっと好きだった」
「え」
「だから、いい格好したかったの。いじめを放っとけない気持ちはあったけど、いじめてた人たちに対抗するの、ほんとは怖かった。けど、クラス委員の責任半分と、いいところ見せたい気持ち半分で、頑張ったの」
恥ずかしい思いで、昔のことを説明する。
浅はかだったのは昔の私だ。憧れていた人にいいところを見せたいなんて。
そんな自分を今になってさらけ出すのは、心底恥ずかしい。でも正直に言わないのは嘘をついているようで後ろめたい。かっこいいと思われていたのならなおさらだ。
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