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【第6章】契約破棄、そして新たな約束
あの夜、わかってた
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妻側の、希望……?
「これって」
「先に約束を破ったのは俺だ。だから佐奈子の好きなようにしてくれ。産みたくないなら堕ろせばいい。別れたいなら、今すぐ別れてかまわない。子供を産んで育てるなら、認知と養育費の支払いは充分にする」
彼が示した選択肢の中に、産んだ子供を一緒に育てる、は入っていなかった。
……やっぱり、彼にとっては予定外で、望まないことなんだ。そう思った途端、身の内を満たしていた切なさが、涙になってあふれた。
こみ上げてくる嗚咽が、口を押さえても止めきれない。
私の様子に昂士くんは目を見張り、次いで強く引き寄せた。
抱きしめられたと気づいてもがくが、放してくれない。
「ごめん」と、絞り出すような声が耳元で聞こえる。
「こんなこと、予定してなかったもんな。嫌だよな──全部俺のせいだ。すまない」
彼が何を言おうとしているのかわからない。この事態を予定してなくて嫌だと思っているのは、むしろ彼ではないのか。
「旅行の時、佐奈子が、妊娠すればいいって思ったんだ」
「…………え、え?」
「生理のサイクル知ってたから、あの夜着けずにしたら子供ができるかもしれないってわかってた。わかっててわざと、着けなかった。佐奈子に妊娠してほしくて」
「これって」
「先に約束を破ったのは俺だ。だから佐奈子の好きなようにしてくれ。産みたくないなら堕ろせばいい。別れたいなら、今すぐ別れてかまわない。子供を産んで育てるなら、認知と養育費の支払いは充分にする」
彼が示した選択肢の中に、産んだ子供を一緒に育てる、は入っていなかった。
……やっぱり、彼にとっては予定外で、望まないことなんだ。そう思った途端、身の内を満たしていた切なさが、涙になってあふれた。
こみ上げてくる嗚咽が、口を押さえても止めきれない。
私の様子に昂士くんは目を見張り、次いで強く引き寄せた。
抱きしめられたと気づいてもがくが、放してくれない。
「ごめん」と、絞り出すような声が耳元で聞こえる。
「こんなこと、予定してなかったもんな。嫌だよな──全部俺のせいだ。すまない」
彼が何を言おうとしているのかわからない。この事態を予定してなくて嫌だと思っているのは、むしろ彼ではないのか。
「旅行の時、佐奈子が、妊娠すればいいって思ったんだ」
「…………え、え?」
「生理のサイクル知ってたから、あの夜着けずにしたら子供ができるかもしれないってわかってた。わかっててわざと、着けなかった。佐奈子に妊娠してほしくて」
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