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【第6章】契約破棄、そして新たな約束
契約の追記
しおりを挟むきっと青ざめたであろう私を見て、昂士くんは確信したように小さくうなずく。
「やっぱり、そうなんだな」
「…………どうして」
わかったのか。口にしながら、意味のない問いだと思った。バレるならあの時しかなかったはず。
「トイレに置きっぱなしにしてたやつ、調べたから」
ああ、やっぱり。
私が絶望した心持ちになっていると、ふいに、彼の目の光が緩んだ。
先ほどまでの鋭さから一転して、なんだか泣きそうに揺れている。
「ごめん、俺のせいだな」
「──え?」
「俺が、最初にあんなこと言ったから」
あんなこと、とは契約の時の説明だろう。
『離婚前提だから──もし何かあったら別れるわけにいかなくなるし』
「だから言えなかったんだろう?」
その通りだから、私はこくりとうなずいた。
すると彼は、私の顔に添えていた手を離して、リビングを走り出ていく。突然の行動に驚いて追いかけると、彼は自分の寝室で机に向かっていた。どうやら何かを書いているようだ。
しばらくして立ち上がり、振り向いた彼は、手に持った紙を私に差し出した。
最初の「契約書」のように、手帳のメモ欄をちぎり取ったらしいそれには、こう書かれていた。
【追記】
【もし契約事項を破り、妊娠の状態が発生した場合は、妻側の希望に沿うこととする】
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