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【第6章】契約破棄、そして新たな約束
望んでいること
しおりを挟む「自覚ないのか? 倒れそうだぞ。……熱もちょっとあるな」
言うが早いか、彼は私を横抱きにし、抱え上げた。
「ひゃっ!」
驚きのあまり変な声が出た私を、彼は気遣わしげに見つめる。
「晩飯は俺が作るから、それまで寝てろ。気分悪いとかはない?」
「……だ、いじょうぶ」
本当はちょっと胸焼けみたいな心地がするけど、正直に言うと勘繰られそうだと思って言わなかった。幸い彼は疑わなかったようで「そうか」と言った。
「でも消化に良いものの方がいいだろうな。玉子うどんとかでいいか」
「う、うん」
会話しながら、私が寝室にしている部屋に運ばれて、ベッドに寝かされる。
ちゃんと寝てろよ、と言われ、額に口づけを落とされた。
彼が部屋を出ていった途端、じわっと涙が浮かんでくる。
「どうしよう」ともう一度つぶやいた。
こんなことは予想していなかった。彼だってそのはずだ。1年限りの契約結婚なのだから。どうしたらいいんだろう。このことを打ち明けて、もし、堕ろせと言われたら──
そこまで考えて、自分の望みに気づいた。
……私は、堕ろしたくないと思っているんだ。彼との子供を。
産みたい。ちゃんと産んで、彼と一緒に育てたい。
自分の望んでいることがはっきりして、さらに困惑する。
これほどまでに彼を、愛してしまっている事実に。
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